0433・第五ベース
第四ベースが滅茶苦茶になった事で治安組織の者が来たが、周囲の連中は発狂している者達が破壊しているのを見たと言っている。狙われたのがミク達だとも言っているが、これは面倒な事になりそうなものの仕方ないだろう。
警察のような連中が聞きに来たが、ミク達は酒場で朝食を食べていただけだと説明。更に酒場のマスターもミク達の証言を裏付けた為、周囲の店に聞き込みに行った。町中に監視カメラが付いていない弊害であろうか?。
出てきた警官らしき人物はミク達の言っている証言が正しいとして、他の警官と手分けして発狂している連中から取り調べを始めた。ミク達は狩りに行って良いか聞くと、ベースを移動しなければ構わないとの事なので、今回も手分けしてして調べる。
ここ第四ベースは北東の方角が儲かるらしいのだが、そこは大きなトカゲが多いらしい。ただし麻痺毒を持つトカゲなので注意が必要だが、代わりに肉が美味なようだ。それを聞いたレイラが北東に行った為、ヴァル達には南東へ行ってもらう。
相変わらずミク達は儲かる方向とは逆方向に行き、様々な物を調べていくのだった。
昼になったので戻ってきたが、特に大した物は無し。昼からは南西だが、こちらも大した物は無さそうである。そんな気がしながらも一応の確認の為に進むミク達。魔力を薄く発しながら調べていくのだった。
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やはり思った通り怪しい物は何も無く、罠魔道具も第一ベース近くだけだったらしい。戻ってきたミク達に警官達が寄ってきて、近くの建物まで来るように言ってきた。
ここで逆らう理由も無い為、ミク達は素直について行くと、三人は切り離され別々の部屋で一人ずつ話を聞かれる。
「お前達は自分達から何もせず、ただ朝食を食べていた。それは間違いないか? それ以外には何もしておらず、あのおかしくなっている奴等と接点は無いんだな?」
「接点が無いというより、そもそも誰が居たかも知らないよ。私達は朝から飛行船に乗って第四ベースに来て、あの酒場で食事をしていただけ。それ以外には何もやってない」
「では何故第四ベースに来た? 第三ベースの方が儲かるだろうに。わざわざ第四ベースに来る理由が無いと思うが?」
「そんなの実際に来て確かめるまで分からないでしょうに。幾ら高値で売れる奴が居ても、数が少なければ儲からないのと同じだよ。何処が儲かるかは自分で調べないで分かる訳ないじゃん」
「う、む……では話は変わるが、白い鳥の雛をお前達が連れていたという話があるが、その雛はどうした?」
「ああ、あれ? 森に帰ったっていうか、朝見たら居なくなってたけど? それ以外に言いようが無いからさ、多分でしか言えないけどね。あれは昨日、第三ベースの北で偶然会ったんだよ。蛇の魔物に追いかけ回されていてね、それを助けただけ」
「では、昨夜以降は知らんという事だな? 他に様々な魔物を見たか?」
「様々な魔物ってどういう事? ベースから離れれば様々な魔物が居るじゃん。見たこと無いの?」
「そうではない! この惑星には居ないような魔物を見なかったかと言っている!」
「なら、そう言いなよ。とはいえ白い鳥の雛、仲間はルフの雛だって言ってたけど、それ以外は見た事ないね。元々北に行ったのも、白い蛇が目撃されたらしいから行っただけだしね」
「そうか、お前の仲間たちからも事情を聞いているが、怪しい証言だと勾留する事になるからな。真実をきちんと答えろよ?」
「真実も何も、私達は何の犯罪も犯してないんだけど? 犯罪を犯したのは狂った連中じゃん、あいつらをどうにかしなよ」
「どうにかも何も奴等はまともな事すら喋らん。何かを狂ったように喚いておるだけだ。あんな者どもからは証言どころか、会話すらまともに出来ん!」
「知らないよ、そんなの。私達は何もしてないし、朝食を食べていたらいきなり外から撃たれただけだよ。だいたい目撃してた奴も大勢いたと思うんだけど?」
「まあ、それはな」
そんな下らない問答の後、部屋から外に出られた。他のメンバーも解放されたようなので、合流してミク達は建物から出ていく。物も奪われていないし、特に問題は無いようだ。
それにしても、発狂させた事より研究室の魔物の事が聞きたいようだったが、そこまで思い切って突っ込んではこなかった。やはりゼタナクトが犯罪を犯している情報は口に出せないからだろうか?。
そういった事を【念話】で話しつつ、別の酒場に行ったミク達は夕食を注文する。無言で食事をしつつも【念話】で会話し、宿に行って四人部屋をとる。お金を払って入ると、そこは壁の中に魔道具のある部屋だった。
(どうやら盗聴器が仕掛けられているみたい。このまま【念話】で話そうか? ついでに今日の夜は無しね。ヤっている最中の声を聞かれたくはないでしょ?)
(仕方ありません、代わりにお姉様の母乳をお願いします!!)
(あっ、私も! あれ凄くリラックス出来るし、快眠なのよね。だから宜しくー)
((((………))))
ルーナとゼルをジト目で見つつ、諦めた2人も【神育の輝乳】を飲んでさっさと寝るのだった。ミク達も分体を停止し、最低限の警戒を残しつつ本体空間に戻っていく。そこでムシュフシュやロックの世話をするのだった。
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次の日。ミク達は一言も発する事なく準備を終えたら、酒場に行って朝食を食べた後で飛行船の発着場に行く。次は第五ベースへと行くのだが、ここからは管轄が違う。
ここQWA611はゼタナクトが権利を持つ惑星だが、実はイェルハムラ聖国とガドムラン星国が借りている区域がある。
イェルハムラ聖国が第五から第七ベースであり、第八と第九ベースはガドムラン星国となっている。とはいえ第八と第九ベースは死亡率が極端に低く、殆ど死亡は無い。
その理由は第八と第九は小さな島で、リゾート地のように使われているからだ。狩りをする者が居ない長閑な小さな島であり、森の魔物は駆逐されている為に鳥系の魔物しか襲ってこない。
だからこそ、後は第五から第七を調べるだけとなる。特にイェルハムラは怪しいと言わざるを得ない。少なくともゼタナクトが関わっているのは、あの研究所と罠魔道具だろう。それ以外は普通の死亡原因だと思われる。
特に咎められる事も無く飛行船は飛び立ち、第五ベースへとやってきた。酒場へと行き朝食を頼むと、普通に食事が出てくる。周りのクーロンやデスピエロの連中は殺気と殺意を向けてくるが、第四ベースの事を知っているのか手は出してこない。
もしくは第一ベースで壊滅させられたからだろうか? どちらにしても第五ベースを出れば襲ってくるだろう、とても楽しみなミク。
朝食後、ミク達はいつも通り3方向に分かれて調べて行く。今回は南東と南西をミク達が担当し、北東をヴァル達、北西をレイラ達が担当する。ちなみに第五ベースは狙い目の魔物が特に無い。平均的にそれなりの魔物が出る場所だ。
ミクは出発前にヴァルとレイラを呼びとめ、<紅の万能薬>の入った容器を渡しておいた。少量を口に含んでおくと毒を無効化する事を話し、【念話】で麻痺させて放置しろと付け加えておく。
場合によってはミク達に手を出させ、それを持って公権力を使う可能性があるからだ。勝手に麻痺して魔物に喰われたならば、それはミク達の所為ではない。更にはこの惑星によく出る蛇系の毒なら、こちらにケチもつけられないだろう。
それを伝えて二組を送り出す。一応、抗毒薬のような物を打っている可能性も話したが、あくまでも思い出させる為に言っておいただけである。ヴァルもレイラも記憶しているし、それはミクと共有しているので問題無い。
むしろ聞かせたのは他のメンバーに対してだ。ミクも後ろを振り向き、南東へと向かって歩いて行くのだった。背に多くの殺気と殺意を受けながら。




