0381・SE04オアシスに向けて出発
まだ朝早いのでNW03オアシスを出発し、ガドムラン町へと向かう事にしたミク達。そこがこの辺りの基点となる場所だ。ガドムラン星国の発着場近くの町だからガドムラン町と呼ばれているらしい。
パラデオン魔王国の発着場の近くの町はパラデオン町、リョースナ工業国の発着場が近い町はリョースナ町と呼ばれている。ただし、それぞれの町はそれぞれの大陸にあり、海で隔てられているので繋がっている訳ではない。
なので他の大陸にもNW03オアシスという名前のオアシスは存在する。そういう場合はガドムランNW03とかパラデオンNW03と呼称されるので、特に問題にはならないそうだ。確かに大陸が違えば問題にはならないだろう。
そしてガドムランが持つ大陸が惑星最大の大陸であり、今いる場所でもある。ミク達は砂上船に乗ると、一路SE04オアシスを目指して出発。新しく少し大きくなった砂上ヨットに乗り込み、砂の海を滑るように移動していく。
相変わらずミクが【強風】を当て、ヴァルが舵を操縦しながらの旅だ。それでも今までより速く、楽な旅路になるだろう。邪魔者はバズーカで蹴散らせばいいし、魔法銃の練習をする的として使ってもいい。ミク達にとってはその程度の障害だ。
SE方向へ向けて砂上ヨットを走らせて一時間。魔物は襲ってくるが、砂賊が襲ってくる事は無い。まあ、遭わないならそれでいいのだが、NW方面との違いを奇妙に思いながらも進んで行く。すると、巨大な魔物を感知した。
「ヴァル! 分かっているだろうけど、大きな魔物が砂の下にいる! 大きく迂回して!」
『分かっている。流石にあれだけ大きいものが分からんという事は無い。形はミミズ系なので厄介な場合も考えられるが、振動を感知しているタイプでもなければ避けられるだろう。大回りで迂回する!』
ヴァルは舵を操り、ミミズ系の魔物が遠くに感じられる距離から迂回を始める。普通ならばそれで回避できる筈なのだが、巨大ミミズはミク達の砂上ヨットの居る方向へと進む方角を変えてきた。明らかにこちらを認識していないと、この動きにはならない。
ミクは已む無くギリギリまで範囲を小さくした【蟻地獄】の魔法を使い、ミミズの魔物の進行方向を邪魔するように設置した。砂が常に落ちてくるからだろう嫌がったミミズの魔物は【蟻地獄】の中に突っ込み、穴から体を外に出してきた。
砂の渦の中心からミミズの魔物が生えてきた形になっているが、出てきたのなら幾らでも対処できる。レイラはミクに言われて準備していたジャベリンバズーカを使い、一撃でミミズの魔物を千切る事に成功したようだ。
ジャベリンバズーカから放たれた【魔力投槍】は、真っ直ぐミミズの魔物に向かい、その体を引き千切りながら貫通。そのまま後ろの空へと飛んでいった。
穴から出ていた体の三分の一を千切られたミミズの魔物は、派手にのた打ち回った後ピクリともしなくなる。どうやら完全に倒せたらしい。
随分大きな魔物なので近寄ると、直径で3メートルほどの太さをしていた。近付けば分かるその大きさは、ミク達でなければ絶対に勝てないと分かる程である。三人娘はミク達と共に居られる事に感謝しながら見ていると、ミクが右手を巨大な肉塊に変え飲み込んでいく。
何をしているのか気になったのでルーナが聞くと、目が点になりそうな答えが返ってきた。
「実はさ、この巨大ミミズの魔物の皮、予想以上に優秀そうなんだよね。何かに使えるんじゃないかと思ったから、本体空間に放り込んでおこうと思ったんだよ。具体的にはラバースーツみたいなのとか、後は砂上ヨットの外に張るとか」
『少なくとも触った感じでは水は弾くだろう、というより水分を通さない感じがした。それと実験してみなければ分からないが、衝吸収性能と抗魔力の高そうな素材でもある。総じて優秀な防具、またはインナーになりそうだ』
「アレを着るのですか!? ……み、ミミズをですかー……。別に着れない訳ではないと思いますが、好き好んで着る物ではないと思います。だってミミズの皮ですよ? 流石にそれは……」
「命を助けてくれるかもしれない物よ? 妥協はできないし、してはいけない部分なんだけど……どうやら、あまり理解できていないみたいね。それを着ていた御蔭で助かる可能性を考えたら、ミミズの皮も気にならなくなるわ」
「まあ、仰りたい事は分かります。しかも予備も含めて沢山作れそうですしねー……。近接戦闘もするんですし、諦めた方が良さ気ですよ、ルーナ。私も着ますし、そのうち慣れるでしょう」
「死ぬよりはマシ。そう言われて否定出来る者は多くありませんよ、当然の事ですからね。それでも見た目とかミミズの皮だという人は、死ぬという事を軽んじているだけです。だからこそ、そんな事が気になるんですしね」
「セイランが容赦なく正論をぶつけてくる件……」
「セイランと正論を掛けてるのか、○○な件と言いたかっただけなのか。何とも判断に迷うわね?」
「適当に皮を伸ばして綺麗にしたら、何故か色が白くなったみたい。いまいち意味が分からないけど、一応完成したから着てみるよ」
ミクはそう言って、その場で服をどんどん脱いでいく。知り合いしかいないうえ、その全員と関係がある為、裸を見ても特に気にしないだろうと思っているミク。
<美の女神>が自ら監修した、美の一つの完成形である。当然のように見て欲情する三人娘。特にルーナの食い付きが激しい。どうやら茨木吾郎が出てきているようである。
そんな事は気にせずミクはミミズの皮で出来た、白いラバースーツというかライダースーツを着ていく。形としてはライダースーツと変わらないが、ドラゴンの皮に比べて薄いからか、更にプロポーションが際立っている。というより体の凹凸がクッキリ出ているのだ。
「お姉様! 大変素晴らしいです!! 着る人を極限まで選ぶでしょうが、お姉様が着る分には最高です! 素敵過ぎます!! 部分部分の色を変えて、もっと美しく際立つように致しましょう!!!」
興奮しながら話し掛けてくるルーナに対し、レイラが割って入って一言入れる。明らかに欲情しているのが丸分かりである為だ。レイラとしても見ていたいが、だからと言って邪な視線は注意しておかねばならない。
「見たいのは分かるし、素晴らしいのもよく分かるわ。でもね、そのあからさまな欲望を向けるのは止めなさい。明らかに茨木吾郎が出てきてるじゃないの。あんまりにも酷いようだと、またヴァルに思いっきりヤらせるわよ?」
「…………//////」
「ルーナは元々ヴァルさんの事を呼び捨てか、私のようにさん付けで呼んでいましたからね。ところが前世の男性が強く出すぎた時に躾けられてしまいましたし、それは今でも残っているみたいですね」
「まあ、あれは仕方ないです。私も後でヴァル殿にお強請りしましたし。それぐらいに女性を雌に堕とす躾けでした。あれからですね、ルーナがヴァル殿を”お兄様”と呼ぶようになったのは」
「し、仕方ないでしょう///! あんな事をされればどうにもなりません!! 私だって今は女なんですから、あんな風に躾けられたら女になってしまうのは当然です///!!」
「徹底的に女として扱われましたからね。あの時のルーナはヴァルさんの逞しい腕に抱かれて、完全に蕩けた女の表情になっていました。まあ、私もあれをされたらダメになる自信がありますし、実際になりましたけどね」
「でしょう!! アレに抗うなんて女には無理なんです!!」
何があったかは知らないが、砂漠の真ん中だからいいものを、何を大声で喋っているのだろうか。そう思っていると、赤や黒で彩られた新しいライダースーツが肉を通して転送されてきた。
ミクは白いライダースーツを脱ぎ、新たなライダースーツを着ていく。彩りも鮮やかになったが、エロスも増してしまっている。ミク的にはOKらしいが、これもどうなのだろう?。
まだ三人娘が五月蝿くしている横で、ヴァルがそっとミクに予備のジャケットを掛けた。これは市販の普通の男物のジャケットであるが、ライダースーツの上に羽織った姿はレイラとルーナの視線を一身に集めるのだった。




