0331・ワイルドドッグ救出
森へと突入し気配を調べつつ魔導レーダーを確認する。これだけで敵味方の判別は可能だ。ミク達は敵を次々に殺害しながら進む。左手に魔法銃を持ち、右手にメイスを持った状態で、走り回りながら戦闘をしている。
敵の魔法銃を【魔力盾】で弾いたり、逸らしたりしながら突っ込んでいく。遠間の敵には魔法銃を連射し、近くの敵にはメイスで殴りつける。相手もヘルメットをしているが、関係なく殴り叩きつけた。
頭部部分を守るだけのヘルメットから、フルフェイスと呼ばれる物まで、様々なヘルメットをしているが関係なくメイスを叩きつけていく。どのみち叩かれれば倒れるし、倒れた奴には魔法銃をお見舞いしている。
兜が頑丈な鉄製でも、鎧は革鎧ばっかりなのだから大した事は無い。殺すのには弱い所を狙うのが基本だ。頭部を守る為にヘルメットをしているのだろうが、魔法に対しては革鎧より役に立っていない。やはり魔法から守れるのは魔法なのだろう。
兜は保険のような物なのだろうが、メイス持ちの三人からすれば面倒な防具はヘルメットの方だ。革鎧は簡単に突破できる。それでも気にせず頭を殴り、意識が無くなったら魔法銃を胴体に連射して殺していく。
それを繰り返しつつ進み、ブラックホークの死体が増えてきたところで<ワイルドドッグ>の面々を発見した。未だ全員生き延びているらしく、敵の死体を盾にしたりして防いでいる。生き残り方を知っている連中だ。
「<ワイルドドッグ>の五人、ここから後退!! ヴァルは北、レイラは南へ! 私はこのまま西へ行く!!」
『「了解!」』
「おい! お前ら!!」
<ワイルドドッグ>が何かを言いかけたが、ミクは無視して西へと進む。敵は相変わらず魔法銃を撃ってくるだけなので、接近して次々と殺害していく。こちらに向かってくる奴もいれば、すぐに後退する奴もいる。
クリムゾンヴァルチャーとクーロンの混成だから仕方ないのだが、一定でない為に鬱陶しい。それでも逃げていく連中は無視し、迫ってくる敵だけ先に殺していく。ミクは自力で【魔力弾】を撃つ事にし、代わりに左手の武器をスティレットに変更した。
接近しながら魔法で牽制しつつ、ヘルメットを殴りつけたり、首筋の隙間にスティレットを刺し込んだりして殺しながら進む。細身の針を捻じ込まれるようなものなので、今のところ防げる防具をしている奴はいない。
次々に殺害していると、どこからか駆動音が聞こえてきた。どうやらMAS04が動いているらしい。昨夜、砲塔を破壊したので出してこないと思っていたが、いったい何に使っているのだろうか?。
気配を確認してみて驚いた。MAS04はMAS06より一割ほど小さいのだが、その機体に結構な人数が乗っているようなのだ。目視で確認していないので分からないが、おそらく魔導装甲の上に乗って魔法銃を一斉に発射しているのだろう。
こちらの的になってしまい、むしろ危険な気がするが……。そう考えながらも、目の前の敵を殺していくミク。逃げていった者も多く、こちらに向かってくる者は居なくなったようだ。
ミクは再び左手の装備を魔法銃に変えて、逃げていった敵の掃討に移る。ヴァルとレイラの気配も派手に戦っているようなので、特に気をつける事も無い。武器を握り直し、敵を追いかけていくのだった。
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森の切れ間を越えて西に直進していく。このまま行けばガドムラン星国の基地がある筈。そう思いながら走って行くと、前方から大きな【魔力弾】が飛んできた。右に回避しつつ、ミクは前に走り続けていく。
断続的に撃ってくるが、連射できる訳ではないらしく回避は楽に出来る。流石に基地だけあって堀は広く、石の壁は分厚く高い。あれはそう簡単に落とせないなと思いつつ、離れてクーロンのベースキャンプへと向かう。
突然ミクが方向を変えたからだろう、慌てて後ろから撃ってくるが全て見えている。そもそも肉塊に死角などというものは存在しないのだ。全身を視覚にする事すら可能な肉塊にとっては、後ろを見るなど振り返る必要も無い。
さっさと避けつつ、そのまま南へと走って行くのだった。後ろのガドムラン星国の者達は唖然としているようであったが。
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クーロンのベースキャンプに辿り着いたミクが見たのは、蛻のからになった場所だった。昨夜入り口を破壊したのはミク達だが、破壊されたままになっており、尚且つ人間種の気配が一切しない。
どうやらクーロンの連中はベースキャンプを放棄したようだ。もしかしたら今日襲ってきていた連中は、撤収の為の囮だったのかもしれない。そんな事を思いつつ、ミクはクリムゾンヴァルチャーのベースキャンプへと走って行く。
場合によってはクリムゾンヴァルチャーも撤収しているかもしれない。その場合はブラックホークも一旦ベースキャンプへ退くべきだろう。
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クリムゾンヴァルチャーのベースキャンプに来たが、向こうから魔法銃を撃ってくる。どうやらクリムゾンヴァルチャーは逃げていないらしい。もしかしてクリムゾンヴァルチャーの連中も囮にしたのだろうか?。
ミクは適当に魔法銃を連射しつつ敵を引きつける。ベースキャンプが襲われているとなれば、前に出ている連中も戻って来ざるを得ないだろう。それに、休んでいた連中も起こされる。色々な意味で打撃を与えられる筈だ。
適当にベースキャンプを攻撃していると、後ろから撃ってくる連中が現れた。ミクは回避しつつ一気に接近、メイスでブン殴って気絶させる。後は適当に撃ち殺すだけだ。一部仲間が殺されて怒り狂う奴が居たが、気にせず殺害していく。
流石にミク一人に勝てない事を悟ったのか、ベースキャンプの中に閉じ篭もりながら撃ってくる。ミクもこれ以上相手にしても仕方ないと思ったのか、森の中へと戻る事にした。
ヴァルとレイラにコンタクトをとると、今は倒した敵のドッグタグや装備の剥ぎ取りを行っているらしい。なのでミクも敵のドッグタグや装備を剥ぎ取りつつ後退していくのだった。
閉じ篭もっているクリムゾンヴァルチャーからは罵声が飛んでくるが、「ハゲタカはお前達だろう」と思いつつ、裸に剥いて回収し去っていくミク。それに唖然とするクリムゾンヴァルチャーの傭兵達。
立場が逆だと思うのは気のせいだろうか?。
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「こっちの方はどうだったの? 私はガドムラン星国の基地と、クーロンとクリムゾンヴァルチャーのベースキャンプに行ってたけど。それと、何で<ワイルドドッグ>がまだ残ってるの?」
「申し訳ねえがリーダーに選ばれてる以上、逃げるのは最後だ……って格好よく言いたいんだけどよ、お前さん達が押し返してくれた御蔭で逃げずに済んだ。ありがとうよ!」
「撤退となれば当然報酬が下がるからねえ。命には換えられないけど、それでも命を残して踏ん張れるなら残るさ。アンタ達が滅茶苦茶なのはよく分かったからねえ。魔法銃をかわしながら近付いてブン殴ってたしさ」
「あれは怖ろしい攻撃だった。後ろに振り向いて逃げるのも恐いものだが、それをする暇を与えず頭をフルスイングだからな。倒れた敵は失神しているようだった。その後は【魔力盾】を使えない相手を射殺して終わりだ」
「本当、あそこまで怖ろしい戦いは見た事がない。近接戦闘が出来ないわたしでも何となく分かる。彼の動きには無駄が無い。物凄く冷徹に、そして最短で殺しているのが分かる」
「とにかく話は後でだ、今はズラかるぞ。これ以上前線に居てもしょうがねえ」
バルハーマのその一言で、ミク達も含めて撤退していくのだった。




