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0447・クーエルの修行04と大食い




 朝になったのでゼルや2匹を起こし、昨夜のうちにホテル街の組織と、その後ろについていた貴族家の当主を抹殺してきた事を話す。ゼルは呆れたものの、よくよく考えれば肉塊ミクを敵に回したのだから、この末路は当然かと理解する。


 貴族の家の当主を殺したとて成り手は幾らでも居るし、そこでも醜い権力闘争をするだけだ。なので貴族の家の当主の事は気にしなくてもいいとゼルは言う。放っておけば権力闘争も終わり、誰ぞが当主になっている。そんなもののようだ。


 部屋の中で話しておくべき事は終え、食堂に朝食を食べに行く一行。朝食を終えたら男爵家の屋敷に行き、クーエルの練習を始める。足運びや体重移動も追加してきているが、それでも基本的な練習に文句もなくついてくるクーエル。努力の才能はありそうだ。


 休憩中にスキルの事も教え、ある程度の技術がある者は隙として狙ってくるから教えない事も言っておいた。特に去年の決勝を見たら、隙として狙ってくる程度はしてくるとも言ったら納得していた。身体強化の有用性を理解しているからだろう。


 見た目に分かりやすいスキルよりも、基本を向上させてくれる身体強化の方が優秀なのだ。代わりに自在に使うのは大変なのだが……だからこそ優秀だとも言える。休憩も終え、再びひたすら基本を叩き込んでいく。


 他の連中も今ごろは同じように体に叩き込んでいるだろう。基本とはそういうものだし、その基本の部分で差が出るから勝てないのだ。達人は皆そうだが、基本のレベルが極めて高い。地味な部分が高いレベルだからこそ、素人は何をされたか分からぬままに負けるのだ。


 そんな事を教えつつ、ひたすらに今日も基本を叩き込んで終了。最後にいつも通りゼルの母乳を飲ませたら、さっさとミク達は屋敷を後にする。体も大分しっかりとしてきたと思う。元々体は出来ていたが、今は体の内側が出来てきた感じだ。


 しっかりと槍は振れているし突けている。足腰がしっかりしてきた事もあるが、それ以上に足捌きも少しずつ形になってきた。地道な基本は少しずつ身についているようである。とはいえ、素人よりはマシなレベルだが。


 これ自体は仕方がない。一ヶ月やそこらで達人に勝てるようにするのは無理だ。去年の動画で見た優勝者を倒すのですらギリギリであり、クーエルの体が出来ていなかったら無理だった。


 そんな会話を【念話】でしつつ繁華街へ行き、いつもの店に入る。まだ早い時間だと思うが、お客で満席であり入れなかった。仕方なく<ゲンコツ爺>に行き、前回と同じ量を頼む。


 ゼルは若干嫌な顔をしたが、残りはミクかレイラかティムが食べるので小さな器に分けて食べるように言う。すると小さな器を取りに行った。今日はレバニラのような料理とチャーハンのような料理だった。


 どうもこの店は日によって料理が違うらしい。レバニラのような料理はティムの好みに合ったようで美味しそうに食べている。ミク達も食べているが、一向にペースが落ちずに最後まで食べきった。ゼルは半分も食べられずにギブアップ。


 残りは2人と1匹が食べて終了。店を出ようとすると、店主から声が掛かる。



 「沢山食べるのに自信があるなら、ここの2軒隣に大食いの店があるから行ってみな。チャレンジに成功したらタダで飯が食えるぜ。ただし失敗したら10倍の料金を払う必要があるけどな」


 「へえ、面白そうだね。明日行ってみるよ。私がギブアップする事は無いけどね」


 「ははははは、そりゃ楽しみだ。早けりゃ記録として張り出されるからな! 楽しみにしてるぜ!!」



 店を出たミクは明日行く事を決め、鼻歌を歌いながら魔導二輪を出す。ゼルは教えてはいけない相手に情報を教えたなと思い、心の中で行った事も無い店の店主に手を合わせた。


 ホテルに戻り部屋をとったら、さっさと休む。ゆっくりしながらニュースを検索していると、<宇宙一決定戦>の出場者が紹介されていた。少し気になったので調べてみると、あのシンテン・リュウザという奴が紹介されている。


 何故か今年から【武仙術】だという事をバラしているらしいが、何か心境の変化でもあったのだろうか? そうミクが言うと、レイラとゼルからジト目を受けた。久々だなと思いながらも、「やはり、そうか」と納得は出来た。



 「そりゃあ、ねえ。自分が<宇宙一の剣豪>だと調子に乗っていた奴だもの。それがミクに手も足も出ずに叩き潰されたのなら、危機感を持って当然でしょう。そもそも【縮地】と【雷切り】のコンビネーションって結構大変よ? 私なら義手で防ぐけど」


 「主は【雷切り】より速く殴ってたわね。相手の速さと主の拳の速さ、それがカウンターとなって入ったから、あっさりとあの一撃で意識を飛ばされていたわ。まあ、主が相当手加減していたけれど」


 「そうじゃなきゃ、相手の首から上が千切れ飛ぶでしょうよ。ミクの拳や腕が負ける筈は無いんだし、人間種の首なんて脆いわよ? 【縮地】の速度を考えたら当然だし、【雷切り】より速いミクの拳が直撃したんじゃねえ……」


 「ま、大した実力じゃないのは間違い無いね。少なくともこの宇宙には4体のアンノウンが居るんだし、<宇宙七の剣豪>かな? 適当に剣を振るだけでもアンノウンなら勝てるだろうしね」


 「でしょうね。そもそも適当に剣を振っても、果たしてその剣が常人に視認出来るのかしら? それほどまでにアンノウンというのは格上なんだけど、知られてないんでしょうねー。古い時代ならまだしも、今はこんな時代だもの」


 「知ってようと知ってなかろうと、戦いになったら命の奪い合いだからね。そこで後悔しても遅いんだけど、バカはそこまで行かないと理解しなさそう。まあ、だからこそバカなんだけど」



 ロックが「ピーピー」と言っているので母乳をコップに入れて出してやると、飲んであっさりと寝た。残った分はティムが飲み、こちらもあっさり眠る。ミクとレイラはゼルを挟んで満足させてやり寝かせると、分体を停止するのだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 次の日のクーエルの練習を終わらせたら、昨日<ゲンコツ爺>の店主に言われた通り、2軒隣の店に入る。すると、店の中にはステージがあり、そこで必死に食べている人物がいた。


 結構なデブで大食いに自信があったのかもしれないが、後ろの上に掲げられたタイマーは残り13秒を示している。料理の残りは半分ほどなので、どう足掻いても無理だろう。最後に口に詰め込んだが、飲み込めずに終了した。


 チャレンジ失敗なので27万ほど支払う羽目になっている。つまり普通なら2万7千もするらしい。見たところ7キロから8キロほどあるので、それぐらいの値段なら安い方だろう。


 ミクは店主に言い、チャレンジする事を宣言した。店主や周りの客は「止めとけ」と言ってくるが、ミクは27万を置いてチャレンジさせろと言い切った。店主の方も仕方ないと諦め、30分ほど待つようにと言う。


 他の者達の料理もしつつ、ミクのチャレンジ料理を作らなければならないからだ。それでも30分なら早い方だが、殆どは作り置きの料理を盛り付けるだけらしい。こういう店なら作り置きで用意するのは普通である。


 30分後、ステージの上のテーブルにはデカ盛り料理が並べられており、ミクの後ろの上にある時計は45分を示していた。つまり45分以内に食べきれば成功で、今までの最高記録は39分42秒で完食だそうだ。


 店主の「スタート!」という言葉でカウントが始まるが、レイラやゼルに2匹はどれぐらいで食べ終わるか余裕の態度で見ていた。


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