0427・第二ベースへ
後で仲間達に聞かねばならないが、少なくとも幾つかの擬態魔道具を見つけたミク。近くを通ると突然撃ってくるので普通の人間種では防げないであろう事と、近くを通る者の魔力で撃ってきているのが分かった。
何を言っているのかと思うかもしれないが、地面に魔力を吸い取る魔道具が設置してあり、それが擬態魔道具と繋がっているのだ。つまり擬態魔道具に殺された者は、自分の魔力で撃ち殺された事になる。意外というか、思っているよりも厄介な道具だという事が分かったミク。
それと同時に炙り出す方法も思いつく。力任せの方法ではあるのだが、地面に薄く魔力を放出して吸い取らせれば位置は分かるのだ。先ほどからそれをしており、反応のあった所の擬態魔道具は全て回収して本体空間へと送った。
今は本体がバラして調べているが、思っている以上にシンプルな物だった。低コストの割には厄介なトラップであろうし、思っている以上に悪質な物だ。そもそも魔力を吸われるまで反応しない為、魔力が流れず調べても見つけられない。
魔力が流れていないという事は【魔力察知】に反応しないという事である。電気ならば【気配察知】で引っ掛かるから特に問題無い。気配と電気に何の関わりがあるのか知らないが、電気系は【気配察知】で引っ掛かる。不思議だが、理屈を考えても分からない物はそんなものである。
人間の体の信号も微弱な電気だからだろうか? 思考の泥沼に陥っても仕方ないので考えるのを止め、淡々と擬態魔道具を探し回収していくミク。置かれている場所には一貫性が無くバラバラである。どうやら意図的に適当に置く事で、規則性を持たせずに罠に嵌まりやすくしているらしい。
当たり前だが誰が設置したのかなんて書いていないので、設置者は不明なままである。擬態に使われているのは塗料と樹脂と粘液だ。例の透明素材の元が使われているのが分かった。それと市販の安い魔法銃を流用して作ってある。
上手く嵌まれば低コストで暗殺が可能かもしれない。そういう実験をしているのだろうか? その被験者がここに居る傭兵ならば、背後に居るのはゼタナクト商国? ……未だ手がかりも手に入っていない。それを思い出しつつ、ミクは探索するのだった。
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現在は夕方の第一ベース。昼食を適当に食べながら調べたものの、発見できた擬態魔道具の数は18。多いか少ないかは分からないが、それ以上は発見できなかったので多分18個で全部だったのだろう。
皆も帰って来ていたので酒場へ行き、適当な食事をして宿へ。部屋をとって入ったら、早速話し合いを始める。
『まず俺達の方だが、傭兵が襲ってきた。一応確認したらクーロンの下部組織の連中だった。シャオロンとかいう聞いた事の無い組織の連中だったが、単に俺達にかけられた賞金目当てだったな。それ以上の理由は無かった』
「私達の方もそうだったわね。シャオロンとかいう連中が襲ってきたけど、返り討ちにしてさっさと尋問したわ。シャオロンというのはクーロンに入れなかった連中の掃き溜めだそうよ。だから大した事の無い実力しか持ってないみたい」
「私達の方も同じでしたよ。大して強くもないので殺してたら、ゼルさんが口を割らせる連中を残して下さっていてくれて助かりました。その後は【音神術】の【白音】で聞きだしましたけど、似た様なものでした」
「私の方はデスピエロだったね。連中は相当私の事を怨んでるみたいだけど、流石に弱過ぎてあれじゃあねえ……。それとジャングルの中に擬態魔道具を見つけたよ。木のフリしてる物で、中に魔法銃のような物を内蔵してる物だった」
ミクは数ある中の一つを取り出し皆に見せる。地面にある魔力を吸い上げる魔道具で供給し、突然近くから撃ってくる罠魔道具。思っているよりも厄介な事を理解したのか、全員の表情が渋い。誰かが被害を受ける前に発見出来てよかった。
「本当にそう思いますね。知らずにそんな物が設置してある所を通ったら、今ごろ既に死体だったかもしれません。ミクさんの仰る通り、可能性としてはゼタナクトでしょう。罠魔道具の品評というかデータ取得と性能向上の為の試験といったところですかね?」
「しかし……思っている以上に悪質ですし、ミク殿みたいに強引に魔力を使わねば発見出来ませんよ? これは思っている以上に厄介です。金属資源を調べる【土中探知】を使うしかありませんね」
「どのみち核心部分は魔銀だから、【土中探知】で見つかるでしょうけど……普通の人間種には厳しい魔力量ね。というか厳しいを通り越してあまりにも足りないわ。とてもじゃないけど、歩き回れるほどの範囲を調べるのは無理よ」
「まあ、私達が普通の傭兵と同じ事をしなきゃいけない理由もないから、そこは放っておいていいと思うわよ? それよりも怪しいものがここへ来て一気に増えたから、逆に絞れなくなってるわねえ」
「傭兵が襲っているパターン、養殖した魔物に襲われているパターン、ゼタナクトの罠のパターン、イェルハムラの実験パターン。色々なのが考えられるけど、これといって決め手は無いね。これ以上は難しいから、明日は移動しようか?」
「第二ベースへ行くという事ですね。第一ベースの近くは調べましたし、お姉様が調べて決定的な物が出てこないのでしたら無理でしょう。この近くには罠ぐらいしかありませんでしたね」
「それも十分に大きな事ですけどね。近くを通った者を殺すトラップですし、明らかに人間種を狙った物です。魔法銃を撃ってくる高さが、だいたい胸の辺りですからね。完全に狙っているでしょう」
『とにかく明日は移動するのだから、今日は早めに寝るようにな。飛行船で移動するそうだが、乗り遅れると待つ事になるかもしれん。朝早くから出ているのは見たから間に合うように無理矢理にでも起こす、だから覚悟しておくように』
そうヴァルが言うと、三人娘とゼルが急いで脱ぎ始めた。1500歳を超えてコレなのだから、ミクからしたら四人娘でしかない。そのうえ新しく来たのが一番の甘えん坊なのだから、本当に四人娘みたいなものである。
ゼルの場合、擬似的な男性相手はルーナで女性相手はヘル。そして母親に甘えるようにミクに甘え、大満足して眠る。そういう行動を繰り返しているのだが、ミクからしたらゼルが手伝ってくれて楽でいいとすら思っていた。
どのみち甘やかせば子供のように眠るのだ。ゼル相手の方が楽なぐらいである。何故かちゃっかりゼルの後でレイラが甘えてくるのだが、レイラも似たような甘え方しかしないのでミクは特に苦労していない。
今までの性欲もおかしかったが、今も十分おかしいぞ? ヴァルはセイランを満足させた後そう思いながら見ていたが、言っても仕方ないので分体を停止して戻る。それを機にミクとレイラも戻るのだった。
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翌日。起動した後で皆を起こし、準備が整ったら酒場へ行く。朝食を食べたら飛行場へと行き、看板で時刻を確認すると10分ほどしかないと判明。慌てて第二ベースまでの料金を支払い、飛行船に乗る。
小型の飛行機みたいな見た目をしているが、効率などを追求すると同じような見た目になるのだろう。座席などは無く、人数が多いと詰めて乗る事になるらしい。過積載になった場合は墜落の危険が増加すると思うが、儲けられればいいという発想なのだろう。
商国という国らしいとは思うが、墜落した場合を考えると面倒臭く感じるミク。どんな状況でも生き残れるが、言い訳が難しい場合を考えると憂鬱なのだった。




