0420・垢女と呼ばれる光半神族
宇宙船に乗ったミク達は適当にダラダラしつつ時を過ごす。これから行く森林惑星QWA611は結構遠く、何度か宇宙船を乗り継がなくてはいけない。更に言えば、なるべく早くパラデオン魔王国の宇宙船から降りたかった。
相手は王の子であり侯爵家の当主だ。宇宙船一隻に圧力を掛けるなど容易いだろう。まあ、本気でそんな事をやればパラデオン魔王国の本星まで乗り込んで荒らし回るだけなのだが。
とりあえず次の仕事も決まっているので、面倒な事はしたくないミク。そして出来るだけ穏やかに居てほしい他の五人。その意志は一つであり、そして安堵するべき事に邪魔は無かった。どうやらパラデオン魔王国は未曾有の大混乱に陥らずに済んだようだ。ヤレヤレである。
そうして一度目の寄港星であるRII2068惑星に辿り着いた。ここは中継惑星と言われるタイプの惑星で。中立が決まっており、多くの国の宇宙船が行き交う惑星だ。ここでゼタナクト商国の宇宙船に乗り替えて進むのだが、今はまだ到着しておらず明日の朝になるらしい。
なので今日は宿に泊まる事になったのだが、何故かルーナがミクを引っ張ってドンドンと進んで行く。何となくは分かるものの大人しくついていくと、高給レストランのような場所の前で一人の女性が立っていた。
妙に光沢のある金髪に白い肌、上半分が切れて無い左耳。更には右目が義眼で、左腕が義手、そして右足が義足の美女がこちらを見て手招きしている。どうやらアレが光半神族の女性らしい。ローネと同じく非常にスレンダーな体型だ。
半神族は胸が小さいという決まりでもあるのだろうか? そう思ってしまうが、口には出さずに挨拶をする。
「貴女がルーナが言っていた光半神族? 私はミク、少し前にランク9になった新人」
『俺の名はヴァル。俺も主と同じくランク9の新人だ。まあ、ここに居る六人とも新人なので何とも言えんがな』
「私はレイラ。私もランク9で新人よ。と言っても有名になったみたいだから、そちらは知っているんでしょうけどね?」
「私がルーナシェーラです。それにしても1500年も生きている何て凄いですね! ……で、お姉様方に御会いできた際の条件は忘れないようにお願いしますよ」
「ルーナ……後でオシオキされても知りませんよ? 私の名はヘルです。ランクは7ですが、そこは気にしないで下さい。然して依頼も熟してきていないので」
「私はセイランです。ルーナが何か良からぬ事を考えているようですが、こちらを揉め事や余計な事に巻き込まないようにお願いします。ミク殿の機嫌があまりよろしくありませんので」
「何かあったの? ……まあ、いいけど。私はゼルティツィア・リューディクト・ヴァローム・リョース・アールヴ。1500歳は超えていると思うけど、それ以上は覚えてないわ。巷では<赤女>とか<垢女>と言われているわね。ランクは19よ」
「それで? わざわざルーナを使ってまで私達に絡んでくるっていったい何の用? こっちには欠片も用事は無いんだけど?」
「まあまあ。とにかくまずは食事にしましょう? 別に何かする気も無いし、ルーナちゃんには色んな手練手管を教えてあげる約束をしただけよ。代わりに貴女達と仕事をしたいの。何となく変革期を迎えてるっぽいしね。後、私はゼルって呼んで」
そう言いつつ高級レストランに入って行くゼル。ミクも入って行ったからか、他のメンバーも入っていく。毒を使われようと何をされようと問題無いのだが、半神族である為に普段より警戒しているヴァルとレイラ。
テーブルに着き、様々な注文をしてからゼルは話を始めた。
「簡単に言うと、私としても久方ぶりに戦闘をしたくなったという事。貴女達にあてられた訳なんだけども、私も古くから生きているから近接戦闘をするのよ。でも今の若い子達じゃ、私について来れないのよね。なら、貴女達と共に居るのが一番良いとなったってトコ」
「ふうん。まあ、私としては特に問題無いんだけど、それだけじゃないよね? 私は他人が何を考えているのか分かるスキルを持っている。だからはぐらかしても意味は無いよ」
「………驚いたわね。それが近接戦闘において負け無しの理由? 流石に【心情看破】を持っている相手に交渉しても無駄ね。なら話は早いわ、特に問題無いと言っているくらいだし。私の目的はそこのカレよ」
『……もしかして、俺の事か? 俺は主から離れる気は無いぞ。しかもよく分からん奴についていく気も無いしな。悪いが他を当たってくれ』
「この私が、1500年生きてきて、初めて抱かれたいと思った男が貴方なのよ。悪いけど逃がす気は無いの、絶対に私を抱いて貰うわ。抱いてくれるまでつけ回すから」
「この方はどうかしているのですか? 女としてヴァル殿を求める気持ちは痛いほど分かりますが、だからと言っていきなり来て「抱け」とは頭がおかしいとしか思えません」
「あら? 貴女もカレの虜なの? 私は問題無いわよ、何人目の愛人でも。重要な事は自分が求めるオトコに抱いて貰う事だもの。それにメイリョーズやカラマントは抱けて、私を抱けない理由は無いでしょう? あの子達は私の弟子だし、私はあの子達以上よ?」
「面倒だから言っておくけど、私はゼルを連れて行くから。これ決定ね。ヴァルは……まあ、諦めてよ」
「ふふ、やった……! 私の全てのテクを駆使して、必ずや貴方を満足させてあげるわ。今日の夜が楽しみね♪」
(主、正気か!? いったい何を考えているんだ。別に機械の体だ魔道具だに同情した訳ではあるまい? そんな事はあり得んからな)
(<光の神>が本体の所に来てさ、こいつを本体空間に連れて来いって言ってるのよ)
(あらら、それは仕方ないわねえ。神の命令じゃ従うしかないし、別に抱く訳じゃないんだから諦めなさいヴァル。もしくは媚薬でさっさと気絶させてしまえばいいわよ。気持ち良ければ何でもいいのでしょうしね)
本体空間での会話の為、誰にも盗聴される事はない。表情に出さずにヴァルは諦め、セイランは納得のいかない顔をしていた。ヘルとルーナが慰めているが、ミクが決定した以上は引っ繰り返せない。なので最後には諦めるセイランであった。
食事後、男と女が泊まる宿に行き、防音設備の整った部屋をとって中に入る。レイラが最後に部屋に入って鍵を掛けると、即座にミクは右腕を肉の塊に変えてゼルを飲み込む。あまりの速度だった為、一騎当千と言われたゼルでさえ反応出来なかったようだ。
ミクはその場に居る全員に事情を説明し、神の意向だと納得した各々はベッドで楽しむのだった。
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「こ、ここは……いったい?」
「やれ」
<光の神>が言うので仕方なくミクはゼルを吊り上げ、腕や足に右眼を外したら肉で包む。既に意識を失っているゼルを溶かしつつ、<光の神>の命令通りに肉体を改造していくミク。
またもや自分の肉が使われている事に思うところが無い訳ではないが、文句を言っても意味が無いので淡々と作業を行う。しかし、どうしてここまで胸を大きくするのだろうか? 意味が分からない。
僅かな時間で作業は終わり、既に準備していた<創造の神>が作った義手と義足を付けてやる。それ以外の眼や内臓や髪などは既に治っているので、特に必要無いらしい。義手と義足の作り方をミクに教えた<創造の神>は、何処かへ行ってしまった。
未だに起きないゼルに対し、<光の神>がステータスを鑑定しろというのでやっておく。その結果は、ルーナ達に比べれば普通だった。
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<ゼルティツィア・リューディクト・ヴァローム・リョース・アールヴ>
種族・光半神族
性別・女
年齢・1501
【スキル】・光身・慈悲の愛乳・短剣術・光槍術・格闘術・回避術・歩術・光魔法・浄化魔法・高速回復・性愛術・房中術・愛心術・死霊術
【加護】・光の神の神子・愛の神・乳の神・豊饒の神・槍の神・死の神・混沌の神
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「ふむ、胸も含めて上手くいったな。ミク、コレが起きたら内容を伝えておいてくれ」
そう言って説明内容と言伝を頼まれたが、何故自分がここまでしなくてはならないのかと、溜息を吐きたくなったミクであった。




