0405・W14に帰還
W14への道を走り戻っていくミク達。バリケードなどはそのままだが、いちいちミク達が撤去してやる義理も無い。さっさと通過していき、W14に戻ったミク達は真っ直ぐブラックホークの出張所に行く。気付いたら夕方近くの時間になっていた。
出張所の前に魔導二輪を止め、アイテムバッグに仕舞ったら中へと入る。入り口の扉を開くと、そこは宴会場だった。傭兵が酒を飲み食事をし、床には撃沈した傭兵が鼾を掻いて眠っている。
そんな中を移動し、二階へと上がって行くミク達。既に受付嬢すら泥酔して寝ているので聞く事すら出来なかった。ついでに三人娘の気配は二階からしている。ミク達は二階に上がり所長室の扉をノックすると、返事を待たずに中に入り声をかけた。
「ただいま。三人の気配がここにあるから来たけど……ルーナが誘惑?」
「してません!! 私が誘惑なんてする訳ないですから。単に<黒い風>の皆さんが酔っ払って絡んでくるだけですよ。それよりお姉様はどうだったのですか? W15はどうなりました?」
「レイラが持っている奴を攫ってきて終わり……かな? 先にそっちから話してくれる? 私の方はその後でいいよ。そいつは縄で縛ってあるし、今さら逃げられないからね」
「分かりました。私達の側は5キロ、10キロ、15キロ地点にバリケードが築かれていて、そこを突破しているのを後ろから見ていました」
『ほう、よくお前達が前に出なかったな。三人の事だから、最初から自分達に任せておけと言い、勝手に突撃すると思っていたのだが……』
「「//////」」
「??? ……ああ、ヴァル殿の声にヤられただけですか。それよりも出るのが最後になった私達は前に行くのも面倒なので最後尾に居たのです。その時横に居たのが<黒い風>の皆さんですよ」
「私はジャーラと言って<黒い風>のリーダーをしているの。宜しく」
「私はー、リコマットってゆーの。宜しくー」
「オレはディオルト。宜しくな」
「わたしはバレードンと言う。宜しく」
「私達の紹介はー……要らないみたいだね。それはともかく話の続きをお願い」
「はい。3つのバリケードを越えたまではよかったのですが、その後に大きなバリケード地帯があって、遂に抜けられなくなり指揮官が頭を下げて交代を願ってました。正しくは<黒い風>のリーダーであるジャーラさんが言わせたのですが……」
「そいつはブラックホークの情報をリョースナ工業国に洩らしていた奴でした。現在はこの出張所の地下牢に入っています。両腕両足の腱を切ったので、脱出は不可能でしょう」
「その後は指揮権が<黒い風>に移り、私達が前に出て突撃しました。蹂躙して出来るだけ敵の数を減らそうとしたら止められてしまいましたが、それなりには減らせましたね」
「止めたのは何時までも暴れてるからよ? まさか後の事を考えて頭数を減らす為に始末しているとは思わなかったの。最初聞いた時は唖然としたわ。私達にそんな発想は無かったし」
「流石に後の事を考えて今始末しておるとはいえ、慣れていない者には虐殺しているようにしか見えんのじゃろうな。実際にはその後も戦いは続くのじゃし、混乱したり恐怖しておる間に敵を減らすは当たり前の事よ」
「その後も進み、最後の大バリケード地帯も突破した私達は、SW10に進入して敵傭兵を倒して鎮圧しました。リョースナ工業国の兵士とかは殆ど居なかったみたいで、SW10を取る前に撤退していったそうです」
「無意味に常駐させておく必要は無いし、もしかしたらSW10はこちらを誘き出す為に取ったのかもしれん。三人が居てくれねば相当の被害が出ておったであろうからな」
「そうだったの。殆どは外の戦いで決着はついたみたいね。こっちはもっと大変だったわよ。まあ、三人しかいないから人手という意味で大変だっただけなんだけど」
『こちらも順調にバリケードを潰していったのだが、途中で魔導装甲が二度出てきたな。一度目はMAD二機、二度目はMAAとMASだった。ちなみにルーナが前に言っていた通り、魔導ノコギリと杭打ち機のヤツだったぞ?』
「え!? あのMAAが戦場に出てきたのですか? 有名な惨殺少年の乗る機体なのかは分かりませんので、何とも言えませんけども……」
「あの有名なグロ少年ね。子供の頃からおかしな事をされて育ってきたからか、人を殺す事に何の躊躇いも無いっていう危険なヤツ。クリムゾンヴァルチャーが何処かで拾ったって聞くけど、私は怪しいと思ってる」
「そういう奴を作ったって事だが、碌な事をしねえヤツは何処にでも居るからなぁ……。可哀想だとはいえ、戦場で出てきたら敵だからな。何とかして倒すしかねえ」
「いえ、お姉様とお兄様の前に出てきたんですから、惨殺少年だったとしても死んでいるでしょう。御三方が容赦する筈がありませんし」
『それどころか、主は敵の傭兵を魔導ノコギリに放り投げて切らせていたぞ? 更には突き出される杭打ち機にも敵の傭兵を投げつけていた。杭を打たれたヤツは爆散して肉片になっていたが、MAAの動きは変わらなかったな』
「その後はMASを操縦している奴も含めて【爆音衝撃】を使って気絶させ、コックピットをこじ開けて引き摺り出したわ。で、首を刎ねて終わり。そういえばMAAに乗っていたのは少年だった筈……よね?」
『ああ、間違いなく少年だった。種族的に幼い外見なのかと思っていたので、気にも留めなかったな。所詮は敵だし、死ねば死体だ。どういう人生だったかなど興味も無い』
「その後は更に進んでいって最終バリケード、そこには巨大な【魔力弾】の砲があったよ。何とか三人で【魔力盾】を張って逸らし、次に撃たれる前に一気に進んで乱戦に持ち込んだ」
「流石の巨大砲も味方相手には撃てんからの、良い判断じゃ」
「関係なく魔力が溜まって二発目を撃たれたけどね。その際には生きている敵と死体と【魔力盾】で防いだよ。流石に三発目は撃ってこなかったんで魔力切れかな? 戦闘後に少し調べたけどゴーレムコアは無かったから、二発目を撃った後で持って逃げたんだと思う」
「まあ、そうじゃろうが……ようも味方ごと撃つもんじゃ。生き残りから洩れたら名が落ちるし、そなたらから伝えられたら碌な事にならんであろうに」
『敵の傭兵も慌てていたから、聞かされていなかったのではないか? もしかしたらだが、あの砲はリョースナ工業国の物かもしれん。工業国と言うくらいだしな、可能性はあると思う』
「だろうな。リョースナがそんな砲を持っているとは聞いた事が無いが、そこまでの物を持ち出してもW15を守る必要があったのだろう」
「そこが終わったらW15の中に入って、魔法銃の攻撃を防ぎつつ鎮圧ね。主はクリムゾンヴァルチャーの出張所に行って始末、私達は外の連中を始末していっていたの。主がクリムゾンヴァルチャーの所長から聞き出したのは、リョースナ側のボッテウスという奴と内通していたという事よ」
「ブラックホーク側は、さっき言ってた元の指揮官? ってヤツだと思う。で、リョースナ側はコイツね。でも、裏にパラデオンの人物も絡んでる感じかな?」
「元指揮官の男は、パラデオン魔王国の男爵家の三男よ。割と有名な奴ではあったから調べた事があるの。おそらく男爵家とリョースナが手を握って、その間にアイツが居たのでしょうね」
「傭兵を隠れ蓑にしていた訳ね。後は……ボッテウスを守っていた軍人くらいかしら? シンテン・リュウザとかいう奴だったわね」
「「「「「「「「は?」」」」」」」」




