0338・EF22と第一坑道
西にあるガドムラン基地を陥としたミク達は、ブラックホークの傭兵や<ワイルドドッグ>などと別れ、現在はLO12から東に進んでいる。
別れる際にメイリョーズとカラマントから熱烈なキスをされていたヴァル。二人は離れがたいという思いをアピールしていたが、ヴァルはスルーした。
ヴァルとしては主であるミクと離れる訳もなく、離れる気も無いのだ。いつだってヴァルとレイラにとってはミクが一番なのだから。……それはともかくとして現在移動中なのは、LO12の東にあるEF22という町に行く為だ。
そこでは大きな山に穴を空けて金属資源を掘り出しているのだが、この星で最も魔物が多いらしく掘り出すのに苦労をしているらしい。山などの所有者は帝国だが、掘り出しているのは民間企業だ。そこからの依頼となる。
ミク達ほどの近接戦闘能力があれば魔物を狩る事で十二分に稼げるとの事で、この金属資源惑星CB27を離れる前に稼いでから離れる事に決めたのだ。そして現在EF22へと魔導二輪車で移動している。
EF22までは道路が敷設されているので、移動は随分楽だ。LO12から前線のベースキャンプに行くまでのような、道路も無くガタガタの道ではない。ミク達の魔導二輪は他の物と比べても速いので、思っているよりも早く到着した。
聞いていた予定では夕方前だったのだが、現在は昼前である。移動中の者を大量に追い抜かしてきたので速いのは分かってはいた。とはいえここまでとは思っておらず、驚きつつも町の前で魔導二輪から降りてアイテムバッグに仕舞う。
町のゲートにドッグタグを翳して中に入ると、ミク達はまず食堂に行く。いつも通りの7000セムの食事を食べ、その後はブラックホークの事務所へと移動。中に入り仕事内容を聞くと、事前に聞いていた通りの魔物退治だった。
魔物を倒す仕事の場合は、死骸を持ち帰ってきて売ればいいだけらしい。この町には専用の買い取り施設があり、そこへ持っていって売るだけで済むようだ。そもそも魔物退治の仕事自体が常設依頼のようなのものなので、好きに狩ってきて良いとの事。
それを聞いたミク達は明日から狩ろうという事で、今日は町中を見て回る事にした。服や小物を買い、店を冷やかしながら歩く。鉱山に近い町だからか、割と発展しているというか賑やかな町だ。
LE37もLO12も閑散とまではしていなかったが、それでも活気の無い静かな町だった。ここは労働者が多いからか家族が多く住み、子供達が外で遊んでいる町である。そういう意味では活気が見て取れ、賑やかだと思える。
武具屋を見ると、魔物と戦う為の剣や槍などが売っており、それらを吟味する傭兵が居た。ここに居る傭兵はブラックホーク以外にも居るようだが、流石に西で敵対していたクリムゾンヴァルチャーとクーロンは居ないらしい。おそらく、ではあるが。
ドッグタグが違うのだが、馬鹿正直にクリムゾンヴァルチャーやクーロンのドッグタグをしているとは限らないので、おそらく違うだろうとしか言えない。それでも争いなどは起きないので、警戒する必要は無さそうである。
武器の質は大した事が無いが、値段が異様に高い。他の星と比べても高いのだが、魔法銃という便利な武器があるから仕方ないのだろう。原始的な武器とも言えるし、魔法銃より金属なども多く使う。未だに魔法銃に使われている透明な素材がよく分からないが……。
それはともかく、とてもじゃないが質的にも買う気にならない武具は無視し、そろそろ夕方に差し掛かるので酒場に行く。労働者用の酒場の方が美味しい物を食べられそうなので移動し、適当な飲み物と食事を頼む。
「パンと肉とサラダ。最初の星と次の星、食事だけ見れば何も変わらないね。本当に発展してるのか疑問があるよ。これならヤマトの方が食事は発展してたし、美味しい物は多かった」
『言いたい事は分かるが、主。ジュディも言っていたが、ヤマトはおかしなくらい料理などが発展している国だと言っていたぞ? あそこまで拘って様々な種類のお菓子や料理を作るのは、あの星でもヤマトだけだと呆れていた』
「そうね。私も色々な所へ行ったけど、ヤマトの料理が一番美味しかったわ。といっても、大半の国で”肉”を食べていたから問題は無かったけど。それにしても、少しの間は魔物が相手だから肉は食べられないかしら?」
「さてね、そこはちょっと分からないかな? 魔物を探して何処まで潜るか分からないし、大きな坑道の他に支流となっている坑道も沢山あるそうだからねー。固められているから落盤なんかは起こらないって聞いたけど……」
『フラグというのだったか? そういう噂をしていたら起きると聞いたが、起きると思って心構えと対策をしておいた方がいいな。そうすれば事が起こっても問題あるまい。言霊というのもあるらしいしな』
「そうね。あの女神が居た以上は、そういう事は考慮しておいた方がいいと思うわ。笑って無視するには流石に大きすぎると思う。私は二人の記憶から見ただけなんだけど……」
特に周りに気になる噂なども無かったので、食事を終えたら宿に行き、今日の宿代を支払って泊まる。さっさと分体を停止して戻ろうかと思ったら、レイラが何故か求めてきたので、三人でシてから休む事に。
三人とも快楽など感じないのだが……レイラは甘えたかったのであろうか?。
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翌日、起きて食堂に移動したミク達は、普通の朝食を食べた後で東へと出発する。10分ほどで目的地の鉱山に到着。入り口のゲート横に居る警備員にドッグタグを見せ、魔物を狩りに来た事を伝える。
鉱山の中に入る許可を得て、中に入り第一坑道へと歩いて行く。ちなみに現在採掘が行われているのは、奥の第五坑道から第七坑道だそうだ。第一坑道から第四坑道は既に採掘が行われていないらしい。
中で誰も見ていないなら、中にある金属は採り放題だといえる。特に第一坑道は傭兵の数も少なく、狙い目であると言えるだろう。魔道具に頼らなきゃいけない採掘者と違い、ミクは魔法で探索が可能である。
【土中探知】という【土魔法】があり、これで調べる事が出来るのだ。ついでに地中の魔物の位置も把握できるが、代わりにこちらの位置までバレてしまう。魔物を狩るには都合がいいが、魔物を避けたい場合は使わない方がいい魔法だ。
魔力をソナーみたいに地中に放つ魔法であり、跳ね返ってくる魔力波で鉱物などを知る事が出来る。なので、どんな波がどんな鉱物なのかの知識がないと、役に立たない魔法でしかない。そしてミクはその知識が無い。
にも関わらず気にせず使うのは、今から知ればいいだけだからだ。なのでミクは楽観視していた。だからこそ、現在魔物に襲われているのである。自業自得であろう。
「いやー、まさかこんなに沢山の魔物が居るなんて思っても見なかったよ。ある意味で都合が良いね! さっさとブチ殺して色々探そうか!!」
『主……地中に居た魔物が一斉に襲い掛かってきているし、その言い草もどうかと思うぞ? 大して強くないうえ、メイスで簡単に潰せるからいいが……』
「本当。ここまで一気に出てくると却って楽なのかしら? それとも面倒なのかしら? ちょっと分からないわね。それにしてもムカデとかゴキブリとかが多いけど、モグラの魔物が来て食い荒らしてるのが何とも……」
そう。虫の魔物が現れるのは聞いていたのだが、モグラの魔物が虫の魔物を食うとは聞いていなかったのだ。




