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0485・今度は東へ




 開拓村へと両種族を連れて来て20日経った。両種族が暮らしていけるだけの建物を建てる事も出来たが、何より一番大きかったのは両種族が争うのを止めた事だろう。魔法銃の事を知り貨幣を知り、争うよりもここで生きた方が良いと判断したようだ。


 ヴィルフィス帝国も本格的にこの星を開拓する事に決めたらしく、潤沢な予算が付いたらしい。今やこの星はフロンティア惑星の扱いを受けている。当然ながら大量の傭兵が流れ込んでいるものの、ブラックホークが一番である事に変わりはない。


 ミク達がここに来て多くの事をやり始めたから今があるのであり、特にクーロンとデスピエロは恐れてやって来ないようだ。来たところでミクは無視するだけなのだが、彼らはミクに対して喧嘩を売りすぎた。そこへきてのシンテン・リュウザの死亡動画だ。


 アレの反響が凄まじいらしいのだが、それと同時に<解体師>である事もバレたらしく、世間では微妙な評価となっている。<恐怖の大王>である事を示す動画も拡散していて、手を出さない方が良いのは一致しているらしい。


 鬱陶しい事に巻き込まれないなら何でもいいのだが、白鱗族と青狼族の事は多くの国で話題になっているらしい。特に人間種ではない獣よりの種族というのは初めてらしく、もしかしたら淘汰されていたかもしれない種族である。


 特に学術界隈が騒がしいようで、彼らのような獣系の種族は多くの星で生き残れず消えていったのではないかという意見もあるみたいだ。色んな意見があっていいと思うが、彼らに迷惑は掛けないでほしいと思う。


 しかし彼らと意思疎通をするには、今のところミクの作った魔道具が必須である。この魔道具の存在をMASCで流した馬鹿がいた為、ミクは仕方なく魔法陣を公開した。もちろんやったのはゼルであり、ミクはいちいち書き込みとかはしない。


 その事から分かる通り、公開したのはブラックホークの掲示板である。そこから一般人の使う掲示板に情報が流され、後は知らないフリで終わりだ。他にも色々知っているだろうと思われているが、当然の如く知っている。


 というより、肉塊はほぼ全ての魔法陣を知悉ちしつしている。教えたのは神々なのだから当然ではあるのだが、肉塊はわざわざ公開する気は無い。手を出してくる奴は食べられるので、ミクにとってこの騒ぎは都合が良かったりする。


 今はまだVNM909だが、この星から出ると必ずや狙われるだろう。阿呆が釣れると思えば期待に胸が膨らむというものだ。それが肉塊の生き方であり、神命なのだから。



 「そろそろ発着場から東を調べてもいいかな? 開拓村も建築ラッシュだし、村の女性陣も男が来て喜んでるみたいだし」


 「それはそうだけど、男性陣は解放されてホッとしているみたいね。まあ、学者関係も研究者にも素材が送られて色々調べてるようだし、その過程で分かった事も多いみたいだけど」


 「まさか村人がよく食べていた野草に興奮作用があるなんてね。その所為でやたらに性欲が強く出ていたとは……まあ、あくまでも興奮作用なだけで、性欲を強化する働きは無いらしいのよね」


 「まあ、性欲に行ったのは閉鎖された環境だったから仕方ないって、学者や研究者も言ってたみたいだけどね。心理的には仕方ないんですって。手軽な娯楽だし快楽を伴うから、興奮したらそっちに行くのは普通とも言えるわ」


 「私達には分からないけど、そういうもの何だろうね。それより緑銅の事も話題になってたけど、やっぱり他の星でも見つかってた素材だったのは笑ったよ」


 「パラデオン魔導国ね。見つかった緑銅を価値の無い金属として捨ててたっていうんだから、どうしようもないわ。とはいえ、使い道も分からなければ役に立たないと思っても仕方ないのかしらね?」


 「闘気を知らない以上は、何の意味も無い緑色の銅だもの。早々に放り出しても分からなくはないわ。どのみち魔法銃などには使えないんだし、現行の人類には無用の長物でしょう。あの七人なら使えるけど」


 「そういえばルーダイトとエイリーダがブラックホークの所属になってる事に、イェルハムラが文句を言ってきたらしいわね。総帥からそういう情報が下りてきてたわ。まあ、総帥は一蹴したらしいけど」


 「それはそうでしょ。そもそもトラップ血液で多くの本星の連中が死んでるのよ? それの責任を被せる形で”そんな連中は居なかった”としたんでしょうに。今さらどの面下げて物を言っているのかしら、呆れるわ」


 「まあ、イェルハムラとしては一部の者が騒いでいるとしているわ、公式には。間違いなく新しい聖王が命じて騒がせているのでしょうけど、その程度も分からないと思っているのかしらね?」


 「傭兵と思って舐めているのか、それとも権力の座についたから早速使っているのか。どちらでもいいけど、面倒な国よ。キメラの事でも各国から警戒されているのに、そんな者は居なかったとしておきながらこれだもの」


 「まあ、愚痴はそこまでにして、そろそろ東へと行こうか」



 ミク達は家から外に出る。既に4倍以上に広がった開拓村と、テント暮らしをしている傭兵のテントが後ろに見える。多くの者が一攫千金を夢見て来ており、そして多くの者が散っている。それもまたこの星系の日常だ。


 そんな中、白鱗族と青狼族の子供達が前を走って通り過ぎていく。大人達はまだしも、子供達にはわだかまりなど殆ど無い。あっても大人に植え付けられたものだけだ。それを持ち続ける必要も無い。


 子供達を見つつ村の外に出たミク達は、魔導二輪で東へと移動して行く。ロックは胸ポケットで騒ぎ、ティムはレイラの魔導二輪に乗っている。ミク達も昨日まで村の仕事に追われており、今日は久しぶりの狩りだ。


 発着場を横目に通り過ぎ、殆ど誰も足を踏み入れた事の無い東側へと進んで行く。こちらは鬱蒼とした森があり、下草も大量に生い茂っている。自然のままの森という感じで、誰もが調べようとしないのもよく分かる場所だ。


 ミク達はそんな下草だらけの森に踏み込んでいく。一応近くには誰も居ないものの、適当に鉈で切りつつ掻き分けながら進む。これだけ下草が生えていると小型恐竜なども入って来ないらしく、こちらは小さい動物の天国らしい。


 それと大量に生えている草自体が小動物の餌なので、二重の意味での天国だと言える。そんな中にお邪魔しつつ。ミク達は掻き分けて進んで行く。小動物の反応しかなく、更には襲ってくる事も無い。


 大量の草が面倒なだけの場所を掻き分けて進んでいると、こちら側にも川が流れていた。もちろん川ぐらいあるのが当たり前だろうが、こちらはギリギリまで草が生えている場所であり、非常に飛び越え辛い。


 川幅はこちらの方が狭く、おそらく7~8メートルくらいだろう。しかしながら助走距離が無いので、こちらの方が難易度は高い。ミクやレイラはともかくとして、ゼルが超えられるか分からない。


 仕方なくミクはお姫様抱っこで一気に跳躍して超える。ロックはミクの頭の上だ。レイラはティムを抱えてジャンプした。ゼルを降ろして進んで行くのだが、何故かロックが下りない。まあ、気に入ったのならいいかと思い、ミクは気にせず進む。


 こちら側の森はどうやらそこまで草が生えて居ないようだ。理由としては目の前に居る魔物などが原因だろう。何故か真っ赤な色をした牛っぽい魔物が、目の前で草を食べている。


 片や下草が生えていて移動も難しいほどの森。片や草があっても貪られて食われてしまう森。どっちの方が健康的な森なのだろうか? 若干悩むところである。


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