0428・第二ベースの愚か者達
第二ベースには何事も無く、無事に到着する事ができた。飛行船にはミク達の他に五人乗っただけなので、そこまで重い事も無かったようだ。第二ベースも第一ベースと同じで、特に変わった感じはしない。
宿や店の配置が違うので第一ベースとの違いは感じるが、それだけと言えばそれだけだ。ミク達は早速外に出てお薦めの東へと行く。第二ベースでは、こちらの方角に肉の美味い魔物が出るらしい。それと西には毒蛇が出る。
ただ、この毒蛇は結構な高値で売れる蛇で、キツい酒に浸けると毒性が消えるそうだ。精力増強の酒になるらしく、それ故に高値で売れる。なのでMASCでも、実力があるなら西も狙い目だと書いてあった。
とりあえずで東へと行きつつ、ミクは魔力を薄く流して調べていく。反応は今のところ無いので、軽快に歩いていきつつ魔物を倒していく。血抜きなどは自分達でやらせているが、意外にも器用に魔法を扱うルーナ。性格とは違う部分であろう。
大雑把に魔法を使うのはヘルであり、セイランは集中しすぎなようだ。それぞれに個性があるが、ゼルは問題なく使い熟せている。魔力や闘気の流れもスムーズで澱みが無い。流石だが、アピールまではしなくていいだろう。
「長く生きると色々あるのよ。暇になって上手く使おうとか、ここは拘ってやってみようとかね。で、気付いたら上達してるの。上手くなった理由なんて、暇だからという以外に無いのよねぇ……」
「悲しい話のような気はしますが、私達も1000年は生きるんですし、結局はそういう暇潰しをするようになるのでしょうか?」
「どうなのかしらね? 私の場合はそうだったというだけで、人によるんじゃないかしら。中には私のように快楽に耽る事で暇を潰す者もいるかもしれないわよ? もしかしら隠遁している寿命の無い者達もいるかもしれないし」
適当な会話をしつつも警戒は怠らない二人。もちろんその警戒レベルは違うのだが、気を抜かないのは良い事である。魔物もそこまで強くなく、更には猪系やトカゲ系なので戦いやすい。トカゲと言っても全長は2メートルほどある大トカゲだ。
普通に食べられているらしく、狙い目の魔物の一つとされているらしい。そんな魔物を狩りつつ東を調べるも何も無かった。ここは純粋に狩りだけなのか……?。
第二ベースに戻って魔物を売ったら食事にし、午後からは西へ行く。一攫千金を目指して毒蛇を狩りに行き、死亡する者が後を立たないそうである。ここの蛇が厄介なのは、上から強襲してくる事が多いかららしい。
現に今も枝から垂れ下がり、ミク達に噛み付こうとして素手で捕まえられた。蛇としては小さい蛇で1メートルぐらいしかない。しかしながら持っている毒がかなり強力で専用の薬が無いと治せないそうだ。
書き込みには高くとも毒の治療薬は必ず持っていけと書かれている。そんな蛇もミク達に掛かれば生きたままゲットできるくらいだ。蛇が襲ってくる速度より、ミク達が蛇を掴む速度の方が圧倒的に速い。
そんな蛇の頭の近くを切り、素早く血だけを抜いていく。解体所に持って行った際に毒腺が要ると言われても困るので、頭を含めてとっておく事に決めた。ゼルがその方が良いと言ったからだが、経験豊富なメンバーは助かる事も多い。
夕方になるまで擬態魔道具を探したものの、この日は見つからなかった。第二ベースへと戻り魔物を売ったら、酒場に行って適当に頼む。注文した酒と果物のジュースが来たら、各々は飲みながら話していく。
「東の猪や鹿も、西の毒蛇も微妙ですね。猪や鹿はなかなか狩るのが大変で、西の毒蛇は数が少ないです。特に西は高値で売れない蛇も居るのが腹立たしいですね、同じ毒蛇なのに」
「仕方ないわよ。毒の種類が違うんだし、お酒じゃ消えないらしいからね。そうなると唯の毒蛇だもの。精力増強効果がある訳でもない毒蛇なんて邪魔なだけだし、そのうえ毒の排除に失敗したら食べられないんでしょ? 唯の害獣じゃないの」
「とはいえ、そいつらも襲ってくるので排除するしかありませんけどね。それでも見た目で違いが分かるので助かります。でないと蛇は全部持ち帰る事になるところでしたよ。流石に面倒臭いですからね」
「今日行った方角以外を明日調べるんですか? ミクさん達が居れば調べられるでしょうけど、ルーナとゼル殿はどうするんです? 流石にそこまでの魔力はありませんよ?」
「二人はお留守番でもいいけど? 情報収集してくれればね。それか私と行く?」
「ええ、もちろん! 三方向とちょっと抜けが出ちゃうけど、それは仕方ないわよね? 明日はミクと一緒に行くわ」
「そうです、お姉様と一緒に魔物狩りです。私が頑張って倒しますよ、ついでにMASCで調べた果物もゲットしましょう。何だか美味しそうだったので、新鮮なのを食べてみたいですから!」
「ああ、主や私達が飲んでいるコレの原料ね。確かに甘酸っぱくて美味しいから、私も見つけたら採ってくる事にするわ」
そんな話をしつつもミク達は警戒を続けている。三人娘は酔ってて良い気分なのか碌に警戒していない。ゼルは目線の質で判断したらしいが、あからさまな性欲を周りが向けてきているのだ。
男性からも女性からも性欲を向けられているので、そういう連中が集まるのが第二ベースなのか? そう言いたくなる程だ。一部悪意が飛んできているが、これはシャオロンの連中とデスピエロの連中だ。
胸元のドッグタグで判別可能なので、非常に分かりやすい連中である。ここでは寝込みを襲ってくるかもしれない。もし襲ってきたら、迷う事なく殲滅だ。肉塊は敵に容赦などしない。
夕食を終えて宿へと行き、四人部屋をとる。部屋に入ったら酔っ払いがすぐに服を脱ぎ始めたので、呆れつつも面倒になったミクは触手で撃沈させた。四人に対し一斉に使い、徹底的に責め抜いてやる。
今は仲良く撃沈しているも、表情は大満足な様子なのでコレでいいだろう。ミクからすれば酔っ払いよりも、外のこちらを窺っている連中の方が重要なのだ。入ってきたら肉が喰える事が確定するのだから。
ベッドに寝転がって分体を停止しつつも、いつもよりも手厚く監視体制を敷く。その結果なのか元から愚かなのか、外の連中は踏み込んできて、店の従業員から鍵を受け取っていた。どうりで性欲を向けてくる筈だ。
この第二ベースの宿の従業員は買収できるのだろう、それもおそらくこの宿だけではない。この宿に決めたのは酒場で食事をした後なのだ。性欲は酒場で大量にぶつけられていたのだから。
迷う事なくミク達の部屋の前まで来て鍵を差し込み、慎重に回していく犯罪者ども。ちなみに宿泊客に渡されるのはカードキーであり、ドアノブの近くに翳せば扉は開く。差し込む形の鍵はカードキーを失くしたりした時などに使う、宿だけが持つ鍵である。
いわゆるマスターキーなのだが、複雑な鍵であり実は魔道具である。なので二重のロックになっており、物理的な部分だけでは開かない。そんな鍵を回して魔道具を反応させ、開けて侵入する犯罪者。
入ってベッドに近付くと、すぐに触手が飛んできて麻痺させられる。倒れ伏したバカどもを三人は尋問していったが、結果としては性欲で動いたバカどもというだけであった。表の理由は。
裏の理由としては、散々ミク達で遊んだ後にシャオロンかデスピエロに売るつもりだったらしい。既に話は通しているらしく、奴等も連座で潰す事を決めるミク。まずは殺して本体空間に送り、次は宿の従業員だ。
百足の姿になり入り口の扉の下に小さな穴を空ける。そこから外に出て天井を這い、受付にいる従業員の頭の上に落下する。着地と同時に触手を突き刺し、脳に直接<幸福薬>をブチ込んだ。後は善人に洗脳するだけだ。
ついでに宿泊している者の確認をし、シャオロンとデスピエロとクリムゾンヴァルチャーを確認していく。そう、侵入してきたのはクリムゾンヴァルチャーの奴等だったのだ。
あれだけミク達に殺されても、まだ理解しないらしい。バカは何処にでも居るが、そのバカの所為で何度も敵対する羽目になっている。組織にとっては、末端の所為で敵対するという最悪の状況だろう。
また潰されるのだから。




