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0046・王都への帰還




 朝食を食べて多少は満足したミクは、全て片付け忘れ物がないかを確認したらヴァルに乗る。ヴァルが大きくなったのを見た野営地の冒険者は、何故ミク達が余裕だったのかを理解した。


 ヴァルに乗ったミクとローネは別れの挨拶もそこそこに、一気にクオノ町へと移動していく。流石に一日で王都まで戻るのは難しい。とはいえ王都の手前までは戻れる。それで十分とも言えるので、ヴァルの背で分体を停止した。


 ローネだけは暇な時間を潰してもらわなければならないが、ミクはそうする必要が無い。最低限の繋がりを残し、本体で色々な道具を作って遊ぶのだった。


 途中のトト村でローネが昼食を買ったくらいで、後はトイレ休憩のみでクオノ町まで戻ってきた。ロキド山脈からだったからか結構ギリギリだったが、町に入る事は出来たので胸を撫で下ろす。


 町に入ったミク達は宿を探して見つけ、大銅貨4枚で二人部屋を借りる。宿の食堂で大銅貨4枚を支払い食事をしたら、さっさと部屋へと引き上げた。ミクは問題無いのだが、ローネは鬱陶しがっていたのだ。


 優雅に食事をする美女二人に、あからさまに下卑た視線を向けるのが何人か居た。それ故に機嫌が悪いのだが、ミクとしては襲ってきてくれないかな? と思っている。野営地で食べられなかったのが、若干ストレスになっていたようだ。


 そのまま少し雑談して時間を潰した後、二人はベッドで寝るのだった。襲ってくるだろうと思いながら。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 予想通りの行動をした阿呆達に、心の中で拍手喝采をしながらジッと待つミク。閂が開けられ中に入ってきた男四人は、ベッドに近づいた途端に拘束された。そして素早くドアを閉めて閂をするローネ。


 男四人の頭に触手を乗せて一気に脳を支配し、尋問を開始していく。結果は下らないもので、単なるチンピラが押し込みを働いただけらしい。普通は大問題なのだが、寝る必要の無いミクからすれば肉が自ら来ただけだ。


 裸に剥いた後、脳を喰らって転送したら終了。後は寝るだけと思いきや、ローネが近付いてきて<お強請ねだり>をし始める。ミクもヴァルも溜息を吐きながら相手をするのだった。


 傍から見ていれば食欲のミクとヴァルと、性欲のローネという違いしか見えない。どちらも欲に塗れているという事実は変わらないと思うのだが……。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 翌日、スッキリと起きられて心地良い朝を迎えたローネ。起動するミクとヴァル。最早これが日常となりつつあるのが怖ろしい。しかし本当に怖ろしいのは、煮えたぎったマグマのようになっていた半神族の性欲だろうか?。


 朝に相応しくない話は置いておくとして、起きた二人は井戸に行き、朝の準備を終わらせる。食堂に入ると一斉に見られるが、最早ナニをしていたかがバレていても表情を変えないローネ。


 大銅貨4枚を支払い、運ばれてきた食事を優雅に食べる二人。宿を出るまで注目され続けていたのだが、二人とも一切気にしていない。むしろ周りが「少しは気にしろ!」と言ってくるレベルである。


 クオノ町を出発した三人は、1時間半ほどで王都前に到着した。列に並んで順番を待ち、登録証を見せて中に入る。青銅はともかく、鉄のプレートはやはり目立つんだろう。後ろから「おおーっ!」という声が聞こえる。


 そんな声を聞きながらも、敵意と悪意が幾つか来た事を覚えておく三人。それを背に受けながらも興味の無い三人は、さっさとゼルダの屋敷に行くのだった。敵意や悪意を向けてきても、ザコはザコでしかない。


 ゼルダの屋敷に来たミク達は守衛から話を通してもらい、やってきたメイドに中に入れてもらう。応接室に通されるとゼルダは既に居て、昇華草を待っているようだった。ミクは肉からアイテムバッグを取り出しゼルダに渡す。


 中に入っている昇華草を確認していくゼルダ。それは薬師として、とても真剣な姿であった。そんなゼルダの珍しい姿を見ながら、運ばれてきた紅茶を飲むミクとローネ。全て確認を終えるまで無言で調べていくゼルダ。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「いやー、流石はミクね。新鮮なままだし、採取の仕方も完璧だったわ。素晴らしい品質よ。これ以上は無いんじゃないかしら! いつもなら買ってきた昇華草は三割から四割は駄目なのよ」


 「何故そんなに駄目なの? 別に採るのは難しくないし、パッと採ってパッと帰ってくればいいじゃない。三割から四割って使えなさ過ぎでしょ」


 「普通の冒険者はそんなに早く行って帰ってこれないの。更に長持ちさせるには、特殊な薬品に漬け込んで成分を抽出しなきゃいけないんだけど、それには新鮮さが必要なのよ」


 「つまり持って帰ってくるのに時間が掛かるから、三割から四割も廃棄する事になる……と。急いで送るように言っても駄目なのか?」


 「そもそも採取に時間が掛かるのよ。ロキド山脈は凶暴で危険な魔物も多いから、それらを警戒しながらの採取は大変よ? ……ミクなら楽勝でしょうけど、あそこには<デスホーネット>が居るからね」


 「ああ。商国の連中の秘密のルートを潰すのにも使ったな、ミクが。奴等のルートに縄張りを示すフェロモンを撒いたらしい。今現在、奴等の秘密のルートは<デスホーネット>の出る危険地帯になった」


 「ぷっ、あははははは……何なの、その面白い嫌がらせは! えっ!? これから奴等はデスホーネットに襲われるって事? あははははは……」


 「笑いすぎだぞ? 現場で見ていた私も笑ったが、冷静に考えると血の気の引く思いだ。いつも通っている道が突然デスホーネット塗れになる。とてもじゃないが笑えない」


 「……想像したら一瞬で冷静になれたわ、ありがとう。本当ならもうちょっと笑いたかったけど、よく考えたらミクは同じ事が出来るのよね。怖ろしすぎるでしょ」


 「近くにあの蜂の巣が無ければフェロモンを撒いても意味は無いけどね。あれは近くの蜂を寄せてくる事しか出来ないから。出来てもあの山ぐらいじゃないかな?」


 「それなら安心かしらねえ……。他には何かあった?」


 「セベオの町で商国の諜報組織を潰したのと、ロキド山の野営地で馬鹿を潰したのと、ローネがやたらにお強請ねだりしてくるぐらいかな?」


 「……何ですって!? 私だって我慢してるのに、どういう事よ!!」


 「どうもこうも知らんな。私は闇の神より神託を受けているし、共に居るだけだ。その間に何があろうと当事者の自由だろう? ゼルダにとやかく言う資格など無い」



 何だか下らない争いを二人が始めたので、面倒になったミクとヴァルは肉体を停止した。最近大元に戻る事も無く停止しているヴァル。実はミクの本体から肉を借りて出てきていたりする。


 魔女ではなく肉塊であるミクならではの荒業なのだが、ここでは誰も理解していないので気にもされていない。更にミクも明かしたりしないので、そのままスルーされている。


 実は結構重大な事……というのは世の中に多いのだが、明かされなければ往々にしてこんなものだ。ミクも殊更ことさらに騒がれたくないので喋らないし、妙な実験を言い出されても困るのだろう。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ここはミクの本体空間。最近のミクは工業の神や料理の神などの薦めで、解体道具や料理道具などを作っていたりする。やはり食べる事に対して並々ならぬ執着のあるミク。肉塊だが真剣である。


 今日作り上げたのはミンサーらしい。この前は各種包丁だったので、現在は刃物に嵌まっているのだろうか? こちらの方が平和なのは何故だろうと思うヴァルだった。


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