0435・キメラ
【念話】を用いて話をした後に、さっさと寝た一行。二日連続で夜の性活が無かった事に怒っていたが、母乳と【快眠波】で眠らせた。監視をしているのが何処の誰だか知らないが、面倒な連中である。
次の日の朝。スッキリ目覚めて宿を出た一行は、酒場で食事をする事もなく発着場へ行き、次の第六ベースへと向かう。社安の連中が来て何か言いたげな顔をしていたが、ミク達の移動を妨げる事は出来ない。
鬱陶しい事をしてきた可能性のある連中なので、わざわざ愛想良くしてやる必要も無くスルーしたが、それで理解したのか何も言ってこなかった。その事から、盗聴器の部屋に誘導させたのは連中だったのだろう。
第六ベースへと辿り着いたミク達は酒場で朝食を食べた後、三組に分かれてそれぞれの方角を調べる。もう慣れたもので、ささっと移動していったが怪しい物は無し。空振りに終わった。
ここ第六ベースでは何故かデスピエロとクーロンが大人しいが、遂に勝てない事を理解したのだろうか? そんな事を考えつつも宿をとって部屋で休む。今回の部屋は盗聴器も何も仕掛けられていない部屋であり、久しぶりにゆっくり出来るようだ。表情が明るい。
既に夕食も終えて後は寝るだけだが、妖しい目を越えて性欲に塗れて頭が茹だっている。本当にコレが好きな連中だと思いつつも、触手が乱舞し四人を責め立て追い込んでいく。それにしても悦びすぎではなかろうか?。
若干引きつつも四人が満足するまで責め抜いてやり、終わったら【超位清潔】で綺麗にして分体を停止。ロックとティムの相手をして時間を潰すミク。ムシュフシュの名前はティアマトのティと、ムシュフシュのムでティムとなった。
本人は喜んでるっぽいので気にしないでおく。種として存在する以上はティアマトは関係ないのだろうが、ムシュフシュという名前がもじりにくいのだ。そんな事を考えつつも【神育の輝乳】を与えていく。
飲んでは寝てを繰り返しているが、たまに本体空間を走り回ったり、飛ぶ練習をしているティムの背中に乗っていたりするロック。楽しそうで何よりである。
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次の日。朝起きたら準備を整え、最後のベースである第七ベースへと行く。ここに何も無いと傭兵が大量に死ぬ原因がゼタナクトの罠魔道具などになるが、その程度で大量に傭兵が死ぬだろうか?。
そんな話をしつつも飛行船は順調に飛び、最後の第七ベースへと着いた。ミク達は酒場に行き朝食を食べつつMASCで調べるが、第七ベースにもそれらしき話は無い。いったいどういう事かと思うも、とりあえず各方角へと進んで行く。
ジャングルの中で視界が悪いとはいえ、ミクに感知できないものなど殆ど無い筈。何かを見落としてきているのだろうか? 昼になったので一度戻り、今度は別の方角を調べる。結局ここも空振りで終わった。
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第七ベースへと戻ってきたミク達は、酒場に行って夕食を頼みつつ話し合う。このままでは傭兵が大量に死ぬ原因が分からないままであり、依頼達成にはとても足りない。ゼルの経験した古い時代の話も聞いていると、「バン!」という音と共に入り口の扉が開けられた。
「おい! 大変だ!! 第八と第九ベースで大量の死者が出てるぞ!! 何でも体が継ぎ接ぎだらけのおかしな魔物が襲ってきたらしい!! 第八と第九ベースは大混乱してる!!」
ミクは慌ててMASCを使い、第八と第九ベースの情報を探す。すると大量の混乱した書き込みを見つけた。食事をしつつ情報を精査すると、どうやら第六ベースと第七ベースの間辺りから飛んできたらしい。
まるでキマイラのような見た目の奴から鵺のような見た目の奴もいて、出回っている写真には滅茶苦茶な生物が写っている。どう考えてもイェルハムラが作っていた生物であり、そいつらが暴走した結果だろう。
それにしても急に何故暴走したのだろうか? そして何故第六や第七ではなく、第八と第九ベースを襲っているのだろう? イマイチよく分からないが、食事を終えたミク達は宿に行って部屋をとる。
普通の宿の部屋をとって中に入ると、慌ただしそうにルーナが話し始めた。
「お姉様。第八と第九ベースが襲われていますが、どうしましょう!? 今からは夜ですし簡単には助けにいけません! 飛行船が出てないと近寄る事も出来ませんし、それにこれはどう考えてもキメラですよね!?」
「どこにでも似たような事を考える奴は居るんだろうね。色々な魔物をくっ付けてどうこうって。たださ、こいつら本当に成功してるかなあ……何か研究所か何かから脱走したようにしか見えないんだけど」
『主が言いたいのはあれか、長く経つと体が崩れて崩壊するという事か? 無理矢理にくっ付けた連中だから、長くは保たないだろうと………やはりそうか』
「まあ、言いたい事は最もよねえ。無理矢理くっ付けたおかしな生命体が長く生きられる筈もない……でも、その割には第八や第九ベースには飛んでいってるのよねえ」
「よく分からないけど、明日にしましょう。今ここで何をどれだけ言っても意味はないわ。それに私達が助ける必要も無いし、証拠が出てきてくれたんだもの、これで解決ね。後は一刻も早くこの星から離れるだけよ」
「えっと……離れるんですか? まあ、イェルハムラの尻拭いをするのもどうかと思いますけど……」
「でしょ? 私達がいちいち尻拭いをしてやる義理は無いわ。宇宙船の発着場は第一ベースにしかない。あそこに行かないとQWA611から脱出できないわ。早く着いておかないと、いつまでも脱出できずに取り残される可能性が高い。そうなると何処にも行けないという状態に陥るかも……」
「そのうち食料も無くなり全滅しそうですね。まあ、私達の場合はミクさんが居るのでそれは無いですけど、逃げられるならさっさと逃げるに限ります」
「全ては明日ですね」
そう言って今日は早く眠る。明日は早起きして、すぐに飛行船に乗らなくてはいけない。ここは第七ベースであり、第一ベースからは一番遠いのだ。さっさと四人を眠らせたミクは、分体を停止して本体へと戻った。
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翌日。朝早くにミクに起こされた四人は、素早く準備を整えて宿を出た。未だ朝焼けの中、急いで飛行船の発着場に行くと、既に昨日から泊り込みで順番を待っている連中までいた。機を見るに敏な奴等である。
その後ろにミク達も並び、飛行船がやってくるのを待つ。それなりに便数は出ているので朝一番の便が到着し、ミク達が入って座って待っていると、後ろからドンドンと乗ってきた。逃げなきゃいけないのは多くの人が理解しているらしい。
ミク達も詰めて乗り、ギリギリまで人を乗せた飛行船は第一ベースへと飛んでいく。乗っている人達からは第八ベースと第九ベースの真偽不明な情報が語られ、勝手に恐怖していたりするのをジッとミクは聞いている。
恐怖に煽られた集団心理とはこうなるのかと思いつつ過ごしていると、突如飛行船が大きく揺れた。慌てて感知系の五種のスキルを使うと、外にキメラっぽい反応がある。おそらくそれから攻撃を受けたのだろう。飛び回る連中は厄介だ。
飛行船には武器など搭載されておらず、あるのは【魔力盾】だけだ。そのうえ大した出力も無い魔石を使う物である。おそらく魔力は既に使い切ってしまっただろう。
そう思っていると飛行船の前方左にキメラの【火球】が直撃し、大きな穴が空いてしまう。かろうじて乗客が空中に放り出されずに済んだが、それはミクとヴァルとレイラが【魔縄鞭】の魔法で助けたからだ。
魔法攻撃とは面倒な事をしてくれるキメラだ。少しばかりムカついたミクは、空いた穴の前に立ちキメラを見据える。




