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0440・マリアレン農産国のシャス伯爵




 マリアレン農産国の宇宙船に乗り、今度は農業惑星OTRE18へと移動する。どうやらシャス伯爵もこの星に居るらしいので、貴族親子もメイドも一旦伯爵と合流する事になったようだ。


 宇宙船に乗って七日、ようやくミク達は農業惑星OTRE18へとやってきた。それまでにマリアレン農産国の事を聞いたりなどしていたので、ある程度の暇は潰せていたが長かったとも言える。四人の目が既に妖しいくらいなのだから。


 マリアレン農産国は農業と畜産の国であり、他の国とはおもむきが異なる。他の国はそれぞれの国が持つ星々の範囲を国としているが、マリアレン農産国は国だが星の場所がバラバラなのだ。


 これは農産物をそれぞれの国に売る為に、その場所と近い所の星を農業惑星として持っている為である。だからこそヴィルフィス帝国の領土内にマリアレン農産国の星があり、ガドムラン星国の領土内にマリアレン農産国の星がある。


 それぞれの国も農業惑星を持っているが、農業と畜産のノウハウに関しては桁が違うと言っていい。正しく農業と畜産に特化した国なのだ。代わりに中立を決めており、ありとあらゆる戦争に参加する事は無い。


 マリアレン農産国が掲げている国是は<飢えない事>だそうだ。なので、この国が研究開発しているのは農業用と畜産用の魔道具であり、その分野では他の追随を許さないらしい。まあ、色々な国があっていいと思うし、美味しい魔物の出る星もあるそうだ。


 そこに食いつかない肉塊ではないが、今は依頼の方が先だと頭を切り替える。随分と抑制が効くようになったものだと喜ぶ<善の神>。相変わらずであった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 OTRE18のシャス伯爵家の領地まで飛行船で行き、降り立った後は魔導二輪に乗って移動する。ゼルが魔導四輪を持っている為、貴族親子とメイドはそちらに搭乗して移動中だ。ちなみにゼルが持っている魔導四輪はバギーによく似た物だった。悪路の走破性能が高いらしい。


 田畑や畜産の建物を見つつ、長閑な田園風景を見ながら移動して行く。そう、ここには米があったのだ。もちろんこの宇宙で米を食べた事はあるが、実っておりそろそろ収穫を迎えそうな米は初めてである。ついでに今の宇宙で田んぼを見たのも初めてだ。


 そんな風景の中を走って行くと、大きなログハウスが見えてきた。どうやらアレがシャス伯爵家の屋敷らしい。他の家も木製の家ばかりなので、ここだけ見たらネオガイアの古い時代に見えなくもない。少しルーナが感動しているようだ。



 「それは当然です。黄金の絨毯とも表現される稲穂の実った姿は、やはりヤマト人としてグッとくるものがありますよ。私の心の原風景とも言える景色ですから」


 「そこだけ聞けば素晴らしいのに、それを言っているのは母乳フェチの茨木吾郎なんだよね」


 「………」



 周りも聞いていたが、全員が色々な意味を篭めてスルーした。尚、魔導四輪の四人は聞いていない。ルーナの尊厳は守られたようで何よりである。茨木吾郎の尊厳? そんなものは既に無い。


 ログハウスの前に停車し、アイテムバッグに仕舞ったらドアノッカーのような物が門の横にあるので輪を握る。すると大きな鐘の音が鳴ったので、これは魔道具らしい。ログハウスから老人が出てきたが、サラエダを見るなり走ってきた。



 「奥様、御無事でなによりで御座います! 旦那様も心配しておられました。すぐに御顔をお見せ下さい、旦那様も喜ばれましょう! ……こちらの方々は?」


 「こちらの方々はQWA611で助けて下さった傭兵の皆さんよ。皆さんが居なかったら死んでいたかもしれないの。丁重におもてなしをして。それと、皆さんには例のお仕事を依頼してあるから」


 「!! かしこまりまして御座います。皆様、当家にようこそ」



 そう言って老人の執事らしき人はミク達を通す。執事らしいというのは、格好がどう見ても農業従事者だからだ。スーツや執事服ではなく、着ているのはオーバーオールであり、フォークを持って麦藁帽子を被っていたら完璧であったろう。


 そんな農業執事が案内してくれつつ中へと入ったミク達は、無駄な調度品とか贅を凝らした物が無い事に感心した。そういった物が無い方が、このログハウスとしては正しいからだ。もし贅沢品があれば興醒めしてしまったであろう。


 奥の執務室に案内されたが、当主であるシャス伯爵はジーンズにTシャツ姿だった。それはどうなのかと思わなくもないが、見た目は精悍な顔つきの青年なので似合っている。若さというエネルギーを身に纏う姿としては有りなのではなかろうか?。



 「おお! おかえり、サラ、ルーディア! 心配していたが無事で何よりだ。訳の分からない、ぎだらけの気持ち悪い生き物を見た時には焦ったよ。隠し通せなくなったのか、イェルハムラが声明を発表していたけど」


 「ただいま戻りました。私もそうだし、この子も無事よ。それにしても聞いていた通り、イェルハムラが善からぬ事をやっていたのね。皆さんが居なければキメラに殺されていたかもしれないわ。皆さんが倒してくれた御蔭で無事だったの」


 「……君達が助けてくれたのか、ありがとう。だが、あの気持ち悪いヤツ、キメラとかいうのかい? あれを君達が倒した? ………ふむ、サラが嘘を吐く事は無い。となると、イェルハムラはそこでも嘘を吐いているな」


 「左様で御座いますな。イェルハムラは自分達が打ち倒したので問題無いと言っておるそうなのです。今のところ、殆どの傭兵は空からの強襲と魔物の魔法でやられてしまっており、勝っているのはイェルハムラの者だけだと、そう宣伝しております」


 「あの後にイェルハムラの軍でも来たのかしら? 私達はミクさんの大きな筒から放たれる魔法で助かったのよ。そういえばゼルさんが動画を撮っていたのを見せてもらったわ」



 その言葉を聞き、シャス伯爵はゼルが撮っていた動画を見せてもらい驚く。共に見ていた老執事もビックリしているが、いったい何に驚いているのだろうか?。



 「この映像!! イェルハムラはぼかしているが、別角度からの同じ映像をイェルハムラは流しているのだ。自分達が新しく開発した兵器で見事に打ち倒したのだと!」


 「あの国もクーロンと同じくらい汚いわねー。そもそもミクが担いでいる大きな筒はジャベリンバズーカといって、ミクが自分で作りだした物よ? かつての古い時代の作り方と同じく、意図的に術者の力量に左右される魔法陣で作ってあるの。だから異常なまでに高性能なのよ」


 『まあ、主が作ったのだから当然だし、最高効率で最大威力にしてあり、使う魔力の事を度外視して作ってある。普通の者では撃つ事すら難しいのだが、イェルハムラは何も理解していないな。それとも上層部の独自判断か?』


 「//////」



 何故かメイドが反応しているが、どうやらヴァルの声に弱いタイプだったようだ。どうりでアピールが激しい筈である。それはともかく、ミクが持つバズーカを理解したシャス伯爵は、溜息を吐きつつ椅子に座る。


 ミク達も執務室にあるソファーに腰掛けたが、何故かルーディアという娘はミクの膝に乗ってきて体重を預けてくる。何が気に入ったのか知らないが、本当に大物になると思える子だ。


 シャス伯爵とサラエダが謝ってくるが気にしないように言い、ミク達は依頼に関する情報を聞いていく。それを聞いたシャス伯爵は少し渋い顔をした。



 「君達が依頼を請けてくれるのはありがたいのだが、妻と娘とメイドの命の恩人にさせる依頼では無いような気がしてね。いや、傭兵として請けると決めた以上は止める権利は無いのだが……場合によっては危険でもある」


 「外傷が無い死体でしょ? これだという予想が無い訳でもないから、話が聞きたいんだけどね」



 それを聞いたシャス伯爵は、驚くと共に話し始めた。


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