0350・一夜明けて
1号宿舎の中に食堂はあったのだが、なかなか立派な食堂だった。思っているよりも綺麗で豪華であり、何と言うか……客と一緒に使う店だというのが分かる。そこで出てくる食事は、確かに豪華で美味しい物だった。それでもヤマト皇国の料理より美味しくはないのだが。
そんな食事を終えてファイレーセ達の部屋へと戻る。食堂ではミク達の方にあからさまに視線を向けていた者達がいた。下卑た視線だったのですぐに分かったのだが、そういう客がミク達を見ていたのだ。しかし、一部の男性客がヴァルを見ていたのは何とも言えない。
それは横に置き、部屋に戻ってきたミク達はファイレーセ達と話していく。この場所の地理や、何処の警備が厳重なのかと何処が手薄か。更には職員の地位や役割。ファイレーセ達も脱出の為、様々な情報を集めていた。
そんな事を話しつつ、今日は客をとらないファイレーセ達をミクは押し倒す。ヴァル達にも言ってあるが、少々メンタルがやられていて情緒不安定な部分がある。それを治してやる意味で既に決めていた事だ。
ミクがシュネ、ヴァルがホリー、レイラがファイレーセという形になった。どうもシュネは男性よりも女性好きなのではないかとミクは思っている。ヴァルの方も見ていたが、それ以上にミクの裸を見ていたのがシュネだからだ。
欲情を向けられても気にしないミクだが、さりとて視線が向けられているのは分かっている。悪意や敵意を理解できる肉塊が、視線にまで無頓着という事は無い。欲情の視線を気にしないだけなのだ。
ミク達は媚薬と精力剤を用いて最高の快楽を与えていく。ここを脱出する協力者にする為、たっぷりの飴を与えてやるのだった。鼻先にブラ下げられた餌とも言うが……。
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明けて翌日。普通ならば絶対に得られないであろう、極致とも言える快楽を与えられ、悦楽を極めた三人は未だ失神するように眠っている。ミク達は寝る必要など無いので話し合いを行っているが、分体は停止したままだ。
(どうして主はあんな事をさせたのだ? 確かにホリーは男嫌いになりかけていたが、だからと言ってそこまで良くなったとは思えんのだが……。それに主が相手をしたシュネは益々酷くなるかもしれんぞ?)
(そこは心配要らないよ。シュネには触手を使ったし、その触手は男のモノのように生やしたからね。最初は目が点になっていたけど、途中からは悦んでたから特に問題ない。そもそもシュネは”どちらかといえば”女好きなだけだし)
(そうだったの? こっちは微妙ねえ。ファイレーセは女だけど、前世の記憶は男でしょ? それが微妙に邪魔していて、男にも女にも成りきれていない感じね? 正直に言って私達ぐらいじゃないかしら、満足させてあげられるのは)
(女としてヤられていれば前世の記憶が邪魔をし、とはいえ男のモノは付いていないので男の満足は得られない。難儀な状況だねえ。でも、そんなファイレーセを満足させるってどういう事?)
(触手を入れた時にね、”繋いで”あげたの。神経を。擬似的に男のモノっぽく感じられたのでしょうね、悦びが凄かったわ。多分だけど、男として女とシている感覚になれたんじゃないかしら?)
(成る程。そんな事をしていたのか。こいつら三人揃って難儀な状況だな。だからこそ三人で固まったのかもしれんが、主はこいつらをどうするんだ?)
(後で三人を私の本体空間に送って鑑定しよう。前にヴァルに鑑定させた後、神どもにスッゴイ怒られたからさ。流石に同じ事は出来ないし。それで困ってたら、この三人は本体空間に連れて来て良いんだって。ちょっと種族が特殊過ぎるみたい)
((特殊過ぎる?))
(どうやら惑星規模の神の因子が極僅かに入ってるみたいだね。その所為で千年も生きる種族になっているようだけど、普通は発現しない筈なんだって。それが発現している時点でおかしいらしく、連れて来たら調整するってさ)
(神が調整しなければいけないって厄介な事ねえ。それぐらい珍しいのでしょうけれど、ってそろそろ起きるみたいよ?)
ファイレーセが身じろぎし、ゆっくりと瞼を開く。少しの間ボーッとレイラを見ていたが、突然跳ね上がるように起き上がった。その行動にむしろミク達が驚いたくらいである。
「///お、おはようございます……レイラお姉様/// 昨夜は大変見苦しい姿をお見せしてしまい、申し訳御座いません。私ったら、あのような恥ずかしい姿を……///」
「特に気にしなくてもいいわよ。誰でも気持ちよくなればああなるのだし、貴女だけではないのだから。それに、それだけ良かったという事でしょう?」
「は、はい……///」
俯いて真っ赤になりつつ喋っている姿は完全に乙女なのだが、中身の半分は茨木吾郎である。そう考えると何だかな? と思えるミク達だった。とはいえ本人も言っていた通り、今は女で男だった記憶があるだけなのだから、女と言った方が正しいのだろう。
そんな下らない事を考えていたらシュネもホリーも起きてきた。二人とも隣に居る人物を見ると、顔を真っ赤にしつつも挨拶してきた。余程、三人にとって昨夜は素晴らしかったのだろう。
「それはそうです! 私は男性というのが嫌いでした。唯々奉仕を強要させられ、醜い爺どもの上で腰を振らされる。そんな事を好む女など居ません。ですので男を好きになる事など無い筈でした……」
「でもヴァルに嵌まったみたいじゃない? 昨夜チラリと見てたけど、女の悦びを存分に味わってたじゃん。少しはストレスが減ったようだし、元気になって何よりだよ。昨夜は派手に悦んでたもんね、その声は皆が覚えてるくらいだし」
「は、はい。それはもう……///。ゴホンッ! 確かにヴァル殿の御蔭で男嫌いにならずに済みそうです。昨夜は本当にありがとうございました/// あの……あんな風に乱れたのは初めてですから/// ヴァル殿の前だけですから///」
『気にする必要は無い。情緒が不安定なのは分かっていたし、その原因にも見当はついていた。俺は止めておいた方が良いと思ったんだが、主がむしろヤってしまえと言ってな。結果を見れば正解だったのが分かる。それは実感しているだろう?』
「//////」
「その声を真横で聞かされると駄目になるんだから、気をつけた方がいいんじゃないの? 女を駄目にする声って散々言われてるんだし、離れられなくなっても知らないわよ? 千年生きるんでしょ?」
「そうだけど、大丈夫じゃない? そもそも駄目ならアレが何とかするだろうし。それよりも朝早く起きてくれて良かったよ。もう少し遅かったら起こそうかと思ってた」
「「「???」」」
『申し訳ないんだが、お前達をとある場所に送らねばならなくなった。まあ僅かな時間で済むとは思う。文句は受け付けていないのでな、向こうで文句を行ってくれ』
「あの、向こうとはいったい……?」
そうファイレーセが聞いた瞬間、ミクの右手が大きな肉の塊になりシュネを飲み込んだ。素早くヴァルがホリーを捕まえてミクの前に出すと、今度は左手が大きな肉の塊になりホリーを飲み込む。
「シュネ!? ホリー!! ……み、ミクさん……貴女はいったい………」
「それは後で説明してあげるから、今は大人しく飲み込まれようね?」
そう言ってレイラが捕まえているファイレーセに近付き、右手を肉塊にして飲み込むミク。その後、ヴァルとレイラは本体空間に戻り、ミクも本体へと戻るのだった。
現在ファイレーセの部屋には誰も居ない……。




