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0355・訓練開始




 夜になり本体空間へと移動してきた三人。まずは武器を持たせるのだが、オーソドックスな物からイロモノまで様々な物を本体は作っていた。作られた武器は全て余った鉄製なので、好きな物を持って使わせる。


 こういう戦いも知らない時のフィーリングというのは意外に大事であり、本質的に合う合わないの指標になるものだ。そうやってブンブン振っていたのだが、ようやく三人とも武器を決める。ファイレーセは凄く早かったが、他の二人は吟味していた。



 「私はこれです、お姉様! ヤマト男子たるもの、刀以外を選ぶなどあり得ません!! 私は刀を使います。だって武士の魂ですから!!」


 「刀が武士の魂とか言われ始めたのは、平和になった江戸時代になってからみたいだよ。それまでは戦場での補助武器のような扱いだったそうだし。いちおう京八流とかいう流派が古くからあったそうだから、完全な補助って訳でもないんだろうけどね」


 「………」


 「えーっと……私はこちらの武器が使いやすかったので、こちらでお願いします。両手に剣を持つ事になりますが、これが一番しっくりきたのです。<胡蝶剣>というそうですが、どうでしょう?」


 「どう、と言われても修練はこれからだし、しっくりきたのならそれで良いんじゃない? 最初に良いと思ったのは結構重要だしね。自分の体の筋肉のつき方とか重心とかで、気に入る物と気に入らない物が出てくるから」


 「成る程、そのようなものなのですね。勉強になります」


 「私はシンプルなこれにしました。剣にも色々ありますが、この<柳葉刀>が一番扱いやすかったですから。どちらかと言うと、私は盾をメインに習おうと思います。それが二人の生存の可能性を一番引き上げるでしょうし」


 『まあ、ホリーがそう決めたのならば、それで良いと思うぞ。あの二人は前へ出そうだからな、それの補助を考えるなら盾を持つ必要があるだろう。どのみち三人には魔法銃も持たせるし、そっちでも練習だ』


 「はい」



 武器が決まったら後は練習あるのみである。この本体空間では時間の流れが普通より遅いとはいえ、過ごした時間自体は変わらない。なので寿命の長い者しか出来ない荒技でもある。本体空間も有効に使うには色々と制約があるのだ。


 早速刀を振り回して足を切ったバカは横に置いておき、ヴァルとレイラはシュネとホリーに一つずつ丁寧に教えていくのだった。それにしても、どうしてファイレーセは予想通りの事をするのだろうか? そういう星にでも生まれたのかと言いたくなる。



 「はあっ、はぁっ、はぁっ……。刀を振るのがこんなに大変だとは思いませんでした。というか、刀ってこんなに重かったんですね。いえ、これは太刀ですけど、そこまで変わらないでしょう?」


 「色々違うよ。太刀でも大きい物は大太刀や野太刀と言って刃の長さが90センチ以上と決まってる。次に小太刀は刃の長さが60センチまでと決まってるの。太刀はその中間ね。ちなみに打刀は持ち歩くのに便利な長さってぐらい」


 「へー、そうだったんですね。……そういえば補助武器って仰ってましたけど、もしかして主武器って槍ですか……?」


 「私もスマコンで読んだだけだけど、元々の主武器は弓と剣だったみたいだね。で矛が伝来して、薙刀や槍に変化していったんだって。ちなみに矛は、長柄の先に両刃の刃を付けたのを矛っていうらしいよ」


 「成る程、そんな変遷があっての……あら? 刀はいつ?」


 「非常に古い時代からあったらしくて詳しい事は分かっていないらしいね。昔はわざわざ反りが付かないように命じていたらしいよ? 直刀っていう反っていない刀が元は主流だったんだってさ」


 「わざわざ反らないようにしていたのですか!? 反っているのが格好良いのに!? ……昔の人の考える事はよく分かりませんね。こうやって反っているからこそ切れ味が鋭くなると、何処かで聞いたような気がするのですが……」


 「それはあるね。元々始まりは剣なんだし、剣のメインスタイルって突きだからね? 剣って切るイメージあるけど、突くために両刃になってる訳だしさ。切るなら片刃でいいじゃんってなるから」


 「まあ、それは確かにそうですね。素人考えでも、片刃の方が耐久力が高そうですし、折れにくそうです。……それなら先だけ両刃にすれば良いのでは?」


 「ヤマトには先半分だけ両刃の小烏丸という物や、エウロペの方にはファルシオンという先だけ両刃の剣があったらしいけどね。片刃の方が耐久力が高いなら当然そうすると思うよ、何処の国でも」


 「まあ、そうですね。って、これ以上の休憩は駄目ですか。……はい、頑張ります」



 その後も繰り返し刀の振り方から教えていく。ファイレーセには武器を扱う系統のスキルが無い為、地道に一つずつ練習して覚えさせていくしかない。言葉は悪いがシュネ以外は使い熟せるのか疑問があるほどだ。


 とはいえ修行を続けていれば、その内スキルも手に入れている可能性はあるので、今の練習も無駄ではない。……どうやらまたファイレーセが足を切ったようである。集中力が無くなり散漫になっているのだろうか。今ミクが<天生快癒薬>を飲ませている。



 「御嬢様はもう少し冷静に動かれた方が良いと思います。あの刀という剣を持ってから、興奮が治まっていないように見受けられますね。何故かは分かりませんが……」


 「まあ、アレはねー。武士の魂であり、大和男子やまとおのこの憧れみたいなものだから仕方ないわよ。前世の記憶に引っ張られてるんでしょうけど、その内に落ち着くわ。あれ、極めるの結構大変なのよね。すぐにその現実を知るわ」


 「そうなんですか……それは面白そうですね。とはいえ、御嬢様より上手くなる訳にはいきませんので手は出しませんが……」


 「【武の術理】と【武芸百般】が効いてるのか、本当に武器の扱いと飲み込みが早いわよねー。正直に言って、武器を使った近接戦闘では三人の中で一番強くなるわ。ホリーの仙術がちょっと分からないけど」



 そんな話をしている横で、ヴァルの攻撃を盾で凌ぐホリーが突如加速する。どうやら盾で防ぎながら【武仙術】を使ったらしい。シュネとは別の強さを持つのがホリーのようだ。ある意味で一番弱いのがファイレーセである。


 戦闘用に使えるスキルもあるにはあるのだが、それ以上にファイレーセは色々なものを吹っ飛ばす反則スキルを所持していた。



 「ふう。御嬢様をお守りする為の盾の練習ですが、盾というのもなかなか奥が深いものですね。まあ、御嬢様は殺しても死なないのですが……」


 『【蛇転復活】のスキルか……。アレは反則と言っても良いだろうな。連続70回までなら復活でき、時間が空けばまた70回の復活回数まで回復するという理解不能なスキルだ。神の因子は伊達ではないのだろう』


 「そもそも復活というのが反則です。蛇の名を冠するので、おそらく脱皮するように蘇るのでしょうが……。御嬢様は寿命まで死んでも復活し続けるでしょう。まあ安心できるスキルなので、それはそれで良い事なのですが……」


 『ファイレーセは体を動かすのが下手というか、運動センスが無いな。完全に駄目だとまでは言わんが、それでも苦労するぞアレは。まあ、苦労したほうが身につくので難しいところではあるが……。あーあー、また足を切ったのか』



 腰が安定していないというか、重心がブレまくるというか。その結果、何度も自分の足を切ってしまうファイレーセ。この運動センスの無さはファイレーセなのか、それとも茨木吾郎なのか。果たしてどちらなのだろう?。


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