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0307・下京ダンジョン攻略開始




 翌日。ホテルで朝食を食べた後、今度は京都に移動する。ユミが言うには京都以前の都は奈良にあったらしく、そちらも歴史が古いらしい。京都の帰りでいいだろうと思っていたらしく、それで今まで言わなかったそうだ。


 まあ順番自体はある意味どうでもいいので、何がしかのいわくがありそうな所を重点的に回りたいところだ。過去のヤマトに関する物が手に入る可能性があり、しかもそれが強力な物なので集めたい。


 本人認証されるので使いにくいものの、代わりに奪われる可能性も低いと考えれば優秀な武器だ。そんな話をしながらバスで移動していると、勉強に苦しむジュディが見えた。ビデオ通話で教師から習っているが、「うんうん」と唸っている。


 そんな光景を見ながら移動中の景色を眺めていると、後ろの車が蛇行したり大きな音を出して邪魔を始めた。確かクラクションとかいうヤツだな、とミクが思っていると、更に蛇行したり追い抜いたりしようとしてくる。これはもしや……。


 運転手が「煽り運転ですので大丈夫です」と声を掛けてきたが、「あれが動画で見た煽り運転かー」とミクは地味に関心していた。車という物を使って相手に喧嘩を売るのが煽り運転である。そう勝手に解釈していたミクは、追い越そうとした車を滑らせる。


 狭い道だったのだが、滑らせた車は近くの電柱に正面からぶつかり止まったようだ。その事故のすぐ後に皆がミクを見るが、ミクは窓の外を見てスルーする。喧嘩を売ってきたのだから、反撃されるのは当たり前であろう。


 そういう雰囲気を出していたら、周りの全員から溜息を吐かれた。反転出来る所で反転し、先ほどの事故現場へと移動する。ミクが何故かと聞くと、警察などに事故の説明をしなければいけないからだとユミが言う。つまり事故らせた方が面倒臭いのだ。


 今さらながらにそれに気付き、己の浅はかさに若干凹むミクだった。幸い近くの人が警察に連絡を入れており、現場に到着した警察官に事情を説明した後、車の前後に付いている車載カメラの映像を確認。煽り運転で事故を起こしたと認定されたので、すぐに解放された。


 動画データを提出しなきゃいけないみたいだが、そういうのはスタッフがやってくれるのでミクは大人しく座っていた。やらかすと余計に面倒な事になるので、もうちょっと上手くやる必要がある。その方法を色々と考えるミク。


 喧嘩を売られた以上、反撃しない何て事はあり得ない。なので反撃はするのだが、自分達は関わりの無いように反撃しなくてはいけない。その方法を目を瞑って考えるミクと、そのミクに対してジト目を向ける周りの全員。


 そんな奇妙な雰囲気のバスは、時間を無駄に使ったものの京都へと入る。そのまま移動していき、京都府京都市下京区。ここにダンジョンがあるので、近くのホテルに泊まる。いちいち面倒な事もあったが、今日中に着いてよかった。


 ホテル内で食事をしている最中に事故の話をすると、再び皆から一斉にジト目を受ける。



 「ミクが反撃するのも分からなくはない。こちらを舐めているからこそ、あのような下らない事をするのだからな。とはいえ、ミクが反撃した所為で無駄な時間を喰ったのは間違い無い。鬱陶しかったのは分かる、私も鬱陶しいと思ったからな。とはいえ……」


 「余計な面倒になったのは、いただけない。ミクも分かっているだろうけど、もっと上手く出来た筈。今回の事は反省してもらわないといけない。色々な方法がとれる筈のミクが、何故あんな安易な方法を使ったのか」


 「そこまで安易かな? 相手が追い越しをしようとした瞬間を狙ってのものだよ。おかしな運転をしていた奴だし、ハンドル操作を誤っても仕方ないという言い訳が出来る形での事故だった筈。狭い道路だったし」


 「それはそうだし、言いたい事も分かるんだけど、もうちょっと離れた所で事故を起こしてほしかったね。そうすればこちらは関わらないで済んだんだし。とはいえ煽り運転の奴が絡んでくる以上は、簡単には離れないだろうけどさ」


 「それでも離れるまで待つべきだったと思うよ? ああいう馬鹿なのは離れていった後に、事故に遭わせてやるべきだよ。散々煽ってやらかした後に潰せばいいってこと!」


 「成る程。あえて煽り運転を散々やらせた後で、事故を装って潰した方が落ち込むか。上げてから落とすってヤツだね」


 「そうそう」



 ちょっと違うのだが、ミクがそれで納得したのならそれでいいのだろう。周囲としては、こちらが面倒に巻き込まれないならいいのだ。そもそも誰も「やるな」と言っていないのが答えである。反撃するなと言っているのではなく、上手くやれと言っているだけだ。


 かつて記者に追いかけられた時は上手くやったというのに、今回に限っては安直な方法をとっている。周囲の皆は、そこに対して苦言を呈しているだけなのだ。それもそれでどうなんだろうという気はするが、この場の者は誰もそう思わないらしい。


 ジュディがビデオ通話を終わらせた後に寝かせ、その後はローネ達を十二分に満足させてから寝かせていき、終わったら分体を停止した。


 ジュディを寝かせるのは、音魔法の【快眠波】を使用している。対象を眠らせる魔法だが、眠気を感じている人にしか効かないという使いどころが限られる魔法だ。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 翌日。ホテル内で食事を終えたミク達は、下京ダンジョンへと向かう。隣にある軍の簡易建物に行き、許可証を見せたら魔法陣へ。慣れた感覚と共に1層へと突入した。


 目の前に見えるのは鬱蒼と生い茂る葦だ。攻略者が動画を上げていたが、下京ダンジョンの1層~9層はこの葦地獄となっている。払っていっても次の日には再生しているので諦めたそうだ。払っても無駄だと。


 その葦地獄に出てくるのは、ホワイトクロウとゴブリンである。そこまで葦が長くないのでゴブリンの姿は見えるものの、上からホワイトクロウが石を落としてくるのだ。これが地味に鬱陶しい。


 目の前のゴブリンと戦っていると、上から石を落とされてそれに当たり、痛みに気が逸れた瞬間に殴られたり噛み付かれたりする。特に噛み付きは怖く、病原菌が体内に入る事もあり得るので、地味に厄介な連携である。


 上に気を付ければ回避出来るのと、人数を掛ければそこまで強くもないので突破は容易い。ただし、1~9層では何も売れる物が無い。葦を使った伝統工芸品があっても、それだけでは殆ど売れないのだ。結局、通過するだけの層である。


 そしてあっさりと到達した10層。休憩も無く進んだが、中から現れたのはハイクレイジーモンキー五体。下京ダンジョンが好かれない理由はコイツだ。これがボスで出てくるダンジョンが好かれる筈が無い。


 ヤマトの男色趣味は公卿や公家という昔の権力者から始まったらしいので、この下京ダンジョンで出る事そのものは間違っていないとは思う。思うが、最初がコレでは敬遠されても仕方ない。



 「「「「「ウホゥッ!? ウホッ!! ウホッ!! ウホーーーーーッ!!!!!」」」」」



 ヴァルが好みだったのか、一斉にヴァルに突撃するハイクレイジーモンキー五体。横からローネが切り裂き、ネルが金棒で殴り殺し、ユミが薙刀で断ち割り、ジュディが魔法で穴だらけにし、ミクが股間を蹴り上げる。


 一体だけ股間を押さえて悶絶している奴が居るが、それは知った事では無い。獲物の数を稼ぐ為、ネルが頭をカチ割って終了。11層へと転移されていく。


 雑に倒されたが、あれは良かったのだろうか? 欲望に忠実な連中ではあるが、あの殺され方は同情する者が出そうではある。


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