0348・ファイレーセ達との話
手を使って様々な部分をイロイロ綺麗にしてあげたミク。大きく悦び過ぎたファイレーセは現在グッタリしており、他の女二人もグッタリとしているので湖岸に寝かせた。ミク達は再度綺麗にした後、岸に上がって【超位清潔】を使って完全に綺麗にしていく。
それを見たファイレーセと女二人は硬直し、少し経つと納得したように弛緩した。何が納得できたのか分からないが聞けば分かるだろうと思い、ミクは情報収集も兼ねて聞いていく。その為に彼女達を悦ばせたのだから。
「聞きたいんだけど、この農業惑星に連れて来られたの? それとも買いに来た側?」
「残念ながら、ここに連れて来られた側です。もう五年になるでしょうか……13の時に連れて来られて以降、客をとり続ける日々。私が邪魔になったのか、それとも政敵に嵌められたのかは分かりません」
「ファイレーセ御嬢様の本名は、ファイレーセ・ディ・オリウムス・トルカントと申されます。ガドムラン星国、トルカント侯爵家の御嬢様なのです。ですが、あの夜……」
「侯爵家の特殊魔導四輪に乗って御屋敷に戻る際に何者かに拉致されてしまい、気付けばこの星へと連れて来られてしまいました。あの者達は13歳であった御嬢様に、無理矢理客をとらせて……!!」
「いいのです。ここで生きていく為には仕方ありません。私とて死にたくはありませんもの。たとえ淫売と嘲笑されようとも、私は私として生きていくしかありません。それに……もう慣れました。男に股を開くのも、男のモノを咥えるのも」
「「御嬢様……おいたわしや……」」
「まあ、それは横に置いておこうか。それより、私が魔法を使えた事に驚いてたけど、侯爵家ぐらいになると魔法の練習とかしないの? 権力があれば魔法の使い方ぐらい学べるでしょ?」
「そんな事はありません。魔法の知識は厳重に秘匿されているらしく、私が子供の頃に両親に強請っても無理だったくらいです。右手に炎の魔法、左手に氷の魔法を出して融合してみたかったのですが……」
『それは主が読んでいた漫画にあったヤツか? 確かメ○ローアとか言う魔法だった筈だが、あんなものは無理だぞ』
「え……何故メド○ーアをご存知なんですか? あれは私が子供の頃に男子の間で流行った作品ですよ? 私も少年ながらに傘でア○ンストラ……ちょっと待って、何で知ってるの!?」
「それより貴女、過去の記憶、もしくは前世の記憶がある? さっき言った作品はヤマト皇国で主が読んでいた作品。それを知っているって事は、貴女の記憶は間違いなくヤマト皇国で生きていた者の記憶よね?」
「え、ええ……。私の前世の記憶は、車の運転中に追突されてガードレールから崖下に落ちた記憶までで……その後、気付いたらファイレーセとして産まれていました。前世の名前は茨木吾郎といいます」
『イバラキという地名というか県名はあったが……ああ、字が違うのか。それにしても、こんな所で前世の記憶持ち、しかもヤマト皇国のヤツと出会うとはな。生きていると、こういう事もあるのだろう。不思議な気分ではあるが』
「………あれ? 貴女、生まれながらに男だった記憶があるのよね? なのに、ここで男に股を開いたり咥えたりしているの? ………ああ、御免なさい。別に嫌味とかそういう意味ではなくて」
「分かっています。私も色々な葛藤が多くありましたし、今でも納得できている訳ではありません。しかし前世が男だったので、男の弱点はよく分かるのです。その所為で人気が出てしまい……」
「『「あ~………」』」
色々言葉をかけ辛いが、様々な苦労があったらしい。今でも葛藤はあり、納得できている訳ではないのだろう。とはいえ生きていくしかない監獄惑星の中で、無意味に朽ちて死んでいく訳にもいかない。
男の相手など納得できていないだろうが、それでも文化的に生きていく為には男に股を開くしかない。色々なものがあり、それでも割り切って生きてきたのだろう。そうでなければ生きられない場所だ。
「そういえば、貴女達はどうなの? 多分だけど、侯爵家でファイレーセについていたメイドよね? ここで一緒に客をとって生きてるの?」
「はい。私の名はシュネヘルト・ゲヘルナータと申します。種族は妖魔族・九天玄女です。こう見えて千年ほどは生きる種族ですので、御嬢様のメイドとして仕えております」
「私はホルティエン・エイバルドスと申します。種族は妖魔族・碧霞元君です。私もシュネと同じく千年ほど生きる種族ですので、御嬢様のメイドをしております」
『どうしてそんなに長生きの種族がファイレーセについているんだ? 幾らなんでもおかしくないか? ファイレーセが長生きだというのならば分からなくもないが………』
「それが……私自身も前世でチラリと聞いた事があるのですが、私の種族名は妖魔族の女媧というそうなのです。先祖返りを起こしたらしく、遠い遠い祖先に妖魔族・女媧の方が居たと聞きました。それと私も千年以上生きるそうで……まだ18なのに」
「御嬢様……私とて27ですよ? 私達が歳をとっているかのように言うのはお止め下さい。それに、私達同士で破ったではありませんか。三人は一蓮托生です」
「そうです。御嬢様と私達。穢される前にと、お互いに処女を破ったではありませんか。私達とて清らかな乙女だったのですよ? 私もそろそろ27になりますが……心は穢れておりません」
「そういうのは横に置いといてくれる? とりあえず、貴女達に聞いても脱出方法は分からないって事ね? 私達だけなら簡単に脱出できるんだけど、その方法を使うと後が大変で使えないのよ。何かない?」
「「「………」」」
「急に言われても思いつかないんじゃないかしら? 確かに私達だけならいつでも脱出できるんだけど、アレはねー……荒技もいいところだから、できればやりたくないわ。他の方法を探すべきよ」
『なにより、この星に連れてこられてまだ1日目だ。色々探った方がいいし、何かが見つかるかもしれん。……主、どうするんだ?』
「どうもこうもないよ。こっちを襲ってくるんだったら殺す。それ以外には無いね」
そうミクが口に出すと、近くの森の中から熊が出てきた。湖の周りは森であり、その湖まで一直線に木が切られて道が作られている。そんな湖の近くの森から熊の魔物が出てきた訳だ。
「グルルルル………」
熊はあからさまにこちらを喰おうとしているのだが、一定距離から近寄ってこない。自然の環境で研ぎ澄まされたのか、後一歩の距離を理解しているらしい。その一歩を踏み込んだ瞬間、間違いなくミクに殺される。
その一歩を踏み込まず、近くをウロウロして隙を探しているのだ。シュネヘルトとホルティエンはファイレーセの前に出て守る形であるが、ミク達は暢気に地面に座ったままである。
何だか凄い対比に思えるが、普通は逆であろう。人間種が隙を窺い、魔物がどっしり構えるものだと思うが……。
そう思っていると意を決したのか、熊が一足飛びに襲おうとしてカチ上げられた。ミクが使ったのは【土柱】の魔法だ。熊の魔物の真下の地面から、突然八角形の土の柱が突き上げてきたのである。
それを喰らった熊はミク達の上を通過し、背中から地面に叩きつけられた。熊の突進力と、土の柱の突き上げる力。それの相乗効果により、大きく高く飛び上がった後に叩きつけられたのだ。
当然だが熊は地獄の苦しみを味わい、ファイレーセ達は目が点になっている。




