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0312・奈良ダンジョン終了


 0312・奈良ダンジョン終了



 草を食んでいる鹿が顔を上げてこっちを見てきた。すると鹿の周りに風が巻き起こり、物凄い速さで突っ込んで来る。慌てて避けたものの、鹿は遠くまで行った後で反転して再び襲ってきた。


 ヴァルが進路上にバルディッシュを水平に構えると、綺麗にジャンプして越えられる始末だ。鹿は当然ジャンプするが、それにしても非常に速く走るうえに反応も速いとは……。



 『厄介極まりないな、あの鹿。差し詰めウィンドディアー、もしくはストームディアーといったところか……。さて、どうやって倒すかな?』


 「一気に接近してぶった切るのが一番速いのではないか? 誰かが狙われるのだから、それ以外の者が攻撃すればいい。それしかあるまい」



 再び反転して襲ってきた鹿だが、先ほどの話を聞いていたかの如く、途中でターゲットを切り替える。ヴァルの方に向かっていたのだが、突然ローネに方向を変えたのだ。慌てて横っ飛びで回避するも、鹿の態度に怒るローネ。



 「絶対に態とだろう、キサマ!! 先ほどの私達の会話を聞いて理解している筈だぞ!!」


 『このまま馬鹿な事をしていても仕方ない。俺が弓を使う。ならば俺を狙ってくるだろう。来なければ撃ち込むだけだ』



 <剣王竜の弓>を取り出したヴァルはさっさと矢を番えて待つ。当然ながらそれを見た鹿は、猛烈な速さで逃走する。………途中で立ち止まり、こちらを見た後で反転して何処かへ行った。



 「あんの、クソ鹿め!! ヴァルが弓を持った途端アレか! 嫌がらせの如く攻めて来ていた癖に、弓では殺されるので逃走するとは。ここの鹿は嫌がらせのみか?」



 悪態を吐きながらも先へと進んで行く。ヴァルが弓を持っているのだが分かるのだろう、どの鹿もこちらに喧嘩を売ってくる事は無いようだ。それならそれで楽なので、ローネの溜飲も下がったらしい。


 そのまま進んで行き39層のボス部屋前。間違いなく最後のボス層であり、その前で最後の休憩を行うミク達。お菓子を食べたりしながら英気を養っていると、ヴァルが祭器を全て取り出した。



 『そういえば、外に出して吸収させなければいけないのを忘れていた。まあ、町中では銃刀法とかいうのがあって出せんから、ホテル内とかバス内だけだが……』



 魔力を篭めるとヴァルの周りを浮き始める。そこまで魔力を篭める必要はなく、浮かんでいる維持の魔力は微々たるものみたいだ、ヴァルはその状態で弓を持ったままである。40層ならばともかく、39層では弓も使えるだろう。


 皆も十分に休めたようなので、全て片付けて準備をしたら39層のボス部屋に入っていく。入り口が閉まり、中から現れたのはアークオークだった。女を見ると即座に反応したが、それは「ピクッ」と動いただけでそれ以上は動いていない。


 身長が2メートルを超えており、更には筋骨隆々なオークが目の前に居るが、ヴァルは即座に矢を放つ。その矢を回避したオークに対し、ヴァルは弓を仕舞って突撃。宙に浮いている<八握の剣>を取ると、抜き放ちながらも同時に攻撃する。


 オークは手に持っている棍棒で防ごうとし、腕ごと切り裂かれた。ヴァルの斬撃は脇腹で止まったが、すぐにバックステップで後ろに飛ぶと、ヴァルの後ろからローネが攻撃する。


 右手には<殺意の紅太刀>、左手には<苦悔の短刀>を持っているローネは、右手で太刀を袈裟に振り抜く。身体強化も込みで放たれた斬撃は、綺麗にアークオークの左腕を切断し「ドサッ」と地面に落とす。


 絶叫を上げるアークオークに対し、バックステップで離れたローネの左からネルが襲う。<赤鬼の金棒>で右足の脛を思いっきり殴りつけるネル。「ドゴッ!!」という音と共にアークオークの右足が折れた。


 三人の連携攻撃により、アークオークは既に虫の息である。まさかここまで綺麗にやられるとは思っていなかったであろう。最後は<八握の剣>が首に刺さり、<殺意の紅太刀>で腹を裂かれ、<赤鬼の金棒>で頭を叩き潰されて死んだアークオーク。


 憐れと言うしかない死に様であるが、敵に容赦をする愚か者はいない。確実に息の根を止めておかなければ自分が死ぬ。それが分かっているからこその苛烈な攻撃の連続なのだ。


 赤青の魔法陣とバッグが出たので、ミクが拾って先へと進む。今回出てきたバッグは非常に分かりやすいものだった。十中八九アイテムバッグだろう。一行は赤い魔法陣に乗り、40層へと踏み込む。


 そこは町中のような場所ではあるものの、何やら古臭い建物などが多い。そんな建物を見ていると、突然目の前の家から火の手が上がった。そして中から鬼のような形相をした男が出てくる。


 その男は何やら古臭いヤマトの剣を振り回し「皇子め! 皇子め!」と叫んでいる。こちらを見つけたのか即座に向かってきたが、ミクが前に出て戦う。左手でビデオカメラを持ち、右手で巨人の剣を持ちながら戦うミク。


 相手をバカにしたような戦い方だが、相手の剣を綺麗に流して此方の攻撃を直撃させる。その戦いはビデオカメラを持ったままなのにも関わらず、非常に優雅な動きのままに推移していく。流していなし、反撃で切りつける。


 切れ味の良くない巨人の剣であるにも関わらず、周りから見ていると怖ろしく優雅な動きにしか見えない。そんな戦いも決着が着き、ミクは鬼の形相の人物の首を刎ねた。その後、生首は宙に浮かび「中臣め!」と言うと消え去った。


 その一言で納得したのだろう、何やらユミは頷いている。目の前に青い魔法陣と剣が落ちていたので拾う。それにしても刀ではなく剣なので、先ほどの鬼の形相の者も古い者なのであろうか?。


 ミクが剣を手に持つと、何の問題も無く拾えたので青い魔法陣で脱出する。この剣はいったい誰の怨念なのだろうか?。


 外に出ると夕日が沈みかけていたのでホテルに直行し、食事をした後で部屋へと戻る。ジュディがいつも通りビデオ通話をしている横で、ミクは鑑定を行っていく。といっても一つは予想がつくが。



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 <アイテムバッグ>


 容量は普通のアイテムバッグ。可も無く不可も無い。平均的な容量と大きさのバッグであり、実は一番出回らないタイプである。故に性能が微妙なのにも関わらず希少だという、不可思議な鞄。ダンジョン産。



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 <十拳の剣>


 ヤマトの古い時代において貴人が使っていた剣。拳十個分の剣身を持つ剣であり、故に十拳とつかつるぎと呼ばれる。暗殺された人物が所持していたらしく、その怨みと憎しみの影響で非常に頑丈であり切れ味は鋭い。とある氏族の怨念と憎悪を集める程に剣は強化される。材質は不明。


 <蘇我入鹿>を打ち倒した<喰らう者>専用であり、他の者は使えない。ダンジョン産。


 我は我の思いと共にヤマトを良くしようとしたのだ。それを暗殺で潰すなど、まともな者のする事ではない。それが皇子のする事か!!。



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 「「「………」」」


 「やはり蘇我入鹿そがのいるかか……。大化の改新の初期、乙巳の変で暗殺された人物だ。暗殺したのは中大兄皇子と中臣鎌足だと言われているね。蘇我氏は専横をしていたと昔は言われていたけども、現代では開明派だっただけだとも言われているよ」


 『要するに国を良くしようとしていた者を暗殺した訳か? 皇子が?』


 「そうだけど、蘇我入鹿そがのいるか山背大兄王やましろのおおえのおうを殺害し、一族は首を括って自害したと言われてる。果たして自害したのか、それとも無理矢理させたのかは分かってないけど」


 「権力者同士の争いか。と言っても、暗殺されたというなら怨みや憎しみも分からんではない」


 「蘇我入鹿そがのいるかが暗殺された後、父親の蘇我蝦夷そがのえみしも家に火を放って首を括って自害したと言われてる。でも蘇我本家の一族は、その後皆殺しにされてるんだよ。怨みも分からなくはない」



 権力者同士色々と言い分はあるのであろうが、怨みや憎しみを残されても……という気はするミクであった。


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