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0395・パラデオンの貴族?




 W01を通り過ぎてW02へ。道を真っ直ぐ進む事が出来るのは楽なのだろう、移動を楽しんでいるように見える。地底を移動しているので景色は良くないが、それでもツーリングの気分なのだろうか? ミクも楽しそうである。


 そのまま真っ直ぐ進んでいき、W02も通り越してW03へ。町から町への区間は大体40キロ~50キロほどらしい。ゆっくり走っても1時間かからずに着くが、ずっと運転でも疲れるのだろう、適度に町に入って休んでいく。


 今はW03のカフェで休んでいるようだ。この辺りも賑わっていると言うか、町の人の顔が暗くはないので攻められているという事は無いようだ。まだW03だし当然だろう。そう話しながらの休憩を終えると、再び西へと走って行く。


 運転にも大分慣れてきたのだろうが、こういう時が一番危ないので【念話】で注意をしておく。単調な景色と道が延々と続いていくだけなので、ボーッとしていると思わぬ事故に巻き込まれたりする。


 ミクは慌てて全員に【念話】を送り、止まるように指示した。事故なのかは分からないが、魔導四輪が横倒しになっている。おそらく乗っていたのであろう人間種が外に出てきており、困った顔をしつつ話しているようだ。


 ミク達はその横を通り過ぎようとするも、外に出て来ている者に話しかけられた。ミク達としては何も話す気など無いのだが、相手は助けてほしいのだろう。ミクは嘆息しつつ返事をする。



 「で、何? 申し訳ないんだけど、私達はこんな所で止まってられないの。今日中になるべく前線近くまで 行かなきゃならないから」


 「あ、ああ……それは申し訳ない。W04に着いたら、ここで事故を起こしていたと報告してくれないか? ギャルタムがそう言っていたといえば分かるだろう。とりあえず横倒しになっているのを起こさないと迷惑だからね」



 そう、その魔導四輪は道の真ん中で横倒しになっており、西に行く者からも東に行く者からも邪魔なのだ。面倒になったミクは魔導二輪を降り、ヴァルと共に魔導四輪に近付き手をかけて力を篭める。


 すると簡単に持ち上がり、魔導四輪を起こして元の状態に戻す。通常の状態に戻ったのはいいが、果たして出発する事は出来るのだろうか? 中のプレートなどが壊れていれば動かないが……どうやら動くようだ。



 「いやー、君達ありがとう! まさか魔導四輪を起こしてくれるとは思わなかった。どうやら動きそうだし、これで何とかW04までは行けそうだ。本当にありがとう! 私の「ストップ!」屋敷……」


 「申し訳ないんだけど、さっきも言った通り私達は急いでるの。だから呼ばれても行かないし、これ以上妨げるのは止めてほしい。私達は面倒だったから起こしただけ。OK? それ以上じゃない」


 「……分かった。引きとめようとして申し訳ない」


 「じゃあ、私達はこれで」



 ミクはそのまま魔導二輪に乗り、先へと進んで行ってしまった。ヴァルとレイラもさっさと進んでしまい、三人娘は一応会釈してから走り出す。屋敷と言っていた人物は仕方ないという顔をしているが、その横の執事のような人物の顔は怒り狂っている。



 「その顔を止めたまえ、ウェブドム。君がそのような顔をするから、女性達はさっさと去って行ったのかもしれん」


 「しかしですな! あの者どもの態度は目に余りますぞ! 幾らなんでもギャルタム家の方に対する態度ではありませぬ!! あのような者を許していれば他に示しがつきませぬぞ!!」


 「分かっているよ。とはいえ彼女達は無視してもいいのに助けてくれたじゃないか。それに傭兵は傭兵だ。どこかの国の貴族にかしずかねばならぬ理由などない。貴族の理を傭兵にまで押し付けるのは愚か者のする事だ。そうだろう?」


 「………ハッ」


 「それに彼女達は前線に行くと言っていた。つまり我が国のために戦いに行ってくれたという事だ。西に行くという事はリョースナに奪われたW15の奪還だろう。それをしに行く者の邪魔はするべきではない」


 「申し訳ございません」



 執事が運転席に乗り、貴族と思わしき人物が後ろの席に乗り出発する。誰かは知らないが、偉い人物で間違いないらしい。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ミク達はその後も快調に飛ばしていき、昼食の為にW06で食堂に行き昼食を注文した。無駄に時間がかかったのは、一応W04で報告をしたからだ。貴族っぽい人物の魔導四輪が横倒しになっていたのと、それを起こしたから待っていれば到着するだろう。


 そう説明したのだがギャルタムという名前を出すと、何故か止められて根掘り葉掘り聞かれたのだ。その所為で無駄に時間がかかり、面倒な事になった。結局ギャルタムとかいう奴が辿り着いて説明し、ようやく解放されたぐらいである。


 兵士達はミク達がギャルタムを殺そうとしたとかいう頓珍漢な事まで言い出していた。あれ以上留め置かれていたら、我慢の限界を超えてキレていたかもしれない。ヴァルやレイラに三人娘も、実はその事で気が気ではなかった。


 事なきを得たものの、正直に言って寿命が縮まるような事は止めてほしい。そう切に願う三人娘であった。


 食事でリフレッシュした後は、更に快調に飛ばしていく。殆どの者はミク達のように魔力が無いので、こんなに長い距離を一日では進めない。三人娘でさえ魔力回復用の<天生快癒薬>を飲んでいるくらいである。


 普通の者の魔力が足りる筈もなく、そういう意味では魔石に頼って移動するのが普通だが、それでは費用が高くつきすぎる。結局は自分の魔力で移動できる範囲までを一日で移動するのだ。それが40~50キロとなる。


 逆を言えば、魔石無しでこの程度の距離を走れないのならば、移動しない方が良い。最悪、魔導二輪に二人乗りで移動しろという事だ。思っている以上に一般傭兵の魔力が少ない事にビックリするミク。


 ただ、これはミクの勘違いである。そもそも傭兵だろうが一般人だろうが、殆どの者は魔力の器を生涯に一度も壊さないのだ。器を壊して増強する者も居るには居るが、多くはない。人数にすればそれなりには居るが、宇宙全体からすれば極僅かな者だけだ。


 魔道具が当たり前であり、魔力の器を破壊出来るほどの消費を行えないのである。例えばだが100パーセントの魔力をゼロまで落とし、そこから更に10パーセントほど無理に消費すれば魔力の器は壊れる。しかし一度に10パーセントの消費を行うのが魔道具では難しい。


 魔道具は基本的に魔力消費を低減させてある。ミクにすれば「あれで?」と思う程度だが、それでも魔力消費を減らした新型などは随時発表されて市場を賑わす。つまり魔力消費が低減されるほど、一度で大量の魔力を消費するのは難しくなる。


 更に言えば、魔力を最大にまで引き上げてからの10パーセントである。これの消費が結構厳しいのだ。器を壊せなければ唯の魔力枯渇。苦しいがそれだけで何の変化も無い。更に残存魔力が15パーセントを切った辺りで軽度の魔力枯渇現象は起きる。だからこそ、この宇宙では魔力をゼロにする者すら少ないのだ。


 結局、この宇宙の殆どの者は魔力の器を壊しておらず、その程度の実力しかない。ただし知らない筈はないので、クーロン辺りなら薬を使ってやっている可能性はある。そこにはミクも気付いているが、彼女は楽観的だ。


 いつか足を掬われそうな気がするが、掬われたところでどうにもでも出来るのが肉塊でもある。故に楽観的なのであろう。


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