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0412・金属腕の兵士と女研究者




 「フフ……フフフハハハハハハ!! やはり聞いていた通りだ! 睡眠ガスなどという詰まらん罠などでは分からんのだ。そうだ、これよ! 一瞬の判断で生死が分かれる戦場! ウハハハハハ! とんでもない相手だな、私の肌が粟立つぞ!!」


 「楽しそうだねえ。せっかくだけど時間も無さそうだから、さっさと済ませようか。レイラは左のMASを、右のはヴァルに任せる。ヘルとセイランはヴァルを支援、あの砲塔引っぺがしてこい」


 「「「「「了解!!」」」」」


 「ふふふふ、命令はともかく良い指揮官だ。下に付く兵士とて馬鹿ではない、不思議と従いたくなる上官というのは居るのだ。カリスマとも違う、不思議な信頼関係というものがな。さて、下らぬ話は止めて闘争を始めようか?」



 ミクは右手に鉈、左手にメイスを持って突っ込む。相手の両腕が金属の義手なので遠慮は要らない。右手の鉈で切りかかるも、相手は左手を開いて掴もうとしてきたので内側に軌道を逸らす。


 今度はメイスで殴りかかるも、相手は再び掴もうとしてきた。なので途中で止めてバックステップを行う。



 「金属の腕というのは、なかなかどうして面倒臭いね。相手の武器を奪おうとしてくるとは思わなかったよ。しかもそれ、魔鉄なうえに魔銀のプレートまで仕込んでるでしょ?」


 「ほう。私が使ってもいないのに理解したか。どうりで強い強いと言われる筈だ。嗅覚というのかな、強い者は何故か真実に辿り着く。相手は一切明かしてもいないというのにな? 流石はクーロンすら歯牙にもかけぬ怪物だ」


 「いや、あいつらは普通に弱いだけだから。近接戦闘が多少出来るみたいだけど、多少だけなんだよね。相手が近接戦闘に怯えるから強いと思われてるだけで、近接戦闘そのものの練度は低いよ」


 「なんとまあ……所詮は我等の紛い物、粗悪品か。私の先程の言葉で分かっただろうが、我等に使われた方法の古い物が与えられているだけだ、クーロンはな。所詮はその程度の兵士にしかならんが、クーロンめは更に質を落としているようだな」


 「そもそも<最強計画>? っていうもの自体、意味が分からないけどね。仮に最強の兵士を作り出したところで、叛逆されたら何の意味も無いと思うけど? 叛逆できないようにすれば唯の人形だしさ」



 そう会話をしつつ、再び接近したミクは鉈を振り下ろす。……ように見せかけて、左手のメイスで突いた。流石にメイスを突きに使うのは予想できなかったのか、胴体に直撃したものの「ギィン!」という音と共に弾かれる。


 すぐにバックステップで離れるも、明らかに金属音だったのでミクはすぐに理解した。



 「この魔法銃全盛の時代に金属の腕を付けているだけじゃなく、服の下にメイルを着込んでいるなんてね。貴方だけ時代がおかしい気がするけど? いったい何時の時代に生きているのやら」


 「時代……な。確かにこんな装備など何千年前か分からん。とはいえ、有用な物は有用なのだ。先人が作り出した物も馬鹿には出来ん。これは魔鉄で出来ているので魔法への防御力も高い。特に【魔力弾マジックバレット】ばかりだからな」


 「まあ、属性魔法でもなければ魔鉄で十分に耐えられるだろうけど……ね!!」



 再び前に出たミクは、左手のメイスで水平に薙ぐフリをして相手の手をスカし、目の前で【火球ファイアボール】を放つ。いきなりだったからか、相手の軍人は慌てて横っ飛びでかわすも、そこにも撃ち込まれる【火球ファイアボール】。


 相手の兵士は金属の腕をクロスして守るも熱にやられるからか、再びすぐに地面を転がって熱を逃がす。まさかミクが属性魔法を使えるとは思っていなかったのだろう。今度は兵士が攻めて来た。ただし、動きはそこまで速くない。


 ミクは相手のパンチを斜めにかわし、手首の射出を受けないようにする。そのミクの動きで理解したのか、相手の兵士は動きを止めた。



 「キサマ、私の腕を知っているな? あの時に起きていたのか。私が見ても寝ているようにしか見えなかったぞ! チッ、他の奴等も見ておけば良かったか!!」


 「壁に真っ赤な花を咲かせてたねえ。で、私達の血を奪ってどうする気? 培養して<最強計画>にでも使うの? だったら一つだけ忠告してあげる。アレを培養したり投与したりしない方がいいよ、碌な事にならないから」


 「私は兵士だ! どういう風に活用するかなど知らんよ!!」



 兵士が殴りかかってくるも、ミクには全く当たらない。金属の腕とメイルが重いのだろう。そこまで動きは速くない為、こちらは速度で翻弄ほんろうする事が出来る。捕まれば危険だが、捕まらねばどうという事はない相手だ。


 ミクは隙をみて【火球ファイアボール】や【土球アースボール】を撃ち込む。何度も繰り返していると明らかに疲弊してきた。やはり胴体などは普通の人間種だからか、限度があったらしい。



 「例え金属の腕を付けてようが、中身は普通の人間種。体力にも限度があり、無限に動ける訳じゃない。<最強>には程遠い能力しか無かったようだね」


 「ハァ、ハァ、ハァ……。初見でそこまで見破り、そしてここまでの魔法を使えるキサマが異常なだけだ。それでも我が国はキサマの細胞で更なる発展をする。やがては<最強の兵士>が誕生するのだ!」


 「無理だと思うけどねえ。例え千年を生きる種族でも、人間種という枠組みからは出られない。そして人間種という枠組みである以上、何処までいってもその程度でしかないよ。少し前に戦った奴もこの程度だったし」



 そう言った直後、ミクは【武仙術】の【縮地】と【剣術】の【雷切り】を使い、兵士の左腕を切り落とす。すぐにバックステップで離れると、慌てて相手は反応したが遅い。


 左腕が落ちて「ドガッ!」という音が鳴り、ようやく自分の腕が肘の上辺りから切り落とされた事を理解したらしい。今は呆然とミクを見ている。



 「あれ? そんなに驚く事だった? シンテン・リュウザとかいう奴がやってた事だよ。【縮地】と【雷切り】を組み合わせただけの極々単純な攻撃」



 そう言って、もう片方の腕も切り落としたミク。ここに来て、ようやく手加減されていた事に気付いた兵士。その時には周りの魔導装甲もクーロンの傭兵も沈黙していた事を知る。



 「まさか……私に対して手加減していたのは、周りの戦いの邪魔をさせぬ為か!?」


 「それも多少はあるけど、一番はあの女研究者にデータを渡さない為だね。見れば分かるけど既に気を失わせているし、レイラが裸に剥いて全部没収したから手加減を止めたんだよ」


 「クッ……まさか、ここまで実力差があるとは思わなかったぞ。金属の腕を両手に付けるのも、メイルを着るのも考えものだな。重くて動き難いし、すぐに体力を失う」


 「だろうねえ。さて、両腕を無くしたからコレも没収していくよ。敗者に文句を言う権利は無いからさ」


 「フフ、そこまで知っていたとはな。好きにするといい、敗者は蹂躙されても文句は言えん。それが戦場の理だ」



 ミクは兵士の胸ポケットなどに入っていた記録用の魔道具を全て回収し、魔導二輪に乗ってその場を去っていく。他のメンバーも魔導二輪を出してその場を離脱していくが、兵士はそれを見送る事しか出来なかった。


 愉快な、そして痛快な気分で見送った兵士は、気絶させられた女研究者の近くに座り名前を呼ぶ。



 「エイリーダ! 起きろエイリーダ!! ここで寝ていると何をされるか分からんぞ、起きろエイリーダ!!!」


 「う……ん……ルーダイト? もしかして私、先に寝ちゃった? ごめんなさい、すぐにお口で大きくするわね」


 「何を勘違いしているエイリーダ! 敵に気絶させられたのも覚えていないのか!? 後、ここは戦場だ! 私の服を脱がせて羽織れ、裸のままだと犯されるぞ!!」


 「えっ!? キャー!! 何で裸なのよ!!」


 「敵に気絶させられたのだ、私も両腕を切られて助ける事が出来ん。ついでに記録用の魔道具は全て奪われたぞ、エイリーダの服ごとな。早く私の服を脱がせて着ろ、それと戻って予備の腕に切り替える」


 「ええ、分かったわ。それにしても、ここまでやられるなんて計算外よ!」


 「いつも言っているだろう、戦場では計算など通用せん。殺し合いをするのは、いつだって人間種なのだ。そこでは予期せぬ事が必ず起きる」


 「説教はお断りよ! どうせならベッドで甘い言葉でも聞かせて頂戴!!」


 「それは毎日の事だろう」


 「………///ゴホン! そうだったわね、いつも通り過ぎて忘れていたわ///。………今日の夜も、お願いね///」



 何だかよく分からないが、良いコンビらしい。


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