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0042・セベオの町到着と裏組織




 クオノ町に来た三人は町に入って宿をとり、現在は少し早い夕食中だ。宿の部屋は大銅貨5枚、食事は大銅貨4枚。やはり大銅貨という貨幣は一番多く使われる貨幣だけはあり、ミクは煩わしさを感じていた。



 「面倒ならダンジョンに潜ってアイテムバッグを探してくればいい。それなりには出回る物だし、ミクなら襲ってきた者を殺して奪えば済むだろう。迷賊ならば持っている事も多いぞ?」


 「迷賊……ねぇ。名前の響き的にダンジョン内の盗賊なんだろうけど、そいつらは何で高価なアイテムバッグなんか持ってるの? 他の迷賊に奪われる可能性が高いと思うんだけど」


 「迷賊同士にも暗黙の了解というものが有るらしく、迷賊同士は襲わない、同じターゲットは早い者勝ちというのが有るそうだ。昔、襲ってきたので倒して拷問した迷賊が、確かそんな事を言っていた」


 「へぇ~……でもターゲットによっては争いになりそうだけどね。お金持ってそうな奴とか、魔剣持ってる奴とか。それに、他国の奴等が迷賊をやってそうな気がする……特に商国」


 「それは言われているな。何処の国かは別にして、ダンジョン内の迷賊は他国の破壊工作員だとか。ただし、本当の事かどうかは分からないし、ハッキリしていない。中には捕まりそうになると自殺する奴等も居るからなんだが……」


 「なら私が捕まえて吐かせれば済むね。どうせ盗賊なんだし、慈悲なんて要らないから助かるよ。その後は食べればいいし」


 「まあ、ミクならそうだな。普通は死体が残らないダンジョンだからこそ警戒するのだが、ミクの場合は何処でも喰らってしまえば済む。ある意味では完全犯罪と言えるか。死体も何かもを喰らえば無かった事に出来るからな。立証出来ん」


 「死体が無いのに殺人事件も無いし、そもそも私が侵入した証拠が無い。虫が移動した跡はあるだろうけど、それじゃあ虫か私か分からないしね。情報だけ喋らせるなら、尚の事分からないと思うよ?」



 そんな話を食事中にしないでもらいたいものだ。もちろん二人とも周りに聞こえないようにしているが、それにしたところで万全ではない。聞かれていたらどうする気なんだろうか? と、ヴァルは考えていた。


 宿の部屋に入った二人とヴァルは雑談をするが、ヴァルだけは【念話】なので二人以外には聞こえていない。ローネはアイテムバッグを持っており、中からワインの瓶を取り出してコップに入れていく。


 それを見たミクが、子爵家から奪ってきたワイン樽とチーズを出す。ローネとヴァルからジト目を受けたが、どこ吹く風として受け流したミク。自分は酔わないのでローネにあげると言って渡してしまった。


 喜んで受け取るローネだったが、ミクどころかヴァルも酔わないと聞いてガッカリしながら飲んでいる。どうも二人を酔わせて夜を激しくさせようと考えていたらしい。今度はミクとヴァルからジト目を受けているローネ。


 結局、ワインもそこそこにローネに付き合わされたミクとヴァルだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 翌日、とてもスッキリして気持ちよく起きるローネと、肉体を起動したミクとヴァル。さっさと井戸に行って顔と口を洗い、食堂に行って大銅貨4枚を支払う。食堂に居る者達にガン見されているが、今日はローネもスルーしている。


 食事後、クオノ町の外に出た三人はセベオ町に向かって出発。周りには馬車などが居るものの道の端を進んでいるので、事故などは起きないし巻き込まれない。出来得る限りさっさと進んで行く。


 途中のトト村で簡易な食事をローネが買い、そのまま進んで行きセベオ町に到着した。既にここからロキド山脈が見えている。<天を貫く山>よりも大きくないとはいえ、それでも高い山が連なっている様は圧巻である。


 セベオ町はロキド山脈に挑む者達が集まる町だ。<魔境>に隣接するバルクスの町ほどではないが、それでも大きな町であり、冒険者ギルドも他の町に比べれば大きい。その町で宿屋をとろうとするも、安宿しか空いていなかった。


 仕方なく安宿の二人部屋をとるも、スラムに近く、明らかに怪しい宿である。それでも気にせず部屋をとり、食堂に食事をしに行く。宿の部屋が大銅貨3枚、食事が大銅貨4枚である。怪しさしかない。


 夕食後、部屋に戻って休む三人。寝たフリをしていると、案の定おかしな連中が入ってきた。当然のように捕縛したミクは、脳を支配して聞き出していく。すると、この町の裏組織の者達だと分かった。


 それだけではなく、そもそもこの宿自体が裏組織の運営している宿でもあるらしい。ローネが呆れていると、ミクは「さっさと喰ってくる」と言い、百足の姿で出て行った。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 宿の者を粗方喰ったミクは、スラムのアジトに侵入した。密集して家が建っていて簡単には奥まで進めなくなっているが、ドンドンと隙間から百足ミクは進んで行く。


 そんな入り組んだアジトの最奥まで来たミクは、現在話し合いをしている連中の会話内容を聞いている。



 「それで、本国からの荷はどうなっている? 特に必要なのは貨幣だ。アイツら宝石なんぞを送って来やがるからな。他にも装飾品なんかもだが、あんな金に換えるのに足がつくような物を使えるかよ。潜入任務を何だと思ってやがる」


 「ここで愚痴ってもしょうがありません。まあ、本国の者もロキド山脈を越えられる者は多くありませし、諦めるしかないでしょう。宝石や装飾品を送ってくるだけマシってもんです」


 「そうですぜ。少なくとも命令だけ送って、後は全部何とかしろって言われるよりはマシでしょうや。あの頃はどれだけ本国のアホどもを恨んだか……。また、適当な商人にでも流せば済みます」


 「ああ。しかし、このままじゃいずれ尻尾を掴まれかねん。オレはロキド山脈を越えてきた奴等とは違う。奴等は力があるからか楽観視しすぎだ。流石に王国も馬鹿じゃねえ。必ず何かしてくるぞ」


 「ええ。そもそも王国は厄介な冒険者が多くて困りものなんですよ。<暴風>や<聖人>ならまだしも、<閃光>に<魔女>に<首狩>……そして最悪の<黄昏>。問答無用で敵を喰らう怪物ですからね」


 「つうか吸血鬼がシャレになってねえってのに、そのうえ高位種だぜ。現存する吸血鬼としちゃ最高峰だろう? 冗談でも何でも無く殺されるぞ。商国の最高位は<人形>と<怪力>だからなぁ。番外に<淫母>が居るが……」



 それ以上聞く事は無くなったので、ここに居る奴等に知られないように毒霧を生成して散布する。これも怪物の素の能力の一つであり、解析出来た物は生み出せるのだ。


 勿論全てではないものの、喰ったものの中に該当する物があれば生み出せる。今回はフォレストスネークの毒を濃縮した物を散布している。ちなみに麻痺毒なので動けなくなるだけの筈なのだが……。


 どうも濃縮し過ぎたらしく、かろうじて呼吸出来る程度まで体が麻痺している。まあ、死んでいないなら良いのだろう。ミクは百足のまま偉そうな奴の前の執務机に登る。ボスのような奴は必死にミクを見ているようだ。


 しかし麻痺して抵抗出来ないうえ、脳に触手を刺されて意識を失った。十分に話を聞いた後、脳を喰らってから肉を本体に送る。それを繰り返し、最奥の部屋に居た幹部とおぼしき連中からの情報収集は完了した。


 後は適当に探し回りながら殺して喰らい、宝石や装飾品に食べ物や酒を回収していく。根こそぎ奪われて喰われているが、そもそも他国の工作機関の連中なので同情の余地などない。


 全て喰らって脱出した時には、結構な時間が経っていた。宿の部屋まで帰って確認すると、またもや全裸でヴァルに寄り添って寝ているローネ。


 コイツ、もしかして駄目な奴じゃ……そう思うミクであった。


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