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0409・連れ去られたミク達




 魔導四輪に一人ずつ別々に乗せられたミク達は、現在どこかへと運ばれている。その車内にて、どうもこれはクーロンの望みでは無い事が分かった。というより、ミクが寝ていると思い込んでいるからだろうが愚痴を零し過ぎである。



 「クソッ! コイツを殺すチャンスだっていうのに、何で生きたまま連れて行かなきゃなんねーんだよ! コイツの所為で仲間が死んでるんだぞ! イェルハムラの奴等ふざけやがって!!」


 「そんなこと言ったってしょうがねえだろうが! だったらテメェだけが勝手にやって粛清部隊に殺されろ!! オレにまで迷惑かけんじゃねえ!!!」


 「チッ!! ウルセー奴等だな、少しは静かにしろや! 鬱陶しいぞ! こちとら昨日の夜から仕掛けを準備したりして疲れてんだよ。碌に戦ってねえんだからガタガタぬかすな!」


 「なんだとテメェ!! 今すぐブッ殺すぞ!!!」



 クーロンの兵士は薬を使われてるからか、ガラの悪い奴等が多いねー。そんな風に思いながらミクは暢気のんきに会話を聞いていた。とはいえ、バカの愚痴ばかりで碌な収穫は無かったが。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 それなりの時間が経ち車両が止まると、ミク達は再び担がれて連れられていく。何処かの建物の地下のようだが、大きく分厚い扉を開けた先に連れて行かれて一旦止まる。


 何が始まるのかと期待していたら、装備が外され服を脱がされた。「また凌辱か、下らない」と急に冷めたが、凌辱する事もなく担いで連れて行かれる。「あれ?」とミクは肩透かしを喰らったが、その後は二重の鉄格子を二度空けた牢屋に連れ込まれた。


 装備は適当な鉄のナイフと市販の魔法銃に変えてあるし、アイテムバッグは本体空間だ。取られて困るような物は何も無い。服もミミズの魔物で作ったライダースーツに、男物のジャケットを羽織っているだけ。


 ライダースーツが問題かもしれないが、それ以外は特に問題の無い物ばかり。それにミミズの皮は余っているので、また作れば良いだけである。そんな事を考えていると、ヴァルとレイラが話しかけてきた。



 (何と言うか、おそらくクーロンの出張所か何かだと思うんだが、また宙賊の時と似たような事になっているな。このまま売春惑星に連れて行かれたら、流石の俺も笑うだろうが……)


 (まあ、言いたい事は分かるけど、またシェプリムに会うのも面倒臭いなぁ。どうやって星を出たとか聞かれそうだし、厄介な事になりそう。っていうかコイツら、私達の手足を撃ち抜いたけど治療してないんだよねー)


 (こっちでも話していたけど、どうもイェルハムラ聖国からの依頼みたいね? 私達を捕まえるのは。いったい何が目的なのかしら? 想像出来るのはいくつかあるけれど、どれも納得し辛いというか……誰か来たわね?)



 カツカツやドスドスと足音がするので誰かが来たのは分かるのだが、誰が来たのかは分からない。とりあえず、今はまだ睡眠ガスが効いたフリをするのが一番であろう。



 「……ん? 被験者の体が傷付いてますが、どういう事ですか? 手と足に撃たれた跡がありますが……こちらのオーダーは五体満足に連れてくる事だった筈ですよ?」


 「いやぁ、連れて行く時に抵抗されましてねぇ。それで仕方な」



 ドガァン!! という音と共にクーロンの傭兵の頭が壁に叩きつけられ、真っ赤な血の花を咲かせる。


 横に居た大柄の兵士が掌で壁に叩き付けた結果だが、男の腕は金属で出来ており、更に叩きつける瞬間に手首から先が射出されていたのをミクは見た。短い距離だったがアレは相当の威力が出ている筈。



 「メタルアーム31号は上手く可動しているようですね? それは何よりですが、そこに居るマヌケ。さっさと責任者を呼んできなさい。被験者が傷付いている事に関して説明していただきましょう」


 「………」


 「早く行かんとキサマの頭も潰れるぞ」


 「は、はい! すぐに!!」



 慌ててクーロンの傭兵が走って行ったが、どうやら研究者のような女と、歴戦の兵士みたいな男はイェルハムラ聖国の者らしい。今も仰向けで寝ているフリをしているミクは、左半身で見て確認している。


 普通に見れば唯の肌でしかないが、小さな目を幾つか作りだして肌に誤認させている。肉塊だからこそ出来る事だが、相手もまさか起きていて自分達を見ているとは思うまい。


 女の研究者は他の牢も覗き、ヴァルとレイラも確認しているらしい。ヴァルとレイラも研究者の顔を見て確認したが、男の方はミクの牢の前から動く気配は無かった。


 慌てて走りこんできたクーロンの関係者が平身低頭に謝罪しており、鉄格子を空けると中に入ってきたようだ。女の研究者はミクに【上位治癒ハイヒール】を使い治療すると、ミクの左腕に注射器を無造作に突き刺してきた。


 どうやらミクの血液を採取するつもりらしいので、作っていた予備の血液モドキを注射器に吸わせる。これは人間の白血球や赤血球にミクの細胞因子を混ぜた物であり、細胞因子をほんの僅かにでも投与すると暴走する肉塊が生まれるというトラップ血液である。


 ちなみにこんなバカな物を作るキッカケは、当然のように<死の神>であった。あの神は<遊興の神>より遊んでいる気がするが、気のせいだろうか? それに乗っかって協力したミクも十分にアレなのだが……。


 それはともかく、ミクから採血した女研究者はヴァルとレイラからも採血した後で、ミク達を傷つけた者を処分しておくように言って去っていった。クーロンの出張所の所長も見送りに行き、ようやく余計な連中が居なくなる。


 感知系の五種を使って周囲に監視カメラなどの装置が無い事は確認したが、今は余計な事はせずにジッとしているミク。三人娘がどうなったかの方が心配だが、あの三人は逃げられたのだろうか?。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 少し時間を戻して、こちらは三人娘。何とかブラックホークの出張所から逃げ出した三人は、ミク達が連れて行かれるのを見送る事しか出来なかった。何故ならクーロンの傭兵に襲われているからだ。


 三人は魔導二輪に乗らず、戦いながらS19内を走り回っている。クーロンの連中はしつこいものの、MASから砲撃は飛んでこない。流石に町を破壊するとマズい事は分かっているらしく、MASは何処かへと移動して行ったようだ。


 三人は逃げ回りつつ傭兵を殺し、ある程度数を減らすと今度は強襲し始めた。足や腕を切って尋問、喋らなければ拷問を行いつつ、敵傭兵に襲われたら肉の盾にする。クーロンからも罵倒されるがスルーして使う三人。敵に容赦するバカではないのだ、三人は。


 更に敵を倒し尋問していくなかで、ようやく三人はミク達がどこに連れて行かれたのかを知る。それはイェルハムラ聖国のNW16だった。パラデオン魔王国のS19の南が、イェルハムラ聖国のNW16である。


 そこのクーロンの出張所に連れて行かれ、その依頼をしたのがイェルハムラ聖国である事が分かった。聖国は薬で有名な国ではあるが、裏の噂では非人道的な実験を繰り返していると言われている。


 そして、圧倒的に強いミク達三人に目を付けたらしく、おそらく人体実験をする気なのだろうとの事。何より、今回使われたガスはイェルハムラ聖国が作り出した特殊なガスで、凶暴な魔物ですら耐えられない程の物らしい。


 クーロンの兵士は自慢気に話していたが、さっさと首を切り落としながらルーナは考える。



 (そんな程度の物でお姉様が眠る? そもそも寝る必要の無いお姉様やお兄様が? ……絶対にあり得ない。では捕まったのは………ワザとでしょうね)


 「ルーナ! 何をボーッとしているのですか! 場所が分かったのですから行きますよ!!」


 「二人とも、お姉様方が簡単に捕まったと思いますか? 眠る必要の無い筈の御三方が、睡眠ガスで眠らされるなんてあり得ません」


 「そんな事はとっくに分かっています。このまま放っておくなど論外ですし、合流が遅れれば遅れるほど抱いていただける日が遠のきますよ!」


 「それは駄目です! すぐにお救い致さねばいけません!! 二人とも、一気に行きますよ!!!」


 「「ええ!」」



 ……結局、君達はそれか?。


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