0372・NW09オアシスの真実
巨大船の周囲の砂賊を駆逐し、中に居た連中もヴァルとレイラが全滅させたようだ。中に隠れていた連中の一人がアイテムバッグの中にゴーレムコアを入れて盗んでいたが、それはヴァルが取り返して船の所定の位置にセットした。
ヴァルが船を動かす魔力源になり、レイラが砲撃やシールドの魔力源になる。その形で巨大船を動かす事にしたミク達は、まずはNW09オアシスへと向かうのだが、おそらくあそこでは買い取ってくれないだろう。なのでNW03オアシスまで持っていく必要がある。
そう思って動かしていると、周囲に砂上船が集まり撃ってくる。レイラにシールドを使わせて防ぎ、ミクはジャベリンバズーカを使って敵の砂上船を破壊していく。それでもしつこく砂賊は追い駆けてきたので、結果的に皆殺しにする羽目になった。
「お姉様、もしかして先ほどの連中は砂賊ではなくクーロンだったのでは? 何となくですが、そんな気がいたします」
「仮にそうだったとしても、こっちに喧嘩を売ってきてる訳だしね。殺されても文句は言えないよ? つまり、クーロンであろうが無かろうが敵は敵。それ以上もそれ以下も無いの。それにこの船は私達の戦利品であってクーロンの物じゃないしね」
「まあ、それはそうですね。<大鴉>がクーロンからブン獲った物ですし……。あれ? もしかしてクーロンは<大鴉>がワンタオなのを知っていたのでは? だから取り戻そうとしなかったと考えれば、しっくりくるのですが……」
「おそらくそういう裏取引もあったのでしょうね。いきなり攻撃してきたところを考えるに、お姉様に奪われたのは本当に奪われた事になりますから。となるとNW09オアシスには近付かない方がいいでしょうか?」
「別に気にしなくても良いのでは? 何なら私達だけでギルドに説明に行っても構わないと思います。たまには役に立つところを、お見せするべきだと思いますし……」
「そうですね。説明くらいは私達にもできますし、お姉様、私達だけで行って参ります」
「まあ、それはいいけどさ。まだあのオアシスには構成員が残っている可能性があるから気をつけるようにね」
「「「はい」」」
NW09オアシスの近くに到着したので、三人娘を底部乗降口から降ろして見送る。ミクは砂上ヨットを肉に強引に仕舞い、船の下部に降りると内部のドックに出して置いておく。それにしても何の木を使ってるのか知らないが、面白い船だと思う。
あのガレオン船もそうだったのだが、この船も木造船であり、技術が発達したにも関わらず木造船を作るという事に面白さを感じるミク。おそらくは軽量化などを考えて木造船にしたのだろうが、本当に不思議なものである。
ところどころに魔法銃にも使われている透明の素材が使われているが、相変わらずコレが何なのか分かっていない。いちいち調べるのも面倒なので、敢えて謎のままにしているミク。暇潰しを兼ねて、そんな事を本体空間を通して話す三人。
そうやって暇を潰していると三人娘と所長が来た。
「いやー、君達は本当に凄いね!! まさか<大鴉>を壊滅させてくれるとは思わなかったよ。後、この船なんだけど、当たり前の如くNW09オアシスでは買い取れないよ。これを買い取ってくれるのは、多分NW03オアシスだろうね」
「了解。それじゃあ、ゆっくりとNW03オアシスまで戻るよ」
「そうか。道中気をつけるんだよ。これだけ大きな船なら砂賊どもの格好の的になるだろうからね。大きいとそれだけ守るのに不利だ。じゃあ、気をつけて!」
所長と別れてNW09オアシス近くから船を出発させる。三人娘はどうやら全く気付いていないらしい、なかなか厄介な事をしてくれるものだ。ミクはコップを取り出して、三人に<聖霊水>を飲ませる。
不思議に思った三人は飲み込んて少し経つと、愕然とした表情になる。
「お、お姉様! 申し訳御座いません!! まさか、あの男にあんな事をされるなんて!!!」
「「申し訳御座いません!!!」」
「いや、別にいいよ。向こうの方が一枚上手だったというだけ。それにしてもやってくれるねえ? どんな呪いかは知らないけど、三人に呪いを仕掛けるなんてさ」
「おそらくは多少の時間が経つと、お姉様方を襲うように仕向けられていたのだと思います。呪いを掛けられた瞬間から頭がボーッとしてしまい、どんな呪いを掛けられたかまでは……」
「まあ、<紅の万能薬>と<天生快癒薬>もついでに飲んでおこうか。こういう手癖の悪い奴にはオシオキが必要だよねえ? それは今日の夜にするとして、とりあえずは寄ってきたバカに八つ当たりでもしようかな?」
そう言ってミクは右肩にジャベリンバズーカ、左肩にバレットバズーカを持ち連射する。襲ってきた砂賊は可哀想になるくらいに”爆散”させられていく。小さな肉片になっている為、それほどのグロテスク映像にはなっていないのだった。
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夜になったので巨大船を泊めて、甲板で夕食を食べるミク達。料理をしたのは本体だが、三人娘は美味しそうに食べている。流石に夜になっては襲ってこないのか、やられ過ぎて態勢を立て直そうとしているのかは分からない。もしかしたら寝込みを襲うのかも。
そんな予想を話しつつの食事も終わり、満点の星空の下で服を脱いでいく三人娘。どうも今日は甲板の上で乱れたいらしい。昨夜が無かったからか既に妖しい目をしており、欲情しているのが丸分かりである。
仕方なく、今日は一対一でじっくりと相手をしていく事に決めたようだ。お預けされていた三人の嬌声が夜の砂漠に響き渡り、砂に水が染み込むが如く三人の心を潤していく。
悦びの声を上げていた三人も、十分に満足したのか気を失っており、後を任せたミクは鳥の姿に変わって飛び立つ。行き先は当然NW09オアシスだ。飛んでいった為あっさりと到着したミクは、所長の気配を調べる。すると酒場にあった。
どうやら奥の部屋で四人の男とテーブルを囲んでいるらしい。ミクはムカデの姿に変わり、建物に穴を空けて潜りこむ。
「良かったのか? そんな事をして。もし生き残ってみろ、確実に報復されるぞ。唯でさえ、あの女は我がクーロンに痛手を与えている女なんだ。これでバレたら更なる目の敵にされる。それが本部にバレてみろ、オレ達の首が落ちるぞ」
「代わりに上手くいけばオレ達の評価は上がる。そうだろう? それを狙わない奴はクーロ、ンじゃ……な………」
ミクは麻痺毒を散布して身動きがとれないようにする。丸いテーブルを囲んでいた男どもは、一斉にテーブルに突っ伏した。その部屋の端で、ミクは<女性形態>に変化する。
「バカだねぇ……お前達が敵に回した私は人間種じゃないんだよ。さて、まずは情報をもらおうか」
ミクは頭の上に掌を置き、触手を脳に突き刺して喋らせていく。話を聞いて分かったが、元々このNW09オアシスはクーロンが乗っ取っていたらしい。なのでオアシス内部の連中からすれば、ワンタオの連中を騙していただけだったようだ。
このオアシスの全ての人員がクーロンの構成員だったらしく、ここでブラックホークからの情報も得ていたようだ。それを聞き出したミクは、この場の者の目の前で胴体をバケモノの口に変えて貪り喰っていく。
痺れている連中はバケモノを見て失禁するが、もう遅い。全ては決した後である。
「本当に人間種というのは、いつの世もバカだよねえ? だから貪り喰われて死ぬんだよ。私は<喰らう者>。つまり、いつだって喰らう側なんだよ私は。そしてお前達は常に”喰われる側”でしかない。それを理解しながら死んでいけ」
そう言って一人ずつ貪り喰っていく全裸の美女。暴食の宴は始まったばかりである。このオアシスの全員を喰っていいのだから、楽しい宴となるだろう。怪物の口角もつり上がっている。




