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0430・白い鳥の雛




 「次は私達だけど、こちらも何も無かったわね。高く売れる蛇は見つかったけど、それぐらいかしら。罠魔道具も見つかってないし、ヴァルの言うとおりにアレは第一ベース近くだけだと思う。もちろん油断はしないけど」


 「そうですね。怪しい物もありませんでしたし、特にこれといった物も……。ここは何も無いと考えて良いのでは? 先ほども言ってましたが、必ず全てのベース近くに何かある訳ではないでしょうし」


 「そうだね。私の方も何も無かったよ。普通に魔物が出てきただけかな……赤い蛇の魔物が出てきたけど、それぐらいかなぁ。第三ベースの近くで出てくる奴と同じだと思うけど、面倒なのでさっさと食べた」


 『まあ、その赤い蛇に何かあるとは思えんし、第三ベース近くならブラッドスネークという奴だな。血を吸う蛇であり、麻痺させて血を吸い殺すという蛇。麻痺毒が強くて危険度が高いそうだが、俺達にとっては大した魔物じゃない』


 「そもそも毒が効きませんし、そのヴァル殿から治してもらえますから。他の傭兵に比べれば相当に恵まれています」


 「それは、ねえ……だってアンノウンだもの。宇宙最強の存在と言っても過言じゃないのに、そのうえ神に鍛えられたアンノウンよ? そんな存在聞いた事もないわ。光半神族リョース・アールヴの私でもよ?」



 そこまで言われる程ではない気はしているが、会話をしつつも段々と妖しい目になってきたので、ミクは溜息を吐きつつ相手をしていくのだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 次の日。周囲に怪しい物は無いと結論付けたミク達は、第三ベースへと移動した。飛行船は問題なく着陸し、ミク達は早速第三ベースの周囲を探る。今までと同じ様に三組に分かれ、北、南、東と探索する。


 ここのお勧めは南東であり、そちらにブラッドスネークが出やすい。ここに来る者の多くはブラッドスネークなどを目当てにしており、その肉は精力回復によく効く食材だ。赤いトカゲも黒い蛇も同じ理由で狩られている。


 ここ第三ベースはそれらの獲れる人気の場所であり、それ故に死亡者も特に多い。一攫千金の場所とも言えるが、毒の魔物がそれだけ多いとも言える。その毒も、通常の毒から麻痺毒や病毒など様々な種類の毒があり、一つの種類の解毒薬ではとても間に合わない。


 その為に死亡者の殆どが毒によって亡くなるのだが、残りの連中はベース内での喧嘩や強盗などらしい。一攫千金な為、襲って無理矢理に奪おうとする連中も居るのだろう。分かりやすい連中でもある。これ見よがしに持って帰ろうかとも思うミクであった。


 ミクは敢えて北側を選んでいるのだが、これには理由があり、北で妙な物を見たという書き込みがあったからだ。それは白い蛇だったらしいのだが、アルビノなだけなのか、それとも新種の魔物なのかは分からないらしい。


 見たという目撃談があるだけで、実際に捕まえた訳でもない以上は仕方のない事だろう。それ以外には然したる情報も無かったので、白い蛇を見たという北に来た訳だ。ルーナとゼルも気配を確認しているが、どうもそれらしきものは無い。


 まあ、珍しい蛇というだけで、傭兵の死亡に関わりがあるかは疑問ではある。そんな事を考えながら魔力を発しつつ歩いていると、高速で接近してくる魔物を感知。ミクは二人に言って構える。


 周りは鬱蒼としていて見通せず、何が来るか分からないのでミクが前で受け止めるつもりであった。すると高速で突っ込んできたものは、ミクの足下で止まると「ピーピー」鳴いてくる。みると白い鳥の雛だった。


 何でこんな奴が? と思うも、その後ろから結構な数の気配が近付いてくる。ミクは仕方なく鳥の雛をジャケットの胸ポケットに入れ、近付いてくる気配に対峙する。地面を動いてきているので、ほぼ間違いなく蛇の魔物だ。


 ミクは素早く右腕と左腕を肉塊にし、地面から襲ってくる蛇の頭だけを喰らっていく。少なくとも肉が残っていれば高値で売れるので、頭や毒腺は要らない。ミクの右腕と左腕を見て「ピーピー」騒いでいるが、そんな事には頓着しないミク。


 さっさと襲ってきた蛇の頭を喰らい血を抜いたら足下に捨てる。それを拾ってアイテムバッグに収納するルーナとゼル。大凡おおよそ40匹ほど喰らったところで終了。鳥の雛を見ると、何だか怯えきっていた。


 蛇以上の怪物に助けを求めたら、こうなるのも当然だと言えよう。どうしたものかとミクが思っていると、ゼルが白い鳥の雛の正体を教えてくれた。



 「色が白いのは普通だけど、ここに居るのは奇妙よ? この鳥の雛、多分だけどルフの雛だと思うわ。宇宙でも極めて珍しい闘気を操る鳥。もちろん魔力も操るけど、非常に巨大な姿をしているとされている鳥ね」


 「ルフと言えば、確か体の大きさを自在に変えられるのではありませんでしたか? 小山の大きさだったり、小さな小鳥だったりするらしいですけど……それ以上はちょっと知らないです」


 「ふーん、とはいえ雛だから小さいままなのかな? まあ、怖がってるヤツを連れて行く気はないから下ろすよ」



 ミクはポケットから出したルフの雛を地面に下ろすと何処かへ行くように言ったが、何故か雛は「ピーピー」鳴いてミクの足にくっついている。どうやら怖がってはいたものの、ミクが自分を襲わない事は理解したらしい。



 「どうやらルフの子供に懐かれたみたいだけど、親鳥はどうしたのかしら? それにルフってFZTR8799にしか生息していない筈なんだけど……誰かがこの惑星に持ち込んだ? それとも、ここはそういう実験をしてる?」


 「希少な生き物を繁殖させる。もしくは強い力を別の種族に与える? 例えばルフの子供を食べさせる事で、魔物を進化させようとしているとか。ゼタナクトはそういう魔物を使って金儲けを考えている……というのは、どうでしょう?」


 「そう考えると、何故ルフの子供を適当に放ったのかしら? そこが理解出来ないわ。もしくは、この子は囚われていた所から脱走した? ……だとすると私達を襲ってきそうね」


 「確かに。でもその場合はお姉様とお兄様に始末されるだけでは?」


 「………そういえばそうね。なら警戒する必要もないわ。それにしても巨大なルフとはいえ、雛は可愛いわね」


 「ピー……」


 「お腹が空いているんでしょうか? でもこんな小さいと、まだお肉とか食べられませんし……どうしましょう?」



 そうルーナが言うと、ミクはコップを取り出して、そこに母乳を入れていく。【神育の輝乳】であれば栄養価も問題無いだろう。そう思ったのだが、それをルフに与える意味を分かっているのだろうか? 本来止める筈の神々は、ミクの行動を知って面白がっているだけである。


 ルフが神鳥と化すかもしれないのだが、ミクは全く理解していないし、神々は教える気が無い。またも面白がって放置するようだ。


 コップの中に入れた母乳を恐る恐る飲むルフの雛。一口飲んだ瞬間「ピー!」と叫び、コップに顔を突っ込む。その光景を見つつ、ミク達は探索を開始。今はコップを左手で持ち、その中に顔を突っ込んでいるルフの雛も左手に乗せている。



 「その子の名前どうします? 決めておかないといけません。どうせお姉様から離れそうもありませんし」


 「まあ、あの母乳を飲めばそうもなるわよ。私は<光の神>から作られたから親は居ないけど、まるで母親のように感じたわ。その子も今はそう感じているんじゃない?」


 「面倒だから、この子の名前はロックでいいよ。ルフってロック鳥の事だし、ちょこちょこ別の宇宙の神話や伝説が混ざるのは何なんだろうね?」


 「うん。ロックでいいんじゃない? 別に何かを思いつく訳でもないし、伝説か神話か知らないけど、そこからなら悪い名前じゃないでしょう」


 「………」



 そのロックと名付けられた雛は、母乳のリラックス効果で既に寝ている。そんな雛をミクは胸ポケットに入れたのだが、残りの母乳は何故かルーナが飲み干す。


 茨木吾郎が出てきたらしく、呆れるミクとゼルであった。


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