0318・ミクは何事も無くヤマトへ帰還する
ミクはウロウロしつつ物影に人を連れ込んでは脳を操って聞き出す。どうやらここは中華帝国の天津という場所らしい。その天津の浜海新区というらしいが場所の名前はどうでもいい。ヤマトの領事館があるのか聞くと、どうやらあるようだ。
ヤマトの中華帝国総領事館は北京という所にあるらしいが、ここは港で中華帝国の中心都市である北京に通じる港という事で領事館が置かれていた。ただし陸地へと入った東麗区という所にあるそうだ。
とりあえず道を聞いたので解放し、再び物影に隠れて鳥の姿になるとミクは飛んで移動する。それにしても領事館とかの事を聞いていて良かった。船で運ばれたのに乗っ取ってヤマトに戻るのも不自然だし、飛んで戻るのも不自然だ。
なるべく人間と同じで変に勘繰られたりしない形で戻りたかった。まあ、船の中の黒ずくめは捕縛したが、あんなものは問題無い。ミクが強い事は動画で散々知られている。そういえば、ミクが強いのは知っている筈なのに、何故拉致など企てたのだろう? 妙な気がする。
とりあえず聞いた所っぽいので一旦下りて物影に隠れ、中華帝国人っぽい女性の姿に変わると話を聞いていく。するとここが東麗区で合っているそうなので、ヤマトの領事館の場所を聞きこむ。
脳を操っているのでペラペラと簡単に話してくれる。しかし殺すと後で困るので、聞き終わったら気絶させて解放してやった。別の建物の影に行き、ミクは元の姿へと体を戻すと領事館へと歩いていく。
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何というかアパートの一室みたいな場所だが、出張所と考えればこんなものだろうと思う。そんな領事館へと行き、領事に詳しい事を話すと頭を抱えられた。領事にもヤマトでミクが攫われた事は知らされていたが、まさか中華帝国に拉致されたとは思ってもみなかったのだ。
唯でさえ原因不明の死亡が相次いでおり、そのうえ内戦中だ。中華帝国の民衆はどちらが勝つか見守っている状況だし、原因不明の死亡は毎日ニュースになっている。既に中華帝国14億の人口は、三分の一以下まで減ったという噂もあるのだ。
そんな滅茶苦茶な中でヤマトの重要人物を拉致したなど、少なくとも経済的な報復はする必要がある。何もしないでは舐められるし、今後の国と国の関係にも悪影響が出てしまう。領事の心の中は「滅びるなら大人しく滅びろよ」という気持ちでいっぱいだった。
ミクも気持ちはよく分かるのだが、ヤマトに正式な手続きで戻ろうと思っているだけである。ダメなら魔法を使って無理矢理に戻る事も視野に入れており、その事を領事に話すと更に頭を抱えられた。ミクが魔法のエキスパートである事も思い出したらしい。
今は領事館の中で寝泊りしていてもいいので、総領事に判断を仰ぐとの事。ミクは好きにしてくれとしか思っていないので了承した。
小一時間ほど話していたのか、領事が執務室っぽい部屋から戻ってきた。話を聞くと、迂闊に外に出ない方が良いので領事館に泊まってほしい事。そして迎えの船を向かわせるが時間が掛かる事などが説明された。
中華帝国では内戦中なので、アメリケンに根回しをしておく等をしないと、ヤマトが内戦に参加すると思われては困るのだそうだ。ヤマト政府としては一貫して、大陸の国には関わらない。領地を得ないで一致しているらしい。
なので、ミクはしばらく領事館に厄介になる事になった。
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あれから一週間。中華帝国の国家主席が地下基地にて家族と心中していた事が発覚した。家族を射殺した後、自分の頭を撃って死亡していたらしい。国家主席側が投降した事で発覚したようだ。追いつめられた末の自殺、それで片付けられた。
実際には何処かの怒れるムカデが洗脳して無理矢理やらせたのだが、それを知る者はムカデ以外に二名しかいない。そのムカデはもう一つ大量の国民がいる国へと移動していった。向こうは階級制度が酷いらしく、根本的に数を減らさないと駄目だとの事。
おそらく相当数の人が減らないと階級の呪縛から解放される事は無いとの事。神でさえ、そこまで言うほど酷いようだ。ミクとしてはレイラが肉を大量に送ってきてくれるだろうという事で、非常に上機嫌である。分かりやすい。
今日は浜海新区に行き、ヤマトから入港した船に乗って帰るだけである。レイラは忘れた頃に毒を撒きに戻ってくるらしい。どうも神どもは減らし足りないと思っているようで、更に減らすのだそうだ。
惑星単位で考えても、この星の人間は数が多すぎるようである。ヤマトも多いが、あの国土から溢れるほどには多くない。中華帝国ともう一国は星として見ても数が多すぎるらしく、適切な人数まで減らさないと星の事を考えても危険なのだそうだ。
ミクの本体は「ふーん」と言いつつも、話をまともに聞く事はなかった。そもそも自分が考える事ではないし、神がここまで減らせと言えば、そこまで”喰える”と解釈するだけである。肉塊とは徹頭徹尾そういう存在だ。
ミクはヤマトから来ていた船に乗り、多少過ごした中華帝国を離れる。「雑多な国だなー」というイメージしか持てなかったが、確かに見下し的なものは感じた。やはり他民族に対する根源的な見下しはあるらしい。
バカバカしいと思いながら、ミクは中華の大地に背中を向け船の中に入るのだった。
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中華帝国を離れて二日で東京に帰ってきた。特に可も無く不可も無く、船に揺られていただけの二日。何かある訳もなく、すんなりとヤマトに戻ってこれた。波乱があっても良かったが、それはそれで面倒臭かったので無くてもいいだろう。
こういう衛星などから監視されている星は色々な事がやりにくい。前の星なら簡単に喰いに出かけられたのに、この星では結構な制限を受ける。その為にレイラを作り出したのだが、それでもなお手が足りていない。
無差別に大量に使い魔を生み出す気も無いが、どうにか出来ないものであろうか? そんな事をここ数日考えている。ハッキリと言えば中華帝国で色々調べたが、あの国は思っていた以上に大きい。当たり前ではあるが、それだけ減らすのに時間が掛かるのだ。
おそらく次の国でも水源に毒を撒くのだろうが、警戒されたら減らせないかもしれない。そうすると地道に減らしていく事になるのだ。あくまでも神の命令ではあるが、それでも達成しないと五月蝿いだろう。
事を行うならなるべく楽に、簡単に行いたいのが本音だ。そこは肉塊も人間種も変わらない。そんな事を考えていると陸軍本部に着いたらしく、車が本部に入っていく。
中島大将を始め、色々な人に話を聞かれるだろう。話すべき事を整理していくミク。とはいえ、軍なら殆どの事を知っているのだろうが。
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「やはり、こちらで確認した通りですか。あそこの国家主席が倒れて負けたとなれば、良くも悪くも今までの膿が出てくるのでしょう。あの国は一度、確実に国家破綻をしますな。そもそも無理矢理に粉飾して隠しておっただけですし」
「数字上だけ素晴らしいと誤魔化して、色々な所が腐敗していた国か。色々と聞いたが、あそこにある国は古い時代から変わっていないらしい。賄賂と悪事の国。ほぼ毎回そういう国が出来上がるそうだ。ユミが”民は変わらない”と言う筈だな」
「アメリケンもよく手を出そうとするなと思います。あの国も知らぬ筈は無いのですがな。余程の自信があるのか、それとも甘く見ておるのか……。ま、我が国には関わりの無い事です」
そう締め括った中島大将。ミクが伝える事も終わったので、いつもの部屋に戻って休む事に。実際には休むのではなくて、情報の擦り合わせをする。
ミクも居なかった間のヤマトの事は分かっていないのだ。




