表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
316/500

0311・奈良ダンジョン攻略の続き




 20層のボス部屋。一行は何が登場するか分からない為、油断せずに待つ。待っているものの登場しない……訳ではなく、既に登場していた。



 「チッ! 下京ダンジョンでも同じ様な事があったぞ! 【高位聖化グレーターホーリー】!!」


 「「GYAーーーー!!!」」



 20層のボスはどうやらレイスらしい。それもハイレイスとグレーターレイスの複合という厄介仕様であった。それも今までと比べてボスの数が多い。ハイレイスが15体、グレーターレイスが5体いるらしい。



 「面倒なボス戦。明らかに魔法が使えないと、それも聖化ホーリー系魔法が使えないと突破が難しい。【高位聖化グレーターホーリー】!! グレーターレイスは通常の魔法で倒すのは難しい。少なくとも弱体化させないと無理」


 「【上位聖化ハイホーリー】! 【上位聖化ハイホーリー】!! 【上位聖化ハイホーリー】!!! ……一体倒せないんだけど、あれがグレーターレイスなの? これで、消えて! 【魔力槍マジックランス】!!」


 「魔力をあんまり使い過ぎないようにね。ジュディは魔力が無くなると戦えなくなるから。【上位聖化ハイホーリー】!!」


 『そろそろいいか。皆もある程度は放ったようだしな。……【超位聖化アークホーリー】!!』



 ヴァルの一撃で、あっさりと消し飛ぶレイス達。一斉にヴァルをジト目で見るものの、ああいう戦いも練習だと言わんばかりにスルーするヴァル。ミクもそうだが、こういう時に練習させるのが肉塊と使い魔である。



 「で、上手くいった? 上手くいかなかったのなら自分で反省と改善をするようにね。じゃないと上手くならないよ」


 「むー……最初からヴァルが【超位聖化アークホーリー】を使って終わらせていれば良かったのでは? もちろん私の練習というのは分かりますけど……」


 「まあ、ジュディだけじゃないけどね。長く生きると忘れる事も多いし、思い出さなきゃいけない事もある。全員と言った方が良いんじゃないかな。私とヴァルは除外するけど」



 再びジト目を向けるも、欠片も効いていない肉塊と使い魔。他の面々は溜息を吐いて流し、21層を進んで行く。だが、奈良ダンジョンの本番はここからだった。



 「で、21層なのだがな、同じ山の地形とはいえ今までと明らかに違うぞ。というより、何故山火事が起きているのだ? コックローチを燃やした訳でもないのにだ」


 「こういう地形なんだろうけど、予想以上に煙たい。息がし辛いし、これは予想以上に厄介かも。だいたい山火事の地形なんて初めて」


 「私も初めてだけど、おかしな地形だというのは確か。地形で殺しに来てるのかと思うけども、どうもそれだけじゃない……ね!!」



 ミクは地面にあった石を拾って投擲。凄まじい速さで投げられた石は何かに直撃し、「ドゴッ!」という音と「グェッ!!」という音を響かせる。その後、少したって「ドサッ」という音がしたので近付くと、嘴が鋭い鷹が死んでいた。



 「こいつが急降下してくる訳か? この層から急にこちらを殺しにきているが、今までのは意図的としか思えんな。19層までは楽にしてあり、その分の難易度を21層以降に振り分けている感じか」


 「そう考えるのが妥当。正直に言って煙が広がっているこの状況じゃ、上空の確認は難しい。上から降ってこられて頭に直撃したら、死ぬ可能性が高く極めて危険」


 「となると、素早く移動するのが一番いいね」



 今までは歩いていたが、全員の意見が一致すると一気に走って行く。ミクが右手でジュディを抱えており、走り抜けて次々と赤い魔法陣に乗って進む。進めども進めども山火事で、結局30層のボス部屋までノンストップで走り続けた。


 今はユミが疲労困憊である。とはいえ17層からはヴァルが背負っていたのだが、それでも体力は大幅に減ったらしい。これなら最初からヴァルが背負っていた方が良かっただろうか?。


 食事休憩を長くとるしかないなと思いつつ、ユミの回復待ちに昼食をとる一行。ユミには落ち着いてから、<精力剤>と<天生快癒薬>を飲ませよう。



 「い、今……。今、くれないかい……」



 かすれたような声で頼んでくるので、<精力剤>を入れて渡す。コップに半分ほど入っていたのだが一気に飲み干したので、次に<天生快癒薬>をコップに半分ほど入れてやった。今度はゆっくり飲んでいるが、喉が渇いていたんだろうか?。



 「そうじゃないけど、それに近いかもね。いや、回復したよ、ありがとう。それにしても煙の中を走るのって大変だよ本当。煙で咳が出るうえ、走るから呼吸の回数が増えるしね。シャレにならない地形だよ全く」


 「そもそも山火事など普通の地形ではないしな。よくもまあ、あんな地形を作るものだと思う。ダンジョン内を作り変えてほしい気分だ。幾らなんでもアレは無い」


 「言いたい事はよく分かる。確かにアレは今までに比べてもおかしいし、下京ダンジョン以上に地形で殺しに来てる。コレ以降もああいう地形だと思った方がいい。むしろ、あれ以上だと思う」



 ボス戦を前にして、ボスよりも次の地形の心配をする一行。それも仕方がないと思える程に酷かったのは事実だが、それにしても少しはボスの事を考えてほしいものである。少々可哀想になってくるのは気のせいであろうか?。


 食事をとり、十分に英気を養った一行は準備を整え、ボス部屋の中へと入っていく。中に入って現れたのは、グレーターチャージラクーン10体にグレーターファイアラビット10体だった。


 一行が構えた途端、グレーターファイアラビットはグレーターチャージラクーンに【猛火弾】を放つ。するとグレーターチャージラクーンの背中は燃え上がり、それと共に突っ込んで来た。



 「カチカチ山か!!!」



 ユミがツッコむが誰も理解出来ないのでスルーされた。背中が燃え上がりながらも突っ込んでくるグレーターチャージラクーンに対し、ヴァルとローネとネルが迎え撃つ。ユミとジュディは後ろで待機し、ミクがその前に出て守る布陣だ。


 一気に10体が突っ込んで来る為、思っている以上に危険なボスである。更に言えば、体当たりは攻防一体とも言え、急所は防ぐ形で突っ込んで来るのだ。ミク達だからこそ関係なく切り裂いて倒しているが、一般の者では体当たりで殺されかねない。


 ジュディとユミが後ろのグレーターファイアラビットを牽制しているが、殆どのボスの魔法はミクの【魔力衝波マジックウェーブ】で逸らされているので当たらない。


 そうしている内にグレーターチャージラクーンの始末が終わったのか、グレーターファイアラビットに向かう前衛三人。後は適当に牽制していれば終わるだろう。と思ったら、意外にも【猛火弾】を連射されて近寄れない。


 止むを得ずミクが【烈風弾】を乱射している間に突撃、次々と切り殺してカチ割っていく。一度近づければこちらのものであり、前衛三人が蹂躙して終了した。グレータークラスが総勢20体というのは、まともに攻略させる気が無いのではなかろうか?。


 浅い層は簡単だったものの20層以降の難しさを考えると、果たして本当に難易度としてつり合っているのか、はなはだ疑問なユミ。その疑問を直接口に出してみると……。



 「言いたい事は分かる。このダンジョンは特におかしい。難易度として合っていないと思うのは当然だけど、そもそも【世界】が作ったダンジョンだから私達にも神々にも分からない」


 「うむ。そもそも難易度というものを考えていない恐れはあるし、ここのアーククラスは弱いのかもしれん。下京のダンジョンも、最後はアーククレイジーモンキーだったしな。あれもアーククラスとしては弱い」


 「成る程。アーククラスが弱いと、グレータークラスのボスで帳尻を合わせる場合もある……と。厄介だねえ」


 『厄介でないダンジョンなど無いだろう』


 「……ふふ。確かにそうだね」



 その厄介なダンジョンの31層は草原であり、鹿が草を食べている牧歌的な光景だった。その景色を見ながら気を引き締める一行。それは正解である。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ