0323・第三惑星ネオガイア終了
ミク達は陸軍本部に戻り、部屋で少しゆっくりする事にした。ミク達でさえ、あれが現実だったのかどうか定かではない程に不思議な光景であり、あの時を思い出すと寒気がした。聞いている時には違和感を持たなかったが、とんでもないプレッシャーを受けていたのが分かる。
あの時には感じさせないように神がしてくれていたのだろう。そう考えると、アレは間違いなく惑星規模の神だ。それもかなり高位の神で間違いない。ミク達はいちいちこの星の神を調べてないが、少なくともヤマトのあの神は本当に存在する神らしい。
そんな話をしているとユミが戻ってきたらしく、部屋へと入ってきた。ローネやネルの顔色が悪いので話し掛けてきたのだが、黄泉大神の名を聞いて仰天した。
「黄泉大神とはイザナミ神の事だよ。ヤマトの国というか国土を作り上げた神だと言われている三柱の神。イザナギ、イザナミ、大国主。この三柱の一柱で、イザナギ神の妻だよ」
「ふむ、それで?」
「イザナギ神とイザナミ神の間に生まれた子。ヒノカグツチの神を産み落とす際に、イザナミ神の局部が焼け爛れ死んでしまったと言われているんだ。ヒノカグツチの神は炎の神だ。イザナミ神は耐えられなかったのさ」
「神の炎で神が焼かれて死んだ。それも自らの子供の炎で……」
「その後、イザナミ神を失って怒り狂ったイザナギ神は、生まれたばかりのヒノカグツチの神を八つ裂きにして殺害。黄泉に行ってイザナミ神を取り戻そうとしたものの、イザナミ神の体には既に蛆が湧いていて、恐怖のあまりに逃げ帰ったと言われている」
「「「「『………』」」」」
「その際に黄泉と現世の境を大岩で封じたとされていて、そこで夫婦の縁は切れてしまったのさ。イザナミ神は黄泉の神より乞われ、新たに黄泉を統べる神である黄泉大神となったんだ」
「成る程ね、それで石の舞台の上で鎮魂の踊りを舞ってたのか。今やっと意味が分かったよ」
「鎮魂の踊り………。そうか、イザナミ神が鎮魂の踊りをね」
「あの神は言っていた。自分には怒りも嘆きも憎しみもよく分かると。だからこそ土蜘蛛も平氏も赤鬼も、いずれ克服出来ると言っていた。赤鬼だけがよく分からないけど、何かの歴史がある鬼なのかな?」
「さてね。鬼と言えば酒呑童子くらいしか思いつかないけど、その関係の鬼かねえ? ま、あの怨みと憎しみの武器が解放されるなら良かったよ。新たな勝利と言われても、戦争は困るしね」
「まあな。だからこそ、あの神は克服させようと思っていたのかもしれんな。あの武器達は未だヤマトに残る怨念が具現化しただけかもしれん」
ユミは話を聞いていたが、スマコンに何かが入ったのか色々と打っている。ミク達は話を終えたので昼食でも食べに行こうと思ったのだが、突然ミクが停止する。その瞬間、ローネとネルは「またか……」という顔をした。
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「それで? 私の所に来たって事は、あの星は終わりって事?」
「ああ、その通りだよ。私達もまさか、【世界】の目的があの神の願いを叶えてやる為だとは思わなかった。そのついでに色々してたみたいだけど、ミクがあの神と会うまで私達でさえ欺かれていたからね。惑星規模の神もやるものさ」
「一応次の事を伝えておかねばならんのだがな。次の宇宙には大半の物が持っていけん。アイテムバッグ程度が許可できる限界だ。大半の物は向こうで調達せよ」
「まあ、しろって言うならやるけどさ。何でそんなに制限が掛かるの? 今までそんな制限無かったじゃない」
「次にお前を向かわせる場所は、極めて大きく発展しておるのだ。惑星間の移動すら容易くやっておる場所となる。今までとは比べ物にならぬほど多くの距離を移動していく事になろう。だからこそ、お前達の持ち物の素材を見破られる」
「見破られる? それがいったい何の問題になるの?」
「その宇宙にはダンジョンが無い。魔道具としてのアイテムバッグならあるので問題ないのだが、それ以外は無いのだ。故に<鑑定板>も<人物鑑定の宝玉・一級>も置いていけ。呪いの武器もだ」
「ふーん。つまり出せないけど本体空間に置いておくのは良いんだね? うん、それならいいや。大半の物はエイジ達やユミにあげるかな。持ってても使わない物って結構多いし」
「次に飛ばすのは、とある惑星になる。そこでは戦争が行われているから、そこに傭兵として参加するように。武器を持っていくなと言った意味も分かる」
「??? ………まあ、どのみち行けば分かるからいいけどね」
「ああ、そうそう、ローネとネルに関しては一旦元の星に戻す。向こうで何やら問題が起きているようだからな。どのみち殺しても死ななくなっているので都合が良い。奴等も様々な所へ派遣して経験を積ませねばならん」
「あれらもミクに依存されては困るからな。特にローネは目に余る。喜んでおるのは<愛の神>と<混沌の神>ぐらいぞ。アレは離して少々落ち着かせた方が良い」
「まあ、そうだね。という事で、戻って色々してきな。ミクもやるべき事があるだろうしね」
まあ、多少はあるかな。とにかく要らない物はユミにあげてしまおう。
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戻ってきたミクは、スマコンを使い終わって話していたユミに欲しい物を聞く。いきなり訳の分からない事を聞かれ混乱するユミに、そろそろ次の惑星に移動する時が来た事を伝える。
「そうかい、神様が次の宇宙にねえ。寂しくなるけど、永遠に生きられる者からすればいつもの事なのかな? まあ、それはともかくとして……貰える物は容赦なく貰うよ、私は?」
笑いながら言いつつ、ホントにゴッソリと持っていくユミ。とはいえ、明らかに問題のある物は持っていくとは言わなかった。それらを選別している間に、ローネとネルに大事な事を伝えておく。
「次の場所は私とヴァルとレイラだけね。ローネとネルは元の星で何かあったらしく、そっちへ飛ばすってさ。だから装備は持ったままで大丈夫だよ。私は次の所にはアイテムバッグくらいしか持っていけないって言われたけど」
「………そうか。流石に神々の命であれば仕方ないが、いったい何が起こったと言うのだ。その問題を起こした奴を潰せば、さっさとミクに合流できそうだな。出来るだけ早く潰すか」
「……潰したら解決するとは限っていない。むしろ何かを育てろと言われる可能性すらある。気をつけた方がいい」
ユミが色々と選んだので全て渡し、娼婦の服などはゴミとして捨てて貰う。ローネ達にも渡したからか、残っているのはアイテムバッグと回復薬系、それに迷宮の手鏡と鑑定2種だけだった。……取り過ぎでは?。
ヴァルが呆れて本体に戻り、次に出て来た時には麻布の服だった。ネメアルの毛皮はローネとネルに渡したので、彼女達の防御力もこれで大丈夫だろう。すべて終わったので昼食へと行くミク達。
ちょうど東西南北上下が居たので別れの挨拶を行うとビックリしていた。しかし本当の事だと分かると、丁寧に別れの挨拶をしてくる。ミク達も丁寧に行い、昼食後、陸軍本部の演習場に行く。
ユミにエイジ達への伝言を頼み、本体が神に頼むと、ミク達の立つ場所から光の柱が立ち昇り見えなくなる。光が収まった後には、誰も居なかった。
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第三章 間引きと鎮魂編 <完>
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