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0030・<大森林>と自然の掟




 カレンへの報告を終えた翌日。朝食時にカレンからアイテムバッグを渡され、それを持って<魔境>へと出かけるミクとヴァル。ここはロンダ王国の南西に位置するが、それよりも更に南西から南にかけて<魔境>が広がっている。


 そこへと走るのだが、荷車も無く周囲も気にしなくていい為、非常に快適な旅路だった。それは<大森林>へと入っても衰える事は無く、ひたすらに突き進む。アイテムバッグは肉を通して本体の空間にあるので、壊れる心配は無い。


 そのまま進んで行き、途中で出てきた魔物を貪り喰うミクとヴァル。途中からはミクもヴァルから降りて狩りをしている。一度食べた物の中でも、高く査定される獲物はアイテムバッグに入れるが、それ以外は喰っていく。


 勿論ミクも全滅させるほど喰らう訳ではない。流石にそれでは魔物が居なくなってしまう為、ほどほどの量を食べているだけだ。確かに人間種が見ても、そこまで多いと思う量ではなかった。


 そんな時、【気配察知】に多くの魔物の反応がある場所をミクは見つける。


 その場所へヴァルと共に近付いてみると、そこはオークの集落のような場所だった。集落と言っても建物がある訳ではなく、開けた所にオークが大量に住んでいるだけである。そして、そんな集落の真ん中でオーガの雌が犯されていた。


 既に意識が無いのかされるがままにされており、表情からは何も窺う事は出来ない。その近くには人間種の女冒険者の姿もあった。こちらも既に自我が無いのか目が虚ろで、壊れた表情をしているだけだ。


 そんな凄惨な現場を見たミクは、オークを「美味しそう」としか思っておらず、女性達への同情など欠片も無かった。


 まあ、肉塊からすれば、生存競争に負けた者達でしかない。弱肉強食は<喰らう者>の本質でもある。だからこそ、これからオークどもも喰われるのだが……。


 ミクはヴァルと共に作戦を練る。最初から<暴食形態>だと絶対に逃げられてしまう。逃げられないようにする為には、女の姿で戦う必要があった。ミクもオークの生態は聞いている。なので、それを利用するのだ。



 『主、俺は女の姿の方が良いな? 聞いているオークどもの生態だと、女の姿があれば逃げまい』


 『そうだね。全部喰う為にも、一匹も逃がしちゃいけない。カレンもオークを見つけたら、確実に殺しておいてくれって言ってたしね。ついでに被害者も喰っておいてくれとも』


 『悲しい事だが、死体が弄ばれるのも良くないしな。火葬にするか主が喰うか。俺としては主の一部になれる方がマシだと思うがね』


 『私としては、食べて良いなら食べるだけ。そして神どもは問題無いと言っている。なら喰うのは当然だよ。私は<喰らう者>だからね』



 そんな話の後、二人は頷き合って準備を始める。ミクは武器の確認をし、ヴァルは一旦本体に戻った。


 ヴァルも女性の姿になり、その姿は洞窟で喰った娼婦である。ヴァルが持つのは大きな長柄斧、いわゆるバルディッシュと呼ばれる物だ。ヴァルも人外パワーを持つ為、小回りの利く武器よりも一転突破の武器を持つ事にした。


 ワイルド系のイケメンである、ミクの男性型の姿が多いので、その姿によく似合っているのだ。他にもウォーハンマーと弓は作ってある。弓に関しては当初、木を適当に引っこ抜いて【錬金術】と【錬成術】で無理矢理でっちあげたりしていた。


 それを作っている際に狩猟の神が来て一悶着あったのだが、それは割愛する。色々あったものの、最終的に弦は細くした触手に決まった。人外パワーに耐えられる弦が無いのだからしょうがない。ちなみに弓本体は鋼で作ったが、それでも全力には耐えられなかった。


 準備を整えた二人は素早く森から吶喊し、オークを強襲していく。ミクは右手のメイスと左手の鉈で、オークの頭をカチ割りながら進む。ヴァルはバルディッシュを振り回し、腹に叩きつけたり、脳天に振り下ろしたりしている。


 多くのオークが殺されているものの、目の前に女が居る以上、逃げるという選択肢は無いようだ。どこまで性欲に汚染されているのだろうか? オークというものが全滅しない筈である。


 そんな中を暴れ回っていると、中央でオーガの雌を犯していたオークが立ち上がる。他のオークよりも明らかに背が高い個体だ。


 オークの平均身長は150センチほどである。小柄だと思うかもしれないが、そのパワーは人間種よりも強い。


 引き摺り倒されれば喰われるか、それとも犯されるだけである。パワーの強いオーガでさえ、複数にたかられると耐えられないのだから、怖ろしい魔物だと言えるだろう。


 そんなオークの中にあって、その大きなオークは身長が170を超えていた。ミクよりも低いものの、他のオークよりも筋肉質で体が大きい。間違いなく上位種であり、おそらくはハイオークだと思われる。


 そのハイオークは手下に持ってこさせた大きな棍棒を振り回すと、ミクに向かって突撃してきた。木を削っただけの棍棒を振り回すハイオークと、それを避けるミク。一進一退の攻防かと思われたが、かわした隙に一気に接近し頭をメイスでカチ割った。


 そこらに転がっているオークどもと同じく、頭から血を噴出しつつ倒れるハイオーク。血が一気に失われた為、失神したのだろう。放っておけば、すぐに出血多量で死ぬ。そう見越し、他のオークの殲滅を始めるミク。


 ミクが戦っている間も殲滅を続けていたヴァルの御蔭もあり、その後10分も掛からず殲滅が終わった。咽返むせかえる程の血の匂いの中、ヴァルは一旦本体に戻る。再び出てきた時には熊の姿だった。


 そのまま貪っていくヴァルと、被害者の下に行くミク。一応頭を下げて手を合わせた後に、巨大な肉塊となって被害者を喰らった。


 彼女達が最後に何を思ったのかは、誰にも分からない。唯、既に死んでいたも同然の人達を喰っただけである。


 ここにおいて肉塊ミクに罪は無い。仮にもし誰かに罪が在るのならば、それはオーク達であり、そして被害者達だ。弱ければ喰われるというのは真理である。己が弱いのならば、弱い者として行動せねばならない。


 オーガは生存競争に負け、女冒険者は危険な<魔境>に自ら入ってきている。オーガは可哀想であっても、女冒険者は自業自得でしかない。同情の余地すら無いのだ。それが自然というものである。


 そんな自然界において異質な者の二人は、全ての死体を貪り喰って上機嫌であった。特にミクは久しぶりに飢えが満たされたような気分になっている。勿論、気分だけで、実際には幾らでも喰えるのだが。



 『結構な肉が喰えたね。久しぶりだよ、ここまでガッツリ肉が喰えたのは。御蔭で肉が喰えなかったイライラはかなり減った。このまま進んでいけば、とりあえずイライラは無くなりそう』


 『それは良かった。主がイライラしていると、その波動が俺にもクるからなぁ。あんまりイライラされても困るんだ。もう夜が近いが、このまま行くか?』


 『当然! そもそも眠る必要が無い私達に、夜とか関係無いし。このまま<大地の裂け目>にも<天を貫く山>にも行くよ!』


 『はいはい。それにしてもテンション高いなー。妙な失敗とかしなきゃいいが……その時は俺がフォローするか』



 腹を満たした彼女らは、再び大きな黒狐に乗り更に先へと向かって行く。彼女らが次に目指すのは<大地の裂け目>だ。そこを越えれば<天を貫く山>だが、もう遠くない場所まで来ている。


 <大地の裂け目>はそこまで大きな場所ではないので、二人ならば簡単に越えるだろう。そもそも怪物を止められる魔物が、ここ<魔境>に居るのだろうか?。


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