0468・この惑星で生きるという事
色々な魔物が弱肉強食を繰り返す、それがこの惑星らしい。魔物は強力かもしれないが、代わりに希少な素材が手に入る惑星である可能性が高い。ミク達はそんな事を考えつつ一旦開拓村に戻る事にした。
皮を届けたり、肉を保管庫に入れたりと色々あるので戻るのだが、村には誰もいないだろうからミク達でやる事になる。それも含めて開拓だと思えば、それはそれで楽しい事でもあった。どのみち寿命の無い連中の暇潰しでもあるのだし。
この惑星には腐った連中はいないものの、5年や10年など誤差の範囲でしかない。それは神々にとっても変わらないので、ここで無駄な時間を使ったところで咎められる事もない。どうせ腐った奴等など幾らでもいるのだし、生まれてくるのだから。
開拓村に着いたミク達は、何故か村人がいる事を不思議に思いつつ中へと入る。マスターロの家に集まっている事を確認したミク達が玄関をノックすると、中からマスターロと一緒に住んでいた女性二人が出てきた。
すぐに案内されたのだが、奥のベッドではマスターロが肩口から血を流しながら寝かされている。何があったのか聞くと、小型恐竜の小さいのに襲われたらしい。あそこは木々が生えているが、それでも小さいのは入ってくるそうだ。
食べられる野草などを探していた際に襲われそうになり、女性を庇った際に噛み付かれたらしい。それで重傷を負ったそうだ。ベッドの周囲に居る邪魔な連中をどけ、ミクは【超位清潔】を使った後【超位治癒】を使った。
その後【超位修復】を使い<紅の万能薬>と<天生快癒薬>を飲ませれば終了。後は寝かせて体力を回復させるのと失った血を回復させるくらいだと言い、ミク達はマスターロの家に集まっている連中に説明し、獲ってきた肉の解体を頼む。
空飛ぶ魔物をプテラと呼び、そいつを4頭倒してきた事を伝えると仰天された。かつて多くの男性が犠牲になり、勝つ事も追い返す事も出来なかった魔物を倒せるとは思わず、レイラがアイテムバッグから出した際には全員が何とも言えない顔をしていた。
「こいつに散々多くの男が殺されたんです! 悔しいし憎い!! でも、私達には倒す力がありません……それに……」
「力の無い者が何を言っても、というところね。これに関してはどうしようもないわ。元々この星にはコイツらが生きていた訳だし、人間種の方が余所者だもの。人間種の古い時代にだって、余所者というだけで攻め滅ぼしたなんて事があるわ」
「そうね。それを考えればこいつらのやってる事って人間種がやる事と大した違いは無いのよ。別の生き物を食料として喰う。腹が減ったら襲う。気に入らないから八つ当たりする。まったくもって人間種と変わらないわね」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
「それは横に置いとくとして、ウサギの肉も獲れたんだけど、これはマスターロにある程度は食べさせた方がいいね。ま、こいつ自体が大きいし、結構な量を食べられるだろうけど」
「「「「「「「やった!!」」」」」」」
「「「………」」」
「ああ、ご愁傷様。増えたら増えた分を搾り取られるものね? その分、女性陣の満足も増えるから諦めなさいな。こういう時は女性には逆らえないものよ? それと男性達が立たなくなったら貴女達が困るんだから手加減しなさい!」
「「「「「「「はーい!」」」」」」」
「分かってるのかしらね? ウサギ肉をロックオンし過ぎな気がするわ。自分達が食べる訳でもないのに。こういう状況だと我慢できないのは男じゃなくて女なのねぇ? 初めて知ったけど、ここは例外かしら?」
「微妙なところよ。正直に言って女性が多いからこうなったんじゃないかしら? 初期は男性の方が多かったみたいだし、男性優位だったんだと思うわ。でも女性優位になってこうなっていったんでしょう。そもそも女性がOKを出せば大抵の男性は断らないわ。後は済し崩しでしょうね」
「成る程、そうなっていくんだ。あの人もヤってたから私だって、っていう感じに連鎖していっちゃうんだろうね。やがては相手が決まってヤるのが普通になっていくと……」
「そして気付いたら、雨の日に雨音に混じって嬌声が響くほどヤりまくる村になった訳ね。星を開拓じゃなくて、性を開拓する村なのかしら?」
「「「「「「「//////」」」」」」」
流石にここまで言われれば多少は恥ずかしくなってきたようである。男性陣がミク達に頭を少し下げているので、ミク達は気にしないようにと手で示しておく。雨の日に連続して搾り取られたのか、男性陣の顔色があまり宜しくない。
流石に休みの日に疲弊してどうする? と思ったので、多少の援護射撃をしておいたのだ。女性陣は恥ずかしさを感じているようだが、これで頻度を減らすかどうかは別である。反省しても今だけの可能性は低くない。
これ以上の手助けというか介入はミク達もしたくないので、これ以上は何も言わずにやるべき事を始める。出した肉を解体しつつ、黙々と作業を続けるのだった。
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解体作業などは終わったが、今日獲ってきた肉はすぐには食べられないのでお預けだ。しかし残った皮などを色々調べているが、村人にとっては非常に強度が高く、ある意味で扱いにくい皮だという事が分かった。
もちろん加工出来ない訳ではないみたいだが、ソフトレザーの時点で結構な強度を持ち、簡単には切ることさえ出来ない。ミクが出した鋏を使って何とか切れるぐらいである。ちなみに出したのは急遽作った魔鉄の鋏だ。
多少使う際に魔力を流さねばならないが、コツさえ掴めば誰でも使える。紫魔鉄はともかく魔鉄に関しては沢山持っているので気にせず放出しているミク。魔導装甲の一部などや砲塔などにも使われていたので、割と手元に残っていたりする。
当然だが、それ以上に残っているのが鉄だ。包丁だったり普通の鋏だったり、フライパンだったり鍋だったりを大量に出していたりするが、ミクは気にしていないし村の者達は諦めた。
意味不明な量の物がポコポコ出てくるのだ、いい加減驚き疲れたのだろう。最近はスルーする事も増えた。ミク的にはありがたいので、スルーされるようになってからも出しているが。
本体空間で邪魔な物扱いされるよりは、必要な所で使われた方が遥かに有意義というものである。全ての作業が終わったので小屋に戻るが、そろそろ食料が乏しくなってきた。
あの2チームは来るという事を言っていたが、果たしていつ来るのであろうか? そろそろ来てくれなければ食料が無くなるので言い訳できなくなる。少なくとも言い訳できる程度の食料は必要なのだ。
生きるだけなら母乳で済むのだが、流石にそれは色々とマズい。なのでそろそろ来てほしいと思っているが、コレばっかりは宇宙船の予定なので何とも言えないところがある。
あの2チームがこの惑星に来たくても、そこまでの頻度で宇宙船が飛んでいない場合はどうにもならない。
「確か……この惑星に来る際に調べた時には、そこまで頻度が少ない訳では無かったと思う。そもそもここに来る宇宙船は近くを航行する宇宙船に便乗する形だから、果たしてここまで来てくれるのやら」
「流石にVNM909行きのチケットを持つ以上、こっちまで来るとは思うけどね。仕事だから」
ゼルは仕事である以上来ると言うが、あのオンボロ宇宙船をイマイチ信用できないミクであった。




