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0320・魔物化した後のネオガイア




 動物の魔物化が進んだ後のネオガイアは、そこまで混乱する事も無く落ち着きを取り戻した。それでも魔物との共存というのは熾烈を極める所もある。魔物というだけで殺そうとし、反撃で殺されるという事件も各地で起きていた。


 魔物も自然競争の中を戦っており、主に魔物と魔物の生存競争がメインである。そこに人間が乱入して殺されたリ、あるいは腹が減った魔物に襲われたりなどが発生するようになった。あくまでもその程度なのだ。


 当初、多くの国の者が思ったような大混乱は起きていない。動物が魔物に変わったとしても生存競争自体は変わらずあり、それは何時までも終わらないものである。しかし強さは様変わりした。厄介さもだ。


 虫の中には草食から雑食に変わり、人を襲うものも出始めた。かと思えば、そいつを喰う虫も現れたりと、自然の進化の一つのような形に落ち着いている。なので、表面上はそこまで変わったとは言えない。


 変わったのは海だ。多くの船が魔物と化した海洋生物に沈められており、船での行き来がパッタリと無くなってしまった。これが大混乱を引き起こし、多くの者が死ぬ原因となっている。つまり間引きのメインは魔物ではなく、燃料不足と食糧不足だったのだ。


 流石にこんな方法だとは分からず、気付いた時には手遅れであった。食料不足は魔物を狩るかダンジョンに行けば解消する。作物の栽培方法は昔の方法に戻すしかなく、各国ともに肥料が全く足りていない。


 ミクが持っていた<豊饒の箱>は既に解析し、同じ物をネルが作り出している。衛星が生きている為、ネットワークを使って各国に作成の仕方を纏めた情報を送ったが、果たしてアレだけで作れているかは疑問だ。



 「とはいえ、これ以上はどうしようもない。ダンジョン内で魔力金属を探してくるしかないし、現在の火力発電を魔石発電に切り替える技術も教えたけど……。上手くいったかは不明。空も無理だし」


 「そうだな。鳥の魔物に飛行機とやらが襲われて、既に何機墜落したか分からんほどだ。責任感も無く、自国から逃げようとしたのだから自業自得だがな。それにしても、<豊饒の箱>といいネルといい。こうなるのを見越して準備したような気もする」


 「ネルの御蔭でブリテンでも<豊饒の箱>は使われてるらしいよ。今までよりも質素になったけど、今までが飽食過ぎただけだってパパも笑ってたし。普通に生きていけているんだから問題無いって」


 「それでもインフラとやらが壊滅している国もあるがな。特に中華帝国とインディーの壊滅っぷりが酷い。インディーは坂を転がるように落ちていったし、中華帝国はアメリケンが手を引いたら何も出来なくなったからな。反乱軍が傀儡だったのがよく分かる」


 「アレは仕方ないさ。アメリケンはソフトランディングさせようとしたけど、動物の魔物化で本国がそれどころじゃなくなったんだ。おかげで助力どころじゃなくなったし、梯子を外されたのは仕方ないさ。想定の全てが引っ繰り返されたんだ。泣きたいのはアメリケンの方だろうね」


 『それなりの武器やら弾薬やらを供与していたら、それどころじゃなくなった訳だしな。供与分を回収出来ていないとなれば巨額の赤字か。本国の為にそこで損切りするしかなかったんだ、責任者は泣きたいだろう』


 「流石に動物の魔物化は誰も予想出来ないし、それに伴う食料不足などが原因で死者があれだけ増えるなんて、普通は考えつかない。もし考えつくなら、それは考えついたんじゃなくて知ってただけ」


 「まあ、そうだろうね。それはともかく、お疲れさん。ミクも言ったけど、<豊饒の箱>とネルが居てくれて本当に助かったよ。まさか海も空も使えなくなるとは思わなかった。御蔭でヤマトは再び島国に逆戻りさ。ま、悪い事じゃないけど」


 「空も海も魔物が居て、他国と戦争するって雰囲気じゃなくなったからね。この惑星の人口は現在も減ってるし、にも関わらず陸続きの所は食料と水を巡って揉めてるけどさ。それでも大規模な戦争が起きるよりはマシだよ」


 「そいつらも自分の首を絞めているとは理解しない連中だからな。ところで、ヤマトの国やミクに手を出してきていた隣の半島はどうなったんだ? 海を越えようとしている連中が多かったと思うが……」


 「隣の半島の連中は食べ物が足りないって事は無いみたいだよ。それ以上に人が減ったからだろうね。それでも海を越えようとして、海の魔物に襲われてるみたいだね。衛星を使って海軍が24時間体制で監視してるよ」


 「便利なものだ。普通なら目視で監視せねばならんところだが、衛星という物を使えば簡単に監視できるのだからな。とはいえ、それで見ていても最後は人の目に頼らねばならんが」


 「それは仕方ないさ。放っておいても監視はされているけど、二重チェックや三重チェックは必須だよ。出来るだけ取りこぼしが少なくなるようにしなきゃいけない。それに、ヤマト国内で騒ぐ連中もね」


 「下らぬ政治家は居なくなったが、市井に紛れている連中は居たな。そいつらも何故か消え去っているようだが……」



 ミクの方を見ながらローネが言うので、ミクは少し頷く。ヴァル以外の全員がそれで納得した。レイラが喰い荒らしたのか、それとも転送してミクが喰った事をだ。


 その話題はスルーし、これからの事を考える。ヤマトでも徐々にだが魔石の取り扱い方法が浸透してきたようで、クリーンエネルギーを応用する方法も生まれ始めてきている。元々の技術力の高さから、応用はそこまで難しくなかったようだ。


 ただし魔法陣を使った魔道具は、元の術者の影響を強く受ける。その為、各国では精鋭の魔法使いを育てる事が急務となっていた。そもそもヤマトから何かを送る事は出来ないし、する気も無い。


 支援したとしても、すぐに感謝など忘れられるのだ。ならば適当な理由をつけて、お茶を濁す方がいい。唯でさえミク達の事でゴチャゴチャ言われてきたのだし。


 だからこそヤマト政府は、ミク達の技術だとして彼女達にお伺いを立ててくれと言って逃げた。ミク達はミク達で、基本を教えたんだから後は自分達で頑張れとしか言わない。


 多くの国々は反発したが、そもそもヤマトとて自分達で研究しているし公表出来る物はしているのだ。それで文句を言われても困るというところである。


 そんな話を夕方の食堂でしていると、疲れた表情の中島大将がやってきて話す。



 「本当にしつこいのですよ。ヤマトは皆さんから沢山の技術供与を受けているに違いないとか、我々にもそれを寄越せと言ってくるのです。いい加減にしてもらいたいですよ、まったく。公表出来る物は全部しているというのに!」


 「まあ、我等も皆さんが出していいと仰っている物は全て出しています。それでも何か有る筈だと疑ってくるのですよ。各国の大使も言ってくるようでして、総理以下の閣僚もウンザリしているようですね」


 「気持ちは分からんでもないが、自分達で努力するのが筋であろうに。私達も基本を教えただけで、後は魔法陣と<豊饒の箱>を見せただけだろう。それとレプリカを渡したぐらいか。あれもネルが作ったからオリジナルと性能は変わらんしな」


 「そういう部分も腹立たしいところなんだろうさ。何故ヤマトだけってね。そもそも私達だって知らないし、ミク達をヤマトに送ると決めたのは神様だよ。私達は知らないし、関われないって分からないもんかねえ」


 「嫉妬は無理。何処までいっても醜い嫉妬だから、何を言っても通じない。本人達も分かっているのか、分かっていないのか……」



 嫉妬ほど厄介なものは無いが、嵐が過ぎるのを待つしかないだろう。ミク達は他人事のようにそう思うのだった。


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