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0322・黄泉




 ダンジョンの地形は今までと変わっていないのだが、採れる物が増えていたりしているのが今のダンジョンの特徴だ。かつては何も無かったダンジョンの地形に食べられる物が生えていたり、飼料に使える物が新たに出てきたりしている。


 魔物の内容も様変わりし、食べられる魔物が増えているのが特徴となる。それとボス層は無くなり魔物の居ない採取層へと変わっているのが特徴だ。より、生活に身近なダンジョンに変わったというところだろうか?。


 今のダンジョンの方が好かれているので入る者は増えたのだが、増えればその分事故もいさかいも増える。殺し合いにまでは発展しないが、それに近い争いは何度も起きた。ミクはその対策として、レイラをヤマトに戻している。


 現在も人口は減り続けている為、ミク達が無理に減らさなくても問題無い。なのでレイラはヤマトへと戻し、今はヤマト内の不穏分子を粛清中だ。この期に及んでもと言うべきか、こんな状態だから悪事を働こうとする奴が居る。


 誰であろうともレイラが処分し、本体へと送り込んで喰らう。他の国でも暗躍している者は居るそうだが、そいつらも駆逐されているらしい。ちなみにヤマトの領事や現地のヤマト人を殺害したりした国に対しては、ヤマトは一切協力しない事を公言している。


 既にやらかしているのは中華帝国と半島だ。既にこの二国とは一切の関わりを持たないと公言している為、ヤマトは軍艦を使って国民の救出を行った。船団を組んで魔物の嫌がる周波数を使えば近い国ならば問題なく航行できる。


 それでも中華帝国や半島に残るのなら、政府は一切支援しないしヤマト国民としての国籍を剥奪するとハッキリ明言した。普段はここまで強く発しない筈の政府に驚いたものの、支援を受けられなくなるのはマズいと大半の者が同意して戻っている。


 それでもバカは居るが、ヤマトに対する工作活動に加担した者は何故か全員自殺している。その裏に怒れるムカデが居たのかどうかは定かではない。ヤマト国内も綺麗になり風通しも良くなかったので、今では随分良い国になったようだ。



 「未だに私達がこのままって事は何かあるんだろうね? 何があるのかは分からないけど、一旦この星の文明は後退し多くの人間が死んだ。それでもまだ足りないって何だろうね? 目的が分からないから何とも言えないや」


 『そうだな。魔法の使い方は既に教えたし、スキルの使い方も身体強化も教えた。後は何を教える必要がある? 俺達に出来る事もするべき事も、もう終わりだろう。神に言われたのも、元々は魔法の使い方だけだぞ』


 「そうだ。にも関わらず我等のやるべき事は終わっていない。いったい何が終わっていない? 中級の魔法陣まで公開したし、ヤマトでもそうだが、魔法陣の刻まれた石板が発見されていると聞く。となると……」


 「後はこの星の者達が石板などから学んでいけばいい。つまり、私達の出る幕ではなくなりつつある。魔法の使い方以外に私達のやるべき事が残っている……? そもそも私達を飛ばすのは神々。【世界】じゃない」


 「ダメだね。神どもは何も言ってこないよ。私だって神どもといつでも話せる訳じゃないし、あいつらも困惑しているのかもしれない。【世界】が何をするか分からないから」


 「成る程。神々とて分からないから困って留め置いている、という可能性もあるのか。どのみち私達では惑星移動など不可能なのだ。必要なら100年でも200年でも待たねばならんのは変わらん」


 「流石にそろそろマズいから、一旦ジュディをブリテンの親元に戻しておいた方がいいね。急に私達が飛ばされたら、ジュディは一人で残されるから。どのみち魔力の器は三度壊してるし、もう一人でも身を守れるでしょ」


 「むう……まあ、そろそろ戻りたいとも思ってたのでいいか」



 ジュディと共に部屋に戻り、家族にビデオ通話をさせる。すぐに場所を言われたのでビデオ通話を終えると、ジュディを本体空間に入れて鳥に変化して飛んでいく。普通の鳥ではないので音速を超えて飛行し、あっと言う間に到着した。


 物影に入り体を変えて服を整えると、右腕からジュディを出して連れて行く。聞いていた家の近くに行くとジュディが飛んでいったので、ミクは周りを確認してムカデになり離脱する。誰かに会っても面倒臭いので。


 その後ジュディが家族と再会したのを見届けたら、鳥に変わってヤマトへと戻る。一日でヤマトとブリテンを往復したが、ミクにとっては容易い事であった。帰るとジト目の者達がいたが、ミクは気にしていない。


 国同士の移動も難しい中で、あっと言う間にヤマトとブリテンを往復したのがバレると色々マズい。軍などは知っているのでどうでもいいが、一般人にバレると面倒だ。なので、そこの批判をローネ達はしている。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ジュディを家族の下に送った次の日、ミク達は久しぶりに大江戸ダンジョンへと出発する。ここを攻略していなかったのを思い出し、40層以降に言ってみようとなったのだ。単なる暇潰しであるのだが、ビデオカメラで撮影する必要もない為に気楽なものである。


 <魔法の使い方講座>は基本的な事を教えるものなので、既に教えられるものは残っていない。微細な制御の仕方とか、精密に緻密に使う事の大切さとか。そういったものも既に収録してアップしてある。態々ダンジョン攻略動画も撮影しなくていいぐらいだ。


 既に多くの人がダンジョンでの戦い方や、攻略の仕方を理解している。この星のダンジョンは罠が無いので、それ関係は教えていないが些細な事だろう。今日はユミもおらず、完全にミク達だけなので一気に走って行く。


 全員体力は多いので、一気にどんどん走って行っても特に問題は無い。それよりも周りを気にしなければいけないので、ぶつからないように気を付けて走って行く。ダンジョンに入る人が増えているので衝突する可能性があるのだ。


 いきなりでは回避できないので、【気配察知】を使いながらの走りとなる。それでも速い一行は、あっさりと40層のジャングルに来た。唯この層も知っている為、魔物や素材なども気にせずに駆け抜けていく。


 一気に49層まで走り抜けたのだが、49層には魔物が居ない。つまり、このダンジョンは50層がラストという事になる。ミク達は休憩を十分にとった後、50層への赤い魔法陣へと乗った。


 50層。そこは一面のすすきが風になびく、夕焼けの光景だった。目の前にある石で出来た舞台の上で、一人の女性が踊っている。まるで全ての魂を鎮魂するかのような踊りであり、しばしミク達は見届けた。


 踊りが終わった女性は、ミク達に向き話し始める。透き通るような、それでいて何処かへ消えてしまいそうな声で。



 「ようこそ黄泉へ。私は黄泉大神よもつおおかみと言います。世界を調整する神々の使徒よ、御苦労様でした。貴女がたが集めてくれた御蔭で、この者達も鎮魂の輪の中に戻れるでしょう」



 そう女性が言うと、ミク達が持っていた武器などが浮かび上がる。<十拳の剣>、<八握の剣>、<怨嗟の鏡>、<嘆きの勾玉>、<殺意の紅太刀>、<苦悔の短刀>、<赤鬼の金棒>。それぞれの武器が浮かび女性の手元へと飛んでいった。



 「この者達の怒りも嘆きも憎しみも、私には痛いほど分かる。されど、今を生きる者には関わりない事。この者達も私と同じように、いずれ克服できましょう。私の願いもこれで叶いましたので、貴女がたには新たな命が下されると思います。ここは死した者が訪れる場所であり、貴女がたには相応しくない場所。……さようなら、そしてありがとう」



 その瞬間、ミク達は平原に飛ばされ、周りの人達がビックリしていた。飛ばされた場所は大江戸ダンジョンの1層だ。つまり戻されたという事だろう。


 不思議な光景ではあったが何となく分かる。ミク達を願ったのは彼女だと。


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