0484・開拓村に到着
食事をしてお腹が満腹になると眠たくなってきたのだろう。なかなかに食い荒らしてくれた。100人近くの食料と考えれば少ないのかもしれないが、小型恐竜の数で考えても10頭分は食べたのではなかろうか?
あれでも体高は2メートルくらいあるのだが、よく喰うものである。今日一日歩き続けていたので既に疲れきっており、お腹もいっぱいになったので爆睡しているが、ミクは今の内に食料の補充をする事を決意。睡眠薬を散布する。
ここに居る全員を眠らせた後、ティムを起こして見張りを頼む。ティムは了承してくれたので、今の内に行くかとミクは森の中へと入って行った。
感知系五種のスキルをフルに使い殺戮しつつ、血抜きや【冷却】は本体に任せる。分体側で殺し続け、多くの肉を本体空間に転送していく。残念ながら明日一日でも北の森までは行けないだろう。そうなると移動に2~3日かかる。
時間が掛かる以上は、それだけの人数を食べさせる食料を持たないと、100人を連れて移動するのは不可能だ。聞いたところレイラも向こうで食料集めをしているらしい。流石に向こうの者達を飢えさせる訳にはいかないので、レイラも必死だ。
本体空間でやりとりし、それぞれのアイテムバッグに様々な物を収納していく。ミクは森に居るので森の食べられる野草とか果実や堅果。そういった物を渡し、レイラからは平原の肉が送られてきた。
どうやら小型恐竜は色々な場所におり、普通に食べられているようである。それとオーク。レイラが真っ先に危険視して始末しておいたようだ。ブラックオークだけではなく、オークもこの星に居るらしい。
本当に碌でもない連中は何処にでも居るが、それが厄介でありながらも同時に食料にもなるという、何とも言えない状況だ。夜の内に食料を十分に確保し、戻ったミクはティムに母乳を飲ませて休ませた。
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朝からガッツリ肉を食い、やる気に満ちている者達と一緒に歩いていく。昨夜は見張りを頼んでいたので今はティムを寝かせ、ミクがティムを抱えている。小型犬の大きさなので大して重くもなく、青狼族と共に歩いて北へと進む。
集団が野営をしていた跡を見つけたので白鱗族の野営跡だと教え、向こうも朝から北へと歩いているのだろうと説明。こちらの方角で間違っていないという希望を持たせる。同じ事をしている者達が居ると思うと頑張れるものだ。
励ましながら進み、休憩を挟みつつも頑張って歩いていく。歩き疲れて動けない子供達は、大きくなったティムの背中に乗っている。今は進むのが先なので、こればかりは仕方ない。大人もギリギリなのだ青狼族は。
夕方には遠くに森が見える地点まで来たので、相当程度は進んできているだろう。人間種に比べて体力があるからこそだろうが、それでも白鱗族には追いつけていない。その事は構わないのだが、レイラから【念話】が来て川の相談をされた。
なので、今日の夜に橋を架ける事を言っておく。12~13メートルの川だ、つり橋のような物を架けるのは肉塊にとって簡単な事である。なので夜に片付ける事を言い、今は動かないようにと言っておいた。
夕方も変わらず、今度はオークの肉を焼いて食べていく。やはり両種族とも肉が好きであり、肉ならば貪るように喰う。今日はスープもあるが、野草などを細かくして入れているので好みが分かれるらしい。
それでも全員に一杯は飲ませて栄養を摂らせる。他にも果実や堅果なども渡すと、各々が勝手に食べていた。割と手慣れたもので、力で割って子供達にあげたりしている。そういう形で未亡人に接近しているらしい。
とはいえ女性側も女手一つでは大変なので、子供が受け入れるなら……という感じのようだ。顔が狼なのでイマイチ表情が分かり辛いが、上手くいけばいいなと見守るミク。いつから世話焼きキャラになったのだろうか?。
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皆が寝静まった後、再び睡眠薬を散布して全員を眠らせたらティムを起こす。昨日と同じように留守番を任せ、ミクは素早く北へと移動していく。レイラと合流したら木を静かに抜いていき、本体空間へと転送する。もちろん間伐する木だ。
それらを本体が加工し組みあげていく。出来上がったら、支柱を地面にしっかり深く刺して固定し、次に向こう岸へと跳んで支柱を立てる。後は蜘蛛糸の縄で組んである、板の連なった物を取り出して固定していく。
長く伸ばしてある縄の先の糸を持って元の岸の方へ跳び、糸を引っ張って手繰れば縄で組んだ板もこちらへ来る。最後に固定すれば橋の完成だ。
どんな種類の橋か詳しくは知らないが、青狼族が渡れれば何でもいい。渡りきったら橋は壊してしまうのだし。
二人ともが橋を往復してみたが強度に問題なし。なので、この日はこれで終わり。ミクもレイラも帰るのだった。
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翌日。朝食を食べて元気を養ったら、早速北へと歩いて行く。昨日までよりも明るい者達と共に歩いて行き、休憩を挟みつつ、昼過ぎには橋へとやってきた。最初にティムを通らせて向こうで待たせ、次に女性と子供達を渡らせる。
その次に男達を渡らせていき、最後尾にミクがつく。渡りきった後、ミクは【魔力嵐刃】の魔法で完全に破壊、バラバラになった橋は川の流れに乗って流れていく。破壊を見届けたミクは歩いて行った青狼族達を追いかけていくのだった。
それからも歩き続け夕方頃、遂に開拓村近くまでやってきた。あれから村を大きくしたのか、妙な事になっている。どうやら七人が堀などを大きくしたようだが、ゼルがMASCで指示していた所為らしい。
ミクはとりあえず作っておいた【思念話】の魔道具を、種族に関係なく一人一人に渡していく。首飾りみたいな見た目の魔道具だが、【思念話】は思念で会話できるスキルである。
これは相互理解のためのものであり、それ系の魔法陣が実は存在しているのだ。神が必要になるだろうからと創世紀に作っていた物であり、当然それをミクは教わっている。なので、昨夜の間に作っておいたのだ。
これで少なくとも会話は成立するので、揉め事も解決出来るだろう。ミクは七人に緑銅で出来た武器を渡しつつ、ブラックホークの事務所の場所を聞き移動していく。
新しく出来たであろう建物に入り、その受付に箱型の魔道具を置く。四角形の平たい箱があり、真ん中に水晶玉っぽいのが半分埋まっている。そんな訳の分からない物を置いて、水晶玉っぽい部分に手を置いたミク。
(聞こえてる? 聞こえてるなら成功なんだけど、どう? ………聞こえてるんだね。じゃあ、ここに置いておくから、しっかり管理をお願い。盗んだ奴は私が直々に首を刎ねるから)
その後、受付に居た所長にこの魔道具が【想念波】を使う魔道具であり、言葉が分からない者同士が会話する為の物だと説明した。水晶玉を触っている間、自分の思念を周囲に発する道具である。
新しい所長はすぐに有用性を見抜いたが、<恐怖の大王>が怖かったので黙っておく事にしたようだ。
それと、白鱗族と青狼族の事も説明。ここで一緒に住む事になるだろうが、揉め事を起こす可能性がある事も合わせて伝えておく。所長は渋い顔をしたが、ミクにとっては知った事では無い。
やるべき事は終わったので外へ出ると、白鱗族と青狼族は話し合いを行っていた。もちろん許せない者はいるのだが、同情的な者も白鱗族の中には居るらしい。
占いを捨てなかった自分達は、きっとあんな感じだったんだろうと思うと、先に捨てた側としては同情してしまうのだろう。
それと青狼族も積極的に殺していた訳ではなく、どちらかというと鉄の武器を奪う事がメインだったので、そこまで恨んでいる者が多くないのが理由だ。
とりあえず揉め事は起こさないようにと、明日から両種族の家を建てていくので手伝うように言っておく。それが終わると、ミクはレイラやゼルと共に夕食作りを始める。
やはり子供達は手伝ってくれるらしく、そこに種族の垣根は無かった。早く食べたいのは同じらしい。




