0341・バカな傭兵の末路
第二坑道を進みつつ、時折パンや干し肉にチーズを食べる。というか、パンに切れ込みを入れて挟んで食べているだけだ。それでも栄養補助食品のみよりマシである。何故あれで納得出来るのか分からないが、世の多くの女性はあれで納得するらしい。
まあ、あれを食べ続ける限りは太らないらしいので、女性にとっては大事なのだろう。その割にはメイリョーズもカラマントも普通の食事をしていたが。それはともかく、そんな事を考えるくらいは暇なのである。
支道を一つ一つ調べているものの、碌に魔鉄は発見できない。鉄を掘り出す気にもならないし、宝石は無理に掘る必要も無い。ミク達にとって、現状で必要なのは魔鉄だけである。装備の事を考えても必要なのだが、何故か見つからない。
レーダーみたいな物で見つけて掘られている? その割には第一坑道の行き止まりには魔鉄が大量にあったが……。何故なのかは分からないが、と考えつつ【土中探知】を使うと、支道の行き止まりに魔鉄を発見した。多少はあるので掘り出して精錬すると7キロ程度になった。
ミクのメイスを魔鉄製にするので精一杯であり、多少は残ったがそれは次にとっておく事にする。第二坑道はこれで終わりかなと思いつつ、最後の突き当りまで行くと魔鉄の塊を再び発見。掘り出そうとするも、すぐに止めるミク。
『どうしたんだ、主? この……そういう事か。仕方ない少し待つか』
ヴァルは気付いていなかったが、ミクとレイラは気付いていた。これはヴァルが悪いのではなく、役割の違いだ。ミクは全体的に、ヴァルは魔物を、レイラは人間種をメインに警戒している。だからヴァルはすぐに気付かなかったのだ。
『そこに居る奴等、何故そこで止まってるんだ? さっさと出て来い』
ヴァルが曲がり角になっている向こうに声を掛けると、少しした後でゾロゾロと10人の傭兵が現れた。中には昨日の下心満載の傭兵も居る。どうやら諦め切れなかったらしい。憐れな連中である。諦めれば生き残れたというのに。
「チッ! 気付いてやがったのか。まあ、いい。どうせお前らの後ろは行き止まりだ。俺達はここに潜って一年を超えるんでな、何処がどうなってるか記憶してるんだよ。お前達は袋の鼠って訳さ」
「まあ、この鉱山だと鼠の魔物は高値で売れるんだけどな! 唯一のまともに食える肉の魔物だから! ギャハハハハハ!!!」
「おいおい、大きな声を出すんじゃねえ。バカな奴等が近付いてくるだろうが。獲物を前に興奮してんじゃねえよ」
「そうだ。テメェの所為で、おじゃんにな……らど………」
ミク達が何もしないなんて筈はなく、既に麻痺毒を散布していたのである。効いてくるまでに多少の時間が掛かったが、それでも効かないという事はない。あっと言う間に動けなくなり、痺れている者どもに近付いて話を聞く。
まともに話せないものの、強引に脳を操って無理矢理に喋らせる。いつも通りの光景ではあるが、何度見ても不思議なものである。全員から話を聞きだしたが、唯のチンピラであり何度も同じ事をしている強姦犯罪者だった。
なので情け容赦なく殺す為、目の前でワザと裸に剥き、ミクは首から上を怪物の口にして貪り喰う。ゴリゴリボリボリという音がする光景を見て、残りの9人は漏らしながら失神した。当然気を失うなど許す筈が無い。
ヴァルとレイラが蹴り上げて無理矢理起こし、貪り食われる光景を見せる。涙を流しながら必死に助けを乞おうとするものの、痺れていて呼吸をするのが精一杯な9人。そんな者達を裸に剥いていき、今度はヴァルとレイラが首から上をバケモノの口に変える。
その光景を見て9人は一斉に悟った。獲物は自分達だったのだと、だからこいつらは顔が良くてスタイルが良いのだと。全ては自分達を貪り喰う為なのだと。力の限り大声を出そうとするも、痺れてどうにもならない残りの連中。
彼らは最後まで食われる恐怖と地獄の痛みを味わいながら死んでいった。バケモノはわざわざ死なない場所、つまり末端から喰らっていったのだ。なるべく苦しむように、なるべく痛みと恐怖を受けるように。
強姦された者達や殺された者達の溜飲が下がるように苦しめたのだ。肉塊や使い魔にとっては、肉が恐怖していようが痛みで苦しんでいようがどうでもいい。何故なら人間種の踊り食いでしかないから。所詮、彼女らにとってはその程度である。
悪人を殺して喰らえと言われている以上、ミク達は大手を振って食い荒らせるのだ。唯でさえ、この星系では秩序が半分ほど崩壊している。肉塊にとっては天国に近い場所だと言えるだろう。そんな天国によくいるバカでしかない。
ミク達は犯罪者を食い荒らした後、連中の物を整理しているとドッグタグが目に入った。虹色に塗装されている妙なドッグタグだが、この色の物は見た事が無かったので分からない。届けない訳にもいかないので仕方ないと思いつつ、行き止まりを掘って魔鉄を精錬した。
15キロほどあったので、ヴァルとレイラのメイスを魔鉄製にして終了。残りはとっておく。
普通ならメイスを魔鉄製にしても、そこまで大きな意味は無い。ただし肉塊や使い魔は別である。彼女達には自身の膂力に耐えられる武器が殆ど無い、つまり自身のパワーを全て使えないのだ。そんな彼女達にとって、魔力を流すと耐久力が上がるのは非常に重要なのである。
ヘルメットを陥没させる威力から、ヘルメットをしていても頭部を粉砕する威力まで出せるようになった。この違いは非常に大きい。普通の人間種には出せないパワーが素で出せてしまう肉塊にとっては、とてもとても大事な事なのである。その為に魔鉄製に変えているのだ。
「さて。全て終わったし、後は町に帰るだけだね。大して魔物も居なかったから儲けは少ないけど、そもそも1000万以上あるから焦る必要は無いか。ここで魔鉄に更新できたら、武器は大分楽になるね」
『そうだな。とはいえ、このペースでは近接武器だけで精一杯な可能性はある。第五坑道から第七坑道で掘る事はできないだろうし、明日と明後日でこの鉱山は終わりだ。足りないなら別の細々とした鉱山に行くべきだろう』
「魔鉄は多くても構わないわ、後で必要になった時も使えるもの。何だったら革鎧の間に挟んで防御力を上げても良いし。クーロンとかいう連中が接近戦で攻撃してきても、言い訳に使えるでしょう?」
「まあ、使えるけどね。とはいえ、余程の大人数で飽和攻撃でもされない限りは回避出来るよ。でも、あんまり回避し過ぎても怪しまれるか……。人間種の能力じゃ不可能って言われたら鬱陶しいし」
『しかしな、それまでに倒して減らせば済むし、いきなり大量の敵に襲われる事も早々あるまい。まあ、これもフラグなのかもしれんが……』
「どうかしら? 落盤の話もしたのに起きてないしね。案外、後付で言っているだけじゃないの? 何か不幸が起きてから、あんな事を言ったからだと言い出したのかもしれないわよ?」
「順序が逆って事ね。まあ、そうかもしれないけど、とりあえず入り口まで戻ってきたし、話はEF22に帰ってからにしよう。面倒なドッグタグの事もあるし」
ミクに言われ「そういえばそれがあった」と納得したヴァルとレイラを連れ、鉱山を出て魔導二輪に乗りEF22へと戻る。戻った一行はまず宿へと行って部屋をとり、その後に解体所に売りに行く。
今日の儲けは27800セムだった。昨日よりも遥かに少ないが仕方ない。その後、ブラックホークの出張所に行きドッグタグを提出すると、虹色のドッグタグは傭兵組織デスピエロの物と判明した。
中堅の傭兵組織らしいが、そこまで目立つ組織ではないそうだ。犯罪をやる傭兵なんて何処にでもいるので、デスピエロだからという事は無いらしい。やはり秩序は半分崩壊しているようだ。




