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0456・武人と文官




 「皇帝陛下……! 何故なにゆえ陛下がこのような事をなさったのです! ワシは少なくともクーエル君もオロストム男爵家もおとしめるつもりなど無かったのですぞ。結果としてはワシも愚かではございましたが……」


 「それはな、オールヴァント伯爵家が武人の家だからだ。そなたらは武人として物事を考えすぎ、文官の者達を理解しておらぬ。言葉は悪いが、オロストム男爵家がどれだけ馬鹿にされようとも勝とうとせぬのは当たり前だ。先ほどもそこの女性達が申しておったが、何をされるか分からんのだからな」


 「しかし……」


 「重ねて言うが、オールヴァント伯爵家は武人の家系故に理解しなさ過ぎなのだ。周りの者が取り入る為に勝手な事をするのをな。どうせ己が止めよと言えば、周りは止めると思うておるのであろう? そのような事は無い。そなたらに分からぬようにネチネチやるだけだ。それが文官の家の者どもでもある。オロストム男爵家は文官の家だ、その事は身に染みてよく知っておろう」


 「なんと……」


 「今回の事は武人系と文官系の家の行き違いが大きい。情けない話ではあるが利用させてもらった。昨今は我が国でもそういう愚か者が多く、更にはその齟齬そごを利用して対立を煽る者までおる始末。EER8871のホテル街の利権で、揉め事を起こした愚か者までおるのだ。そやつらは何故か消えたが……」



 明らかにミク達の方に目線を向けているが、ミク達は華麗に無視している。そもそも顔にも態度にも出ない肉塊に対して、睨んでも凄んでも無駄でしかない。それはともかく、そろそろお腹が空いてきたティムに軽食をあげるミク。当たり前だが自由である。



 「ゴホンッ! 此度の事は改めて場を設ける。余の前での御前試合となろうが、それならばどちらが勝とうと問題無い。そのような形を整えてやらねば文官の家の者達は実力を発揮できんのだ。……それにしても僅か一ヶ月で優勝するほどまでに鍛え上げられるとは思わなんだがな。そのうえ、あのシンテン・リュウザがあっさり殺されるとは……」


 「あの、とか言われてもねえ。私にとっては大した事の無いヤツでしかない。私の前で調子に乗ってるんだから、鼻で笑うよ。何故弱い癖に調子に乗るのか理解出来ないからね。頭が悪すぎて嫌になる。油断しなかったら勝てるとでも思ったんだろうけどさ、圧倒的に実力が足りなさ過ぎるんだよ」


 「それはそうでしょ。ミクに勝とうなんて1000年以上早いわよ。そもそも1500年以上生きている私でさえ手も足も出ないのに、高が100年も生きてない奴が勝てる道理が無いでしょ。さっきだって視認できない速度で首を刈られたじゃない。あれが当たり前の存在よ?」


 「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」


 「いえ、あれでも全力にはまだ足りないわよ? 本気で全力を出したら動きにくいからだけど。……ああ、それは地面が壊れるからよ。踏み込む際に地面が壊れるから動き難いの。だから壊れないように力を伝えなきゃいけないわけ。まあ、あのシンテン・リュウザという奴はその領域まで随分と足りていなかったみたいだけど」


 「うん、まあそれはそうでしょ。ミクとレイラ……だけじゃないわね、あと4人かしら? その領域に居るのは。どのみち敵対したら殺されるからしないけど。それより茶番も終わりならそろそろ帰りたいわね、私達打ち上げの途中だったのよ。お腹空いてるんだけど?」


 「ふむ。先ほど申した通り、後で場を設ける故に一旦は引くのだオールヴァント。オロストムも後で正式に通達するのと、そなたの評価は御前試合にて決める。とはいえ今は優勝か準優勝のどちらかだ、十二分に誇ってよい。後の事はおって通達する。ではな」


 「「「「「「「「「「ハッ!!」」」」」」」」」」



 そうして投影された映像が終了した為、やっと茶番が終わった。クーエルは木槍と革鎧を大会のスタッフに返している。その後、護衛する形で帰ろうとすると、伯爵令嬢が声を掛けてきた。まだ何かあるのだろうか?。



 「申し訳無い。その……身体強化が使えるのだろう? それは、そちらの女性方から教えていただいたのか?」


 「え、ええ、そうですが……。その、何かございましたか?」


 「いや、その、普通に喋ってもらって構わないのだが……。そうではなく、申し訳無い! 身体強化が使えるのは魔力の流れを見て分かったのだ。しかしジッと見ていたのを睨んでいたのと誤解されたのではないかと姉上に言われ、そういうつもりでは無かったと謝りたかったのだ」


 「そうでしたか、こちらこそ誤解していたようで申し訳ございません」


 「こちらこそ申し訳なかった。あれほど綺麗に魔力を流せるなら相当の実力者だろうと思ってな、だからこそ戦いたかったのだ。それに実力を隠して勝ち上がったのも見事だった。前回優勝者のスキルを流して勝利を決めた時など……///。そ、それより謝罪も兼ねてこの後ディナーでもどうだろうか!/// も、もちろん嫌なら断ってもらっても構わないのだが……」



 あれ? 何か様子が変だぞ? この雰囲気もしかして……。そう思ったレイラとゼルは、ミクを引っ張って静かにフェードアウトしていった。ロックは胸ポケットで寝ているし、ティムは大人しくついてきている。


 男爵家の子息と伯爵令嬢って、猛烈に大変だと思うが大丈夫だろうか? まあ、クーエルの人生なのでミク達にとっては知った事ではない。その一言で終わる話ではある。それよりも、途中のシンテン・リュウザが可哀想になるくらい空気になってしまった。真に不憫ふびんなのは彼だろう。


 ミク達は魔導二輪に乗り、再び繁華街に行って食事をする。いつもの店へと行ったら何故か周囲の客に騒がれ、シンテン・リュウザを倒した<宇宙一の剣豪>と言われる始末。その御蔭で食事をするにも苦労し、店を出るのも苦労した。


 ホテル街へと行っていつものホテルに泊まろうとするも、ウチのホテルへという誘いが酷かった。ようやくいつものホテルに着き、三人部屋をとって休む。ロックを起こして再度母乳を飲ませ、ティムにも飲ませて寝かせる。


 ゼルはいつも通りに本体空間へと送り、本体に愛された後で転送されてきた。大満足したらしく涎を垂らしているが、そういえばローネやネルと変わらないなと思う。二人が何をしているかは知らないが、この調子だとゼルも何処かへと飛ばされそうな気がする。


 そんな事を考えながら分体を停止するミクであった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 翌日。外へと出ると面倒な事になるので、ロックとティムとゼルに母乳を飲ませて朝食とした。一人と二匹が揃って二度寝をしている間に、ミクとレイラはMASCで調べる。ミクは面白そうな惑星を、レイラは面白そうな依頼を探す。



 「森林惑星に岩石惑星、海の惑星に魔物の惑星。……うん? 魔物の惑星?」


 「面白そうな依頼ってあんまり無いわねぇ……森林惑星にある秘境探索で、超古代文明の遺跡を調べる際の護衛。次は海の惑星での危険な魔物の駆除。ゴーレム惑星でのゴーレムコア採取の仕事……そういえば主はゴーレムコアをどうするの?」


 「んー? 最初は面白武器に取り付けて遊ぼうかと思ったんだけど、思ったよりもゴーレムコアって脆いんだよねー。その所為で武器は問題無いのにゴーレムコアが壊れてさ、今は棚上げかなぁ。自分の魔力使った方が早いし」


 「まあ、それはそうでしょうけどねえ。………で、熱心に見てるけど、何か面白そうなのがあったの?」


 「これかな? 魔物の惑星VNM909。ここさ、面白い事に大型の魔物が非常に多いんだって。その所為で全くと言っていいほど開拓が進んでないらしいよ。その開拓の手伝いの仕事もあるし、それにしようと思ってね」


 「開拓ねえ……まあ、暇潰しにはなるでしょうね。ゼル達が起きたら出ましょうか」



 次はどうやら大型の魔物が出る惑星らしい。魔物とはいえ肉が喰えそうなので楽しそうなミクと、その顔を見て笑顔になるレイラ。それはそれで怖い絵面だと分かっているのだろうか?。


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