表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
477/500

0470・七人の器




 「この開拓村から北に行けばウサギの魔物と小型恐竜と芋虫が出てくる。南の森には小型恐竜と芋虫、それと食べられる野草や果実などがある。基本ここには栄養補助食品のような食事しか供給されない。ここまではいい?」


 「ああ。狙い目のウサギの魔物は北だって事が分かればいいさ」


 「それがね、問題があるのよ。北はウサギの魔物が出るけど、大型の角を持つ魔物と、空を飛ぶ翼竜みたいなのが出るの。私達はプテラと呼んでるけど、これが襲ってくると相当に危険なのよね。言葉は悪いけど、貴方達にはまず強くなってもらわないといけないのよ」


 「少なくとも近接戦闘が多少出来るようになってもらうのと、器を三回は壊してもらうわ。闘気の器まで壊すかは別だけども、そこまですればこれから先収入に困る事は無くなるから頑張りなさい。もちろんメイリョーズもカラマントもよ」


 「器ってのがよく分からないけど、ミクが居るんじゃ絶対に逆らえないでしょ。まあ逆らう気も無いんだけどさ。でも姉さん、それって本当に私達の役に立つの?」


 「もし器を三回壊すまで頑張れたら、私が作ったジャベリンバズーカは結構連発できるようになる。それだけ魔力は増大するから頑張ってよ。三回目を壊した後、記念で私達が使ってる連射銃を作ってあげるからさ」


 「「「「「「「連射銃?」」」」」」」


 「ミクが作った最高効率で敵を殺さない銃よ。威力は低い反面連射できるから、魔導装甲の【魔力盾マジックシールド】をあっさりと削りきるわ。つまり魔導装甲をあっさり停止させる武器」


 「貴方達の場合、その連射銃で叩きのめした相手を殺す作業が必要なのよ。その為に多少の近接戦闘を習ってもらうという事ね。ちなみに言っておくと、ウサギの魔物の速度は思っている以上に速いわ。正面には立たない事が重要、それと素早く相手を倒す実力ね」


 「ま、とりあえずコレを渡しておくよ。普通の魔法銃を改良した銃でね、魔力効率だけを最高まで引き上げてある。いつもよりも多く撃てるけど、威力としては普通だから気をつけるようにね」


 「それで十分な気がするのだが気のせいか? これだけでも各社が喉から手が出るほど欲しがる物だろう」


 「心配しなくてもいいよ。この惑星じゃ大して役に立たないから。後で強力な銃もあげるけど、そういった物を使う場合は魔力を増やさないと無理だね」


 「さっきも言ってたけど、どういう事? そもそも器というものを聞いた事が無い」



 そう言うカラマントを含め、全員に懇切丁寧に魔力と闘気の器の事を教えてやる。<宇宙一の剣豪>とかいうシンテン・リュウザでさえ一度壊した程度の魔力しか持っていなかった事。そして、だからこそあの程度の実力でしかなかった事を。



 「つまり、ミクやお姉さんは何度も器を壊しているから魔力や闘気が多くて強い?」


 「それもあるけど、素の能力を引き上げるには身体強化が必要なの。そして魔力と闘気を多く使えば当然、それだけ強く強化される。結果として器を壊している者とそうでない者の差は、天と地ほど違う事になってしまうわ。だから強化してあげると書き込んだのよ」


 「逆に言えば、他の者達がいない今がチャンスという事ね。他の者の目があったら、貴方達を強化する事なんて出来ないわ。だから今の間に強化しようという事よ。ここまで食料を持って来てくれたのと、食料の供給をこれからもお願いする可能性が高いから」


 「ああ、成る程。その為の報酬かぁ。ボクとしては出来れば欲しいかな。それだけで死から遠ざかれるし、正直に言って身体強化が学べるチャンスをふいにする気はないよ」


 「私もだ。聞いたところ苦労するであろうが、それを補ってあまりある利益だ。これから先の人生を考えれば、ここで多少の苦しみを受ける事は得にしかならん。拒否する理由が無い」


 「確かにな。オレも賛成だ。別に謎の美女のようになりたいとは思わんが、それでも傭兵になった以上は更に上を目指すのは当然だしな」


 「アタシもだね。目の前にあるチャンスを掴もうとしない奴なんざ、傭兵になる資格は無いよ。迷わずソレを掴んで引き寄せるのが傭兵ってもんさ」


 「メイリョーズの言う通り。ここで一年を過ごしても、それはその後の数十年……ううん、死ぬまでの利益になる。それを掴まないのは単なるバカでしかない」


 「うむ、まったくもってその通りだ。兵士たるもの、戦場で最後に頼れるのは己しかない。その己の能力を引き上げようというのだ、より生き残れるようになる事を拒否する阿呆などおらん」


 「えーっと、私は研究者なんだけど……はは、断るのは無理よねぇ……」



 こうして全員が強化される事に決まった。まずはアイテムバッグから食料を取り出してもらい。それをミクが肉で転送する。それを見た知らない連中は疑問に思ったが、ゼルが説明をすると顔を引き攣らせながらも理解した。


 全ての食料や調味料を本体空間へと送り、ミク達は開拓村を出て七人を鍛える。魔力と闘気を感じるところから始め、それらを使って微弱に強化をしつつ体を動かす。出来るようになったら歩いたり走ったりしていく。


 魔力や闘気が足りなくなったら<天生快癒薬>を飲ませ、回復させて再び訓練を続けさせる。熱心に訓練しているが、元々魔力や闘気を感じる素養があったのか誰一人苦労していない。エイリーダですら上手く使っている。


 というのも義手を自分で動かしてみて調整したりとしていたからか、七人の中で魔力の扱いは一番上手かった。二番目はその義手を使っていたルーダイトだ。あとは団子状態といえる。


 夕方まで特訓をさせたら、焼いたばかりのパンとスープ、そして豪快な小型恐竜のステーキで食事をとっていく。今は入り口の五人組の家だ。ミク達とルーダイト達の家は小屋なので、椅子やテーブルを追加していた。



 「ウメェ!! 何だこの肉!? 滅茶苦茶ウマイぞ!! こんな肉食ったのは初めてだが、これが小型恐竜の肉? 食料はもう無かったんじゃなかったのか?」


 「今日獲ってきた肉は一部本体にも送ってる、当然私達が食べる為だけど。本体に送れば獲ったばかりの肉も熟成できて、その日に食べられるんだよ。神どもが宇宙では使うなって禁じてるから、本体の居る空間でしか使えないんだけどさ」


 「まあ、そういう特殊な技術もあるという事よ。人間種にバレると碌な事にならないから使用を禁じられているの。流石に神を敵に回せば主でも滅ぼされるしかないから……」


 「まあ、神様を敵に回したらねえ……そうなるしかないわよ。私達なんて羽虫以下の存在でしかないし。潰すというよりも、何も分からず一瞬で消滅させられるでしょうし」


 「「「「「「「………」」」」」」」


 「まあ、神どもは横に置いておくとして、食事が終わったら七人の器を壊すからね。どれだけ回復に時間が掛かるか分からないけど、そこは個人差だから納得して。どうしようもないからさ」



 そう言った夕食後、ミクは<ワイルドドッグ>の五人の頭の上に触手を置き、一気に魔力と闘気を喰った後に使用。器を叩き壊した。当初は魔力だけにしようと思っていたが、闘気も壊さないと強くなれないので両方壊す事に決めたのだった。


 呻く五人を部屋に送る前に、ソムデオードの頭に手を置き話を聞く。すると、子供の頃に酷いフられ方をしてからトラウマになったらしく、女性に対して不信感があったらしい。今は大分マシになったそうだが、かつては男だけのチームにしか所属できなかったようだ。


 これ幸いにとミクは外に向かって声を掛け、開拓村の女性三人が入ってきた。この三人は性欲の解消が出来れば良いらしいので、<ワイルドドッグ>の男性三人の相手を頼んだのだ。もちろん無理矢理ではなく好みを聞いたうえで頼んである。いつだって? 訓練途中に外れた時だ。


 ミク達は手分けしてベッドに寝かせていき、ソムデオードの事を説明しトラウマを抉らないように頼んだ。おっとりした優しそうな雰囲気の女性は了承したので、ドアを閉めて後は任せる。男性が増えた以上、こうなるのは当たり前の事だ。


 メイリョーズとカラマントをベッドに寝かせた後さっさと家を立ち去り、続いてルーダイト達の小屋へ行く。そちらではベッドに寝た二人の器を壊し、そのまま小屋を後にした。


 最短でも一日なので明日の夕方までは回復しない。明日一日狩りをして食料を増やしておくかと考えていると、ロックがお眠になっていた。


 すぐに自分達の小屋へと戻った後、母乳を飲ませて寝かせるミク。明日の事よりもロックが寝そうな事の方が重要なのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ