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0449・イェルハムラの二人と宇宙一決定戦の始まり




 「まずはイェルハムラ本国で何があったかだけど、おそらく私達の血を培養か投与して暴走したね? その結果、肉の塊になって周囲の者を襲い、貪り喰う怪物が誕生した。間違いは?」


 「無い。……というより、何故その結果を知っている? まさか、何者かを通してすり替えた?」


 「そんな面倒な事を私がいちいちする訳が無い。答えはコレだね」



 そう言ってミクは首から上をバケモノの口に変える。牙が大量に生えた口に変わった途端、素早くルーダイトがエイリーダの前に出る。ミクが動く気配が無いので睨み合い状態になったものの、すぐにいつもの顔に戻すミク。



 「さっきの事からも分かる通り、そもそも私は人間種じゃないんだよ。肉の塊であり、人間種を貪り喰う怪物。それが本当の私。あの血液は人間種の血と細胞に私の細胞因子を混ぜた物でね、必ず理性の無いバケモノが誕生する血液なの。だからあの時、培養したり投与しない方がいいって言ったんだよ」


 「………はぁ、成る程な。どうりで誰も勝てんし、どうにもならん筈だ。敵対したとて死ぬしかないではないか。そんな相手と戦ってよく生き延びられたな、私達は」


 「主が皆殺しにする気が無かったのと、私達は神より腐った物を食い荒らせと命じられているからよ。貴方達はアンノウンという存在を聞いた事がある?」


 「昔の文献に区分として載ってたのは聞いた事があるわ。レッサークラス、ノーマルクラス、ハイクラス、グレータークラス、アーククラス、そしてアンノウン。正体不明かつ理解不能な存在、それがアンノウンだ……と?」


 「そう、ミクはそのアンノウンよ。そして私達は前に居たマリアレン農産国の農業惑星OTRE18で別のアンノウンと会ったわ。そいつが言うには、この宇宙には後3体のアンノウンが居る。おぞましい黒い人骨、光の翼を持つ人形、そして黄金の獅子。おそらくだけど、こいつらも腐った連中を殺す仕事を神から与えられている筈」


 「つまり、絶対に勝てんバケモノが宇宙には5体も居ると? ……洒落にもなっておらんが、少なくともイェルハムラから出たのは正しかったようだな。アレを続けておれば、必ずや我々も殺される側だったぞ。そもそも何故生かされたのかは知らんが」


 「生かしたのは、特に害が無さそうだったからだね。別に腐っている訳でもない感じだったし、研究者と兵士を殺したところで根本的に解決する訳じゃないし。だからこそ持って帰らせたんだよ、あのトラップ血液を」


 「………そういう事。私達は運び屋として利用された訳ね。そして本国のバカどもは貴女の予想通りの事をしでかし、数百万人の本星の者が死んだと。……まあ、本星には腐った汚物どもが大量に居るから当然なのかしらね?」


 「それだけじゃない筈なんだけどね。アレで生まれた肉塊は様々な病原菌なども増殖させて撒き散らす筈。あの肉塊が数百万人を食べただけで終わる筈はないよ。もしかしたら未知の病原菌で更に大量に死亡してるかも」


 「「………」」


 「そこまでの代物なの? 流石に滅茶苦茶すぎて危険すぎるわよ。ミク、やり過ぎて神々に滅ぼされたらどうする気? 少しはやった後の事を考えなさい」


 「ゼルが何を勘違いしているのか知らないけど、あのトラップ血液は<死の神>と共同で作った物だって前に言ったよ。だから私だけに文句を言ったりする事は無いし、持っていかせる前に「止めろ」と神どもなら言ってくる。神どもが言ってこないって事は問題無いって事」


 「うん、まあ、それならいいんだけど。<死の神>はいったい何をしておいでなのかしらね? トラップ血液を作ってるって……ちょっと待って、じゃあ神謹製のトラップって事!?」


 「だからそう言ってるじゃん。<死の神>は<遊興の神>より遊んでるし何なんだろうね? あの神以上に遊んでる神を私は見た事が無いよ」


 「えーっと、ちょっといいかしら? ……神というのは実在するの? 本気で言ってる?」


 「当然でしょ。そもそも私は光半神族リョース・アールヴよ? 光の神の神子であり、光の神の加護を持つ者。まあ、色々ヤり過ぎてアレな風に言われるけどもね。そういえば、昔イェルハムラに血液を少し採られたわよ?」


 「ああ、そんな事を聞いたような……。でも本星に厳重に保管してある筈。私はそこまでの研究者じゃないから、本星の最高研究機関なんて近寄る事すら出来なかったの。だから本当かは分からない」


 「おっと、出来たね。私の事とか色々な事を話させない為の賄賂ね。はい、どうぞ」


 「いや、賄賂って……って、義手!? しかもコレ、新しく見つかった魔鉄の色じゃないの!! 貴女、アレを持っていたの!?」


 「そもそも紫魔鉄を見つけたのは私達よ? 偶然だったけどCB27で見つけて、その後に寄越せと言われるのがイヤだから逃げたのよ。その後に拉致されてクーロンの売春惑星に連れて行かれたけど」


 「あ! それで思い出した、コレもあげるよ。貴女にはコッチでしょ? ああ、そうなるとコッチも要るかな?」


 「……えっと、飲み薬か何か? 妙な色だけど、ジュースと考えたら普通にある色ね。間違いなくジュースじゃないでしょうけど」


 「………成る程、確かに必要そうね。主が渡したそれは媚薬と精力剤よ。<薬の神>が作り上げた神謹製の薬で、ピンク色の方が媚薬で水色の方が精力剤。それがあれば楽しめるわよ?」


 「………///そ、そうなの? ふ///ふーん……神が本当に居るのかは知らないけど、調べるのはやぶさかじゃないわ///。ほら、早く部屋に戻りましょう! ルーダイト!!」



 そう言ってエイリーダはルーダイトを引っ張って行ってしまった。ミクとレイラは手を振って見送ったが、ゼルは呆れていた。薬が手放せなくなったらどうするつもりかと。



 「まあ、大丈夫じゃない? それに研究者だったんだし、これからの研究対象が出来て良かったんじゃないかな? 無くなったら必死で研究するでしょ」


 「適当ねえ……ロックもティムも寝てるし、二人は出て行ったし。そろそろ私の時間かしら?」



 ミクは右腕を肉塊に変えてゼルを包み込み、本体空間に移動させた。ロックやティムの教育に良くないのでは? と思ったのと、本体空間なら幾ら五月蝿くしても問題無いからである。神が来るかもしれないが、ゼルも神子なので問題は無いだろう。


 ミクとレイラはMASCを使い、イェルハムラ関連のニュースを確認していく。流石に書き込みなどを含めて、何処かには情報が出回っている筈である。それを探していくのだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 明けて翌日、今日は予選の日である。ミク達は暇だから見に行こうと思っており、朝も早くにホテルを出た。魔導二輪で<宇宙一決定戦>の会場へと皆で移動していく。会場入りのチケットは早い者順と決まっており、貴族以外に前売りはされない。


 なので朝早くから来て買うしか入る方法が無いのだ。既に結構な人数が並んでいるが、それでも余裕で買える程度しか並んでいない。ミク達は並んで待ち、順番が来たら5名分のチケットを買う。一応ペットの分も必要なんだそうだ。


 ロックは迷子にならないようにミクのジャケットの胸ポケットに入っており、ティムは小型犬の大きさでレイラに抱かれている。ミク達は会場の中で売られている高めの屋台に行って朝食を済ませ、MASCで槍の予選を確認していく。


 槍の試合は全て第二会場で行われるようだ。試合会場は全部で4つあり、3つのステージで一つの建物となっている。3面のステージが一つの建物の中にある形、それが試合会場だ。


 ミク達は真ん中に近い所の席に座り、第二会場を見渡せる遠目の場所に陣取る。アンノウンの目なら遠くとも簡単に見えるので、距離を離していた方が見やすいのだ。


 3人と2匹は試合が始まるまで、雑談しながらゆっくりと待つのだった。


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