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0043・ロキド山脈へ




 宿の奴等や裏組織の連中を食べた翌日。起きて井戸に行くも、僅かに残された従業員が必死に仕事をしていた。半分以上が居ないのだから仕方がないが、ソイツらは怪物に手を出した奴等である。死ぬのは当然だ。


 尚、生き残っている者は唯のスラムの者で、商国の工作員ではない下っ端の連中である。ミクが脳を操って聞き出したから間違いは無い。スラムの者とはいえ王国の国民なので、命まではとらなかった。それと実験でもある。


 脳を操った後、触手を抜いて放置するとどうなるのか? その実験なのだが、答えは操られた事すら覚えていない、となると思われる。ミクも今回の実験結果だけで決め付けるつもりは無い、それ故に百足の姿で試したのだ。


 ミク達はそんな騒動を尻目に宿を出ると、食堂に行き朝食を食べる。宿の食堂ではなく、食堂として経営している食堂だ。ややこしいかもしれないが、先ほどの宿は食堂が併設されていないタイプだったので、どのみち宿の食堂はない。


 大銅貨4枚を支払って食事をした後、町の外に出てロキド山脈へと向かう。そのヴァルの背中の上で、二人は昨日の話をするのだった。



 「で、昨日の連中から有用な情報は得られたか? 宿の連中も減っていたので喰ったのだろうが……」


 「聞いた通りスラムにアジトがあったから、奥まで進んでボスと幹部の話を聞いてた。商国の工作員の組織だったけど、本国からお金が送られなくて困ってたよ。宝石とか装飾品じゃ売り捌く時に出元がバレるって」


 「ああ、成る程な。高値で売れる物を支援に送ったのだろうが、売る手間が掛かるうえに出元がバレると組織もバレるだろうからな。ああいう奴等は危ない橋を渡らないのが普通だ。商国の連中は何を考えているのやら」


 「そんな愚痴もあったけど、その後は麻痺させて脳を操って情報を手に入れてきた。何でも王国にある幾つかの商会を傘下に収めつつ、そこと連携して王都の経済に揺さぶりを掛けるとかなんとか」


 「商国らしいり口ではあるが、果たして上手くいくのか? というのと、時間が掛かり過ぎる気がするがな……? 何と言うか、随分悠長な作戦だとしか思えん。何か理由がありそうだな」


 「私も思ったけど分からないね。ボスや幹部はその事にも不満があったみたい。何をやらされてるか分からないうえに、いつ本国に帰れるかも分からないってさ」


 「ああ、それはそうだろう。結局、現場は知らされずに動いていただけか。当然と言えば当然だが、面倒な……」


 「それで裏組織の連中を喰って帰ってきたんだけど、ローネって本当に役に立つの? 夜はアレばっかりさせるしさ。何だかそこはかとなく駄目な奴に見えるんだけど?」


 「何を言っているんだ!? 妊娠の危険も無く、疲れたら寝るような欲求不満の溜まる相手ではないのだ! そのうえ触手であんな事やこんな事も出来るのだぞ!? 私でなくとも、女なら皆ああなる。間違い無い!!」


 「まあ、カレンもマリロットもフェルメテもだし、ゼルダもそうなったけどさー。……そういえばオルドラスもそうだったから、女だけじゃないと思うよ?」


 「その名前は……<黄昏>のところの執事か。まあ、ミクの女の姿は美人だからな。分からなくもない。私も男だったら、そうなっていたかもしれない」


 「いや、オルドラスは男の姿が好きなんだけど? 最初は全部で相手したけど、二度目からは男の姿だけだったよ」


 「ふむ……それはそれでアリかもしれないな。一度見てみたいところではあるが、流石に難しいか……」


 「「………」」



 ローネの所為で、余計に人間種の趣味嗜好が分からなくなるミクとヴァルであった。そもそも何千年も生きている使徒を基準に混ぜ込む時点で間違いなのだが、そこまで二人には分からないので仕方がないのだろう。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 間に馬鹿な話を挟みつつも、ようやくロキド山脈の麓に辿り着いた三人。麓にある野営地には幾つものテントが立っている。ここはロキド山脈で指定された素材や、魔物の素材を獲る冒険者のキャンプ地である。


 少し離れた所に川もあり、魔法で作ったと思われる堀や壁もあって防御力は高そうだ。ただし、中に居る冒険者に気を付けなければいけない。強姦や殺人はダンジョンと変わらないほどの危険度だ。


 そんな場所を横目で見ながらミク達はロキド山脈のロキド山へと向かう。一番高く、この山を中心にしているのでロキド山脈という。ミク達は野営地の連中に驚かれながらも突入していく。


 パンは乾パンがローネのアイテムバッグに入っており、肉はミク達が獲ればいい。本体に送って熟成させれば美味しい肉になる。ミクとヴァルは生が好きならしく、熟成肉は食べないそうだが。


 山を登っていき、ある程度まで進むと赤い草が見えてきた。ローネの話とゼルダが見せてくれた本の挿絵と一致する。どうやら今ミクの目の前にあるのが昇華草らしい。ミクは早速手で抜いていく。


 すると、ローネがヴァルと共に開拓されたルートを見に行きたいと言ってきた。なのでミクは了承し、ヴァルにローネの命を守るように頼んでおく。傷付く事でもあったら、本体の方に何をされるか分からない。


 そう言うとヴァルも真剣に頷いて、聞いていた秘密のルートの方へ移動して行った。微妙な顔をしたローネを乗せて……。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 昇華草を発見したミクは意気揚々と引っこ抜いていく。地味にこの草は厄介で、根元から引っこ抜かなきゃいけないらしい。その所為で集めるのに手間が掛かる、面倒くさい草なんだそうだ。


 ミクは【落穴】を微妙に使ってすぐに止め、土を柔らかくしてから抜くという荒技を使っているが、普通は魔力の無駄使いなどしない為に大変なのである。


 ミクは採り尽くさないように採りながら集め、土を取ってアイテムバッグに仕舞っていると、前方から騒がしい音がしてきた。誰かが魔物に追いかけられているようだが、こっちに近付いてくる。


 このままでは擦り付けられる可能性があるので、一応進路上から退避する為に移動を始めるミク。何となくだがある予感がしたので、百足になってから草むらに入って様子を窺う。


 すると、ミクが昇華草を採っていた所に走りこんできて右往左往する冒険者。やはり擦り付け行為をするつもりだったらしい。前回やられた事がある為、ミクも勘付いたのだろう。


 魔物を擦り付けようとしていた男達の一人は、後ろから来た熊に撥ね飛ばされた。かなりの速さで突撃してきた熊は、クラッシュベアと呼ばれるハイクラスの熊だ。


 コイツは魔力を纏って攻撃してくる熊で、その破壊力は鉄の鎧を引き裂くほど。実は<大森林>にも生息しているらしく、ミクは会わなかったがカレンからは聞いていた。



 「おい! ここに居た女はどこ行った! 俺達が擦り付けた後、適度に怪我したところで襲う予定だったろうがよ!!」


 「知らねえよ、そんな事!! それよりも適当な魔物っつったろうがよ!! 何でクラッシュベアに追いかけられてんだ!!」


 「ウルッセェ!! 文句なら熊に言えや! こっちは逃げるので必死なんだよ!」



 男達は怒鳴りあいながら麓に向かう道を逃げ、クラッシュベアも倒れ伏した者を放っていった。倒れた男は痛みに呻いているが、まだ死んではいないらしい。


 ミクはその男に近付き、脳に触手を突き刺して話を聞く。結果は聞く価値も無いものであり、擦り付けた魔物で怪我を負わせた後、ミクを犯す気だったらしい。唯のゴミなのでさっさと本体に送り、終わったら人間形態に戻った。


 それにしても、採取しているだけなのにゴミを警戒しなければいけないとは……、そう考え、自然と口角が上がるミクだった。


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