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0392・タウン惑星SLX112




 ガドムラン町で一泊した次の日。ミク達は中央事務所の所長に呼ばれたので、ブラックホークの事務所まで来ていた。現在所長室で話を聞いているのだが、何だか雲行きが怪しい。



 「まあ、警戒する気持ちは分かる。こちらの言い分だからの。とはいえ、君達がそれを絶対に聞かねばならん訳ではない。あくまでもこちらの要望じゃ。君達にはZZZ1190惑星へと行ってもらいたい」


 「ZZZ1190というのは岩石惑星の事だよ。別名<闇と地中の星>と言われる場所だね。岩石惑星でとても大きく、地中からは金属や宝石などが大量に見つかる。岩石惑星ではあるものの水は豊富なんだけど、日光がね……」


 「ま、岩石の中をくり貫いて作られた穴蔵のような場所じゃよ。そこで他の傭兵組織と熾烈な争いになっておるらしい。我がブラックホークが味方をしておるのはパラデオン魔王国じゃ。そして敵はリョースナ工業国じゃの」


 「リョースナは名前の通り工業国だ。金属資源に目のない国だが、どうにも数ヶ月前に、特殊な金属が発見されたらしい。君達が持っている紫色の鉄などだね。それらが見つかったらこそ躍起になってZZZ1190を確保しようとしているようだ」


 「パラデオン魔王国は魔導技術の国じゃ。我がブラックホークとしても恩を売っておいて悪い相手ではない。ただ、ZZZ1190は先程も言った通り穴蔵のような町と道じゃ。言葉は悪いが逃げ場が無い。そのうえ道が崩落する事もある」


 「あと、厄介なのが重力だ。あの星は普通の惑星に比べて重力が強い。魔法銃の飛距離も悪くなる。だからこそ大人数で押し込まれると不利になるんだよ。それを覆せるのは君達をおいて他に居ないって訳さ。君達のあのバズーカなら問題無いだろう?」


 「まあ、多分としか言えないけど、相手に比べればマシじゃないかな。とりあえず頼みは分かった。私達としてはどっちでもいいというのが本音かな? そろそろ砂ばっかりも飽きてきたし、もうちょっと稼いだら他の星に行くつもりだったから……」


 『他の星に行くのが多少早まっても、特に問題がある訳でもない。十分に稼いだと言えば稼いだしな。更にガドムラン町に戻ってくる際に砂上ヨットは壊れている。丁度いいタイミングだとは言えるのだろう』


 「ZZZ1190惑星へ行くのは構いませんが、向こうの何処に行けば良いのですか? 惑星に降り立ったら、いきなり周りが敵だらけも困りますので……」


 「この星から出発して、途中でパラデオン魔王国の宇宙船に乗り換えればいい。ZZZ1190行きは、MASCで調べれば分かるじゃろう。滅多に宇宙船が出ておらぬ監獄惑星ではないからのう」


 「分かった。それじゃあ私達はもう行くよ。私達を行かせたいって事は、虐殺してでも盛り返せって事でしょ?」



 ミクが椅子から立ち上がりつつそう言うと、所長とデュエインが「ニヤッ」とした。どうやらこの連中もミク達の使い方が分かってきたようである。怪物は苛烈な戦争の真ん中に放り込んでも、全てを虐殺して終わらせるだけの力を持つのだ。


 そこまでとは思っていないだろうが、一騎当千なのは理解したらしい。ミク達は別れの挨拶をして部屋を出ると、そのまま町を出て外の道路へ。アイテムバッグから魔導二輪を出したものの形状が変わっていた。


 といっても大きく変わっている訳ではなく、後ろに人が乗ることを考えて少し大型化しただけだ。スーパーカブの形状自体は保ったままである。ちなみにだが、このスーパーカブは初代の姿形を真似ている。


 ミクが乗ると、その後ろにルーナが乗り出発する。六人に一台すつとも考えたのだが、手を放して戦えない為に後ろの人物に攻撃を任せる事になったのだ。つまり物理的な攻撃は後ろに乗った者がやるという事である。


 その為に槍であったり薙刀であったりという長物を新たに作っている。ルーナが薙刀、ヘルが槍、そしてセイランが斧。魔導二輪の速さを加えれば、持って構えているだけで十分な威力が出るだろう。


 何故かセイランは斧を振って試しているが、もしかして気に入ったのだろうか? わざわざ柄が1メートル50センチ、斧頭が三日月形に広がった40センチの大型を用意したのだが……。



 「申し訳ありません。これの手斧サイズの物を作ってもらえませんか? 柳葉刀よりこっちの方が使いやすそうです」


 「まあ、身体強化も使えるし、斧の重さは気にせず振り回せるからいいけどね。闘気の器は二回壊しているから十分だろうし、駄目なら三回目を壊させるか……移動の間はやる事ないから唸っててもいいし」


 「「「………」」」



 ミクが「やれ」と言えば逆らえないので諦めるしかない。「余計な事を言いやがって……」という感じでルーナとヘルがセイランを睨んでいる。セイランもそんなつもりではなかったのだろうが、<時、既に遅し>と思うしかないだろう。


 今は発着場の入り口前だが、ミクはルーナの頭の上に手を置いて強制的に魔力と闘気を喰らう。その後、無理矢理に両方使わせると、ルーナはとんでもない苦しみに陥った。両方三回目である、これは辛いであろう。


 それでもヘルにもセイランにも容赦なくさせ、三人を背負って発着場の中に入る。三人とも地獄の苦しみを味わっているが、それは仕方がない。恐怖の大王が「やれ」と言ったのだし、次の惑星では追い込まれた状態から始まる。


 運が悪ければ簡単に死んでしまうのだ。戦場とはそういうものであり、だからこそ生存確率を上げるのは当然でもある。そんな事を言い聞かせているが、当の三人は唸っているだけで聞いていない。


 仕方がない状態なので諦めてもいるが、それでも言うべき事はキッチリ言っておくミクであった。その間にヴァルは受付近くの掲示板で確認し、レイラはMASCで宇宙船の行き先を確認している。


 どうやら次に出発する宇宙船に乗って移動すればいいようだ。一度タウン惑星のSLX112に行ってから、そこでパラデオン魔王国の宇宙船に乗り換えてZZZ1190行きに乗ればいいらしい。


 分かったミク達はゆっくりしつつ、三人娘が唸っているのを見守るのだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 現在宇宙船に乗って移動中のミク達。特におかしな乗客もおらず、妙な動きも感じない快適な旅ではあるが、横が「うんうん」五月蝿い。まあ、一日も経っていないのだからどうしようもないのだが、それでも静かに出来ないものだろうか。


 とはいえ周りの乗客の迷惑になる程ではないのが救いだ。機内食という名の栄養補助食品を食べつつ、該当の星に到着する前には終わってほしいと思うミク。その願いは叶うのであろうか? まあ叶わなくても三人の苦しむ時間が長くなるだけなのだが。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 宇宙船に乗って一日半。現在タウン惑星SLX112に到着したが、未だに唸っている。今回の苦しみは少々長いようだ。タウン惑星に出ずに発着場近くのレストランに行き食事をとる。


 タウン惑星では大規模な争い事は基本的に無い。もしここで争い事を起こせば大手を振って叩き潰せる為、どこの傭兵組織もタウン惑星では争わないのだ。そもそもタウン惑星には国の高官や貴族家の屋敷が多いので、敵に回すと厄介な連中ばかり住んでいる。


 それもあって、何処の傭兵組織も暴れないし大人しくしている。こういうタウン惑星である仕事は、基本的にはそういった連中の小間使いだ。とはいえ、コネが手に入る仕事なのと安全なので人気は高い。


 ミク達にとってはどうでもいい仕事である。


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