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0486・山の東側




 真っ赤な牛はこちらに何もしてこないので無視し、ミク達は歩きやすい森を歩いて行く。こちらは木々もあまり密集しておらすスカスカな感じがするが、それは目の前の奴の所為だろう。


 黄色い鹿の魔物が樹皮を剥いで食べている。そいつはこちらをジッ見ながらも食べる事は止めないようだ。ミク達は特に戦う気も無いのでスルーし、更に東へと歩いて行く。この辺りは真っ赤な牛と、黄色い鹿の縄張りのようだ。


 数多くその二種が生息しているだが、そいつらは何故かミク達が居ても襲ってこない。ミク達にとっては楽で良いのだが、岩山であったクソ鹿とは随分違う温厚な鹿である。不思議に思いつつも歩いていると、ようやく意図が分かった。


 真っ赤な牛と黄色い鹿が徐々に集まっており、ミク達の周囲を囲もうとしている。こいつらは存外に頭がいいのか、気付かれないようにと動いているのが気配で分かった。もちろんミクにはバレており何の意味も無いが、普通の人間種なら気にしない程度の動きだ。


 そろそろ包囲網が狭まるので、ミクは【念話】で武器を取り出すように言う。そして武器を取り出したタイミングで、周りから魔物が襲い掛かってきた。ミク達をジッと観察していただけはあり、動きは速い。


 四方八方から突進をしてくるが綺麗に避けつつ切り付けていき、血を噴出している奴は無視して次の魔物に攻撃していく。ある程度の牛と鹿を倒すと露骨に逃げ出し、気付けば死体と静寂だけが残っていた。



 「なかなかに頭が良いのか、それとも集団で狩りをする連中なのか……。その割には草を食べてたし、樹皮を剥いで食べてたんだよねー。肉食じゃなく、邪魔な者を排除しようとしただけなのかな?」


 「さて、そこは分からないわねえ。草とか樹皮しか食べられないだけなのか、それとも縄張りを守る為に協力しているのか……。さっきのは確かに連携していたけど、何を食べるのかは分からないのよね。好みがあるから」


 「魔物になると雑食になるとはいえ、それでも元々の生態に影響を受けるとは聞くわ。やはり草食だったものは植物を好むのでしょう。それよりも死体を処理しないと……」



 ミクは指を突っ込み血を吸い出しては【冷却】していく。血を【水魔法】で飛ばしてもいいのだが、あまり良い事とも思えないので、出来得る限り素早くミクとレイラが血抜きをしていく。ゼルは【冷却】担当だ。


 終わったら幾つかを本体空間に送り、後はアイテムバッグに入れて進む。牛と鹿は離れた所からこっちを見張っているが、襲ってこなければミク達が手を出す事は無い。それが分かったらしく、警戒感は薄れたようだ。


 そのまま東へと歩き続けていると、遠目に森が切れているのが見えた。ようやく森が終わるのかと思いつつ進み、森の切れ間まで到達すると、近くには山が見えた。そこまで高い山ではないので、登って周囲を確認しようと話すミク。



 「そこまで高そうな山じゃないし、精々1000メートルくらいでしょ? 身体強化で一気に進んで登っちゃえばいいよ。木々の生えた山だけど、そこまで面倒臭そうじゃないし。先に昼食だけどさ、はい」


 「ありがとう。まあ、登るくらい良いけどね。それよりも山の向こう側に何かあると思うのよね。結構前の事だからうろ覚えだけど、何かの建築物があったような気がするのよ。この星に下りる時に見たような?」


 「そういえば何かあったわね。ポツポツと何かが見えたような……。もしかして、この星って他にも原住民が居る? もしくは国がある?」


 「この星に来る際の景色なんて消去しちゃったからなあ、覚えてないや。興味無かったし。ま、とりあえず行けば分かるでしょ。二匹はゆっくり寝てていいよ」


 「ピ……」 「シュ……」



 二匹は母乳を飲んだからか、既にウトウトしている。元々この星は温暖な気候がずっと続いており、暖かく眠たくなりやすい。もちろん寒い地域もあるのだろうが、今のところはそんな場所まで行けていない。


 軽食を食べ終わり、ミク達は東にそびえる山に走って行く。ロックはミクの胸ポケットに、ティムはミクがお暇様抱っこをしている。出来るだけ揺らさずに進んでいるものの、その速度は驚くほど速い。


 あっと言う間に山の麓に着き、一気に山を駆け上がっていく。特殊な形の山ではなく平均的な普通の山の形なので登るのは難しくない。若干角度が急ではあるものの、倒れそうになるほど急でもない山を走って登る。


 結局、一時間ほどで山頂まで登りきった一行は、山から東を見て驚く。遠目にはポツポツという感じで見えているが、あからさまに何かの生命体の住居がある。しかしそれよりも驚くのが畑だ。畑で何かの植物を栽培しているのだ。


 つまり、山の東側には農業をするだけの知恵ある者達が住んでいるという事になる。白鱗族も青狼族も農業はしておらず、森の恵みか狩猟で生きていた。にも関わらず、こちらはそれなりに大きな畑を作っているのだ。


 社会的であるものの、同時に余所者を排除する可能性が高い。それでもミク達は山を下りて近付いていく。山の麓の森から5キロほど離れた場所に畑が広がっているのだが、森の切れ目までは走って行き、そこからは歩いて近付くミク達。


 いきなり走って行くと警戒させてしまうだけだ。そう思い、歩いて近付いていくのだが、見た感じは手入れが行き届いていない畑だ。まだそこまで農業として確立している訳ではないのだろうか?。


 そう思いつつ畑を確認していると、二人の人が近付いてきた。見た感じ亀だろうか?。



 「OMEESATATIHADOKOKARAKINASUTTA」


 「何言ってるかサッパリ分からないね。こっちでも【想念思話】は必須みたい」


 (これでこっちの言ってる事は分かる? そっちの言葉が分からないから直接話し掛けてるんだけど、聞こえてたら心で返事して)


 (………こうで、ええのか? ん、どうやら心ん中で思やぁ、伝わるっつー事で良かんべな)


 (おお、こったら凄いべや。言葉が通じんのはアレだけんど、これなら口を開けんでええから楽だなや)


 (私達は山の西から来たんだけど、ここは何? 村? 町? それとも国?)


 (ここはドドコースっちゅう田舎の村じゃけんど、町なら東にあんべ。国っちゅうのがよく分かんねえけんども、領主様は町におるって聞くな?)


 (んだな。あたしらぁ作れって言われた芋を作って納めるだけだっぺや。他の連中も色んな物作って納めとるだ。それにしてもお前ぇさんら見た事ねえ種族だなあ)


 (私達は人間種だけど、貴方達は違うの? ここから南西の遠い所には白鱗族と青狼族という二種族が居たわ)


 (わしらぁは黒亀族っちゅう種族だ。特に特徴もねえ普通の種族でしかねえ。領主様は違うし、他にも様々な種族の奴がおるよ)


 (特徴はねえ訳じゃねえだよ。黒亀族は男の精力がやたらに強いだよ。ウチの旦那もそうだで恥ずかしがらんでええのにな? いっつも恥ずかしがるだよ、毎日ヤりまくっとるのに)


 (お前ぇが恥も無く言うからでねえか。確かに黒亀族の男は精力強いが、そんなもんは自慢にならんで)


 (何言うとるだよ。お隣の桃兎族の旦那さんより毎日激しい癖に。おらは毎日受け止めとるだでよ、大変なんだべ。少しは妻を気遣ってほしいだよ。………勘違いしねえでけれ、別に回数減らせとは言うとらんで!!)


 (お前ぇも好きなんでねか。なら、わしにばっかり言うんじゃねえべ!)



 田舎言葉はともかく、知らない人物を前に何の話をしているのだろうか? こういうところは田舎な感じがするが、それとも文化レベルの低さ故なのであろうかと悩むミクであった。


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