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0452・クーエルの本戦 三回戦まで




 今日の朝はミクさん達が来て送ってくれた。どうも昨日アロンドが尾行していたので、用心の為だそうだ。それはいいんだけど、本戦が始まって全員が同じ控え室に居るのは仕方ない。でもさ、昨日言われていた女性がずっと僕を睨んでくるんだよなー。


 流石に試合の最中は相手を睨む事があっても仕方ないって思うけど、どうして試合の無い状況でも睨まれてるんだろう? 僕が何かをやった訳でも無いのに、意味が分からない。何かの理由があるとは思うんだけど、何の意味も無かったりして。



 「第一試合が始まります! クーエル選手とレッタンロ選手は第一ステージに進んでください!」



 僕の相手はレッタンロという聞いた事の無い人だった。まあ、向こうからすれば僕の方が聞いた事の無い奴だろうけど。何と言うか、体が大きくて長い槍を持っている。3メートルは超えてるかな? でもアロンドと違い楽々持ってる感じだ。流石は本戦出場者。



 「まずは今回初の本戦出場となったクーエル選手ですが……昨年まで予選一回戦で全て落ちてますね。流石にお伝えできる事は何もありません。その対戦相手のレッタンロ選手は4年連続で本戦一回戦敗退! そろそろあの長い槍は止めればいいのに……という選手です!」



 あれぇ? 僕はともかく対戦相手に辛辣すぎないかな? 毎年予選で敗退している僕の情報なんて何も無いのは分かるけど、対戦相手の人は本戦出場者でしょうに。何かプルプルしてるけど、気持ちはよく分かる。まるで公開処刑だし。



 「それではどちらが勝っても興味の出ない第一試合……始め!!」



 ……何なんだろう、このアナウンス。盤外戦術みたいに挑発してくるんだけど、去年までこんなじゃなかったと思うんだけどなー。……おっと、相手が攻撃してきてるんだけど、何故か怒りをこっちに向けてきてる。僕に対して向けるのは筋違いじゃないかな?。


 そう思いながら相手の突きを蛇のように巻き込みながら弾く。【棒術】スキルの中にある【蛇棍】というスキルらしい。スキルで使う場合はかなり補正がかかるらしいけど、自力でやるのは大変だよ。幾つかのスキルはそれっぽく使えるようにはなったけどね。


 ミクさん達が言うには、スキルは魂の許容量の分しか習得出来ない。だからスキルの動きを真似て自力で出来るようになれって言ってた。それも僕にスキルを教えない理由だったらしい。自分の手でスキルを再現出来るなら、スキルを覚える必要が無いって。


 滅茶苦茶だなぁと思うけど、実際にミクさんとレイラさんは普通にやってのけていた。それも【槍術】の奥義ともいえる【閃】というスキルまで。あまりにも速過ぎて訳が分からなかったけど、あれも自力で出来るんだから武術って凄いよ。


 おっとそろそろ疲弊してきたっぽいな。攻めるのって凄く大変なんだよね、僕が迂闊に攻めるなと教えられた理由なんだけども。空振りしたり流されると無駄に体力を使うだけなんだ。さて、そろそろこちらから攻撃しても大丈夫かな?。



 「おっとクーエル選手、しょうもない突きを繰り出しましたが、また防御一辺倒に逆戻り。やる気はあるんでしょうか?」



 本当に辛辣だなぁ、このアナウンス。まさか体力が無いフリをされるとは思わなかった。仕方ない、今度は流してからだな。相手の突きを柄を縦にして逸らし……そして回転させて足を打つ!。


 脛の横に直撃したからか相手は下がった。ならばその分こっちが踏み込んで畳み掛ける。やるべき時は一気にやって勝負を決めろと言われてるんでね!!。



 「おおっと、急にテンションが上がったのかラッシュ! ラッシューーーッ! しょっぱい試合にやっと決着がつきました! 勝者はクーエル選手!! やはり万年一回戦敗退であり、5年連続本戦一回戦敗退で幕を閉じるレッタンロ選手、20歳ーッ!!」



 えっ!? 同い年だったの!? ……うわー、何ともいた堪れない気分になってきた。一応礼をしてステージを下りるけど、何とも言えない気分だなぁ。そして他のステージの試合はとっくに終わっていたらしい。弱くてすみません……。


 次の試合も第一ステージで第二回戦の第一試合だ。現在は第七試合までやっている。優勝候補の人達とかって凄い試合をしてるんだろうなぁ……。次の試合はどうしよう? 同じように防御主体だと崩されるかもしれない。


 でもなー、崩されるならスキルだろうし、そういたスキル対策はしてきてるんだ。自分を信じろと言われたし、最初の作戦のまま進もう。とにかく待っている間に、相手の槍の捌き方を頭の中でシミュレートしておこうっと。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「さて、16人に絞られた本戦第二回戦。その第一試合が始まりますが、またも防戦一方でしょうかクーエル選手! そして今度は勝てないであろう前回の入賞者、エンテモン選手ーーーッ!! それでは第二回戦、第一試合……始め!」



 相手の人はヒョロっとした人だけど、槍を扱うのが上手い人だ。正直に言って、戦う相手がこの人で良かったよ。今日は猛烈にツいてるかもしれない。こういう技巧派な人は戦いやすいんだ。だってあの人達の方が遥かに上手いから。


 こういう人は技術に頼ってるから粗が探しやすいんだよ。残念だけど、あの人達に比べたら遅いし雑なんだよね。そこっ!!!。



 「おおーっと! クーエル選手の突きがエンテモン選手の手にヒーーット!! これは会場の女性ファンからクレームの嵐! モブが何やってくれとんじゃと言わんばかりだーーーっ!!」



 いや、モブって……別にいいけどさ。そうハッキリ言うのもどうかと思うよ? って、審判が出てきて……えっ!? 下りるの!?。



 「あーっと、エンテモン選手! 先ほどの攻撃で手の甲の骨をやられてしまった模様。潔く負けを認めてステージを下りるようです。流石モブと違うイケメン、去っていく様も美しいですねぇ」



 アナウンスが私情を挟みまくってるけど、斬新すぎない? ここまでやって文句が出てないって事は高位貴族の方か縁者なんだろうなぁ。触らぬ神に祟りなしっていうし、触れないでおこうっと。


 それにしても次は第三回戦かー。この時点で残りは8人だ。既に入賞が確定してるっていうのも凄いなぁ、去年の自分じゃ考えられないだろう。もっと早くから依頼を出していればもっと強くなれたんだろうか?。


 いやいや、高望みは駄目だし、大会はまだ終わってない。気を抜かずに集中だ集中。そもそも弱い自分が偶然に勝ち上がれているだけなんだ。そこを勘違いするな。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「それでは第三回戦の第一試合ですが……クーエル選手の相手は怪我が重く、第三回戦に出られないとの事で不戦勝でーーす。相変わらず運よく突破していきますねえ。じゃ、さっさと下りてください。邪魔なので」



 まあ、不戦勝なら良かった。このまま上手くいけば、手の内を晒さず決勝までいけるかもしれない。次の相手が誰かなんだけど……前回の優勝者なんだよね。ミクさん達が強いって言ってた女性は、トーナメント表だと真反対だから最後まで当たらないんだけども。


 その代わりに、次の対戦相手が強すぎるんだよ。僕としては、あの女性より弱いっていうのを心の頼りにして戦うしかない。しっかし残り4人か……いつの間にか後2回勝てば優勝なんだなぁ。感慨深いけど、勝つ事に集中しよう。



 「残り選手も少なくなってきたので一旦休憩でーーす。お手洗いは早めに行っておいて下さいね♪ 次の試合でモブ君は負けるでしょうから、一気に試合は決勝まで行きますよ!」



 やっぱりあのアナウンス、色々駄目な気がする。


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