0304・摂津ダンジョン攻略開始
甲府ダンジョンを攻略して一ヶ月。冬も終わり春の陽気だが、今まで徹底してジュディを扱いていた。既に魔力の器は一度破壊していて、今は2回目に向けて魔力総量を増やしている最中だ。その理由はジュディを調べた際に判明した事が原因である。
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<ジューディア・オルストーム>
種族・妖精族
性別・女
年齢・14
【スキル】・精霊飛行・風の悪戯・死の克己・魔力高速回復・回避術・飛翔術・風魔法・魔力魔法・浄化魔法・死霊術
【加護】・精霊の神・風の神・死の神・魂魄の神
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まさかの<魔力高速回復>持ちだったのだ。もっと早く鑑定していれば指針を明確に出来たのだろうが、ダンジョンに連れて行ったからこそ神が加護を与えたのかもしれない。そう考えると何とも言えないので、これ以後は徹底的に扱いてきた。
甲府ダンジョンでミクの魔法の威力を見たからか、意外にも負けず嫌いを発揮して練習に打ち込んでいる。なかなかの根性であり、ローネとネルが関心していた。ちなみにヴァルの”声”を聞いても反応しないという珍しい”女”であるジュディ。色々ズレているのは間違い無い。
とはいえ、ヴァルとしては大変ありがたく、それ故にジュディを構っている事も多い。勉強なぞは読めばすぐに覚えて理解するので楽勝である。宿題の分からない所を教えたりもしていて、面倒見がいい。
そんな日々を過ごしていたが、そろそろ新たなダンジョンへと行くべきかと思う。47都道府県からオファーは沢山来ているのだ。だが<魔法の使い方講座>をはじめ色々とあり、東京をなかなか離れられないのも事実である。
適当にヤマト全てを巡る訳にもいかないし、「どうしたものか?」と悩んでいると、ジュディが「行っちゃえば?」と言うので行く事にしたのだ。京都は長い間ヤマトの中心だったという。ならば必ず何かがある筈。誰でも考えつく事である。
もちろん色んな人がアタックしているのだが、誰も20層のボスを突破した者がいないらしく停滞しているそうだ。ミク達を望んでいるのはそういう部分もあるのだろう。実力が無ければ進めないが、それでも先を見たいという欲求は誰にでもある。
ミク達は話し合い、京都というか関西へと行く事になった。途中の大阪に先に寄るので、京都はその後となる。ユミが言うには、大阪もなかなかに古い場所で、京都の近くだからか歴史的にも色々あったらしい。なので先にとなった。
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あれから三日。小型バスで移動し、昨夜到着したものの夜だったので外に出ず、今日ようやくダンジョンへと向かう。ちなみにだが、ここは大阪府摂津市というらしく、かつての時代は摂津の国と呼ばれていたそうだ。つまり摂津ダンジョンが正式名称である。
大阪府という場所の中心からはズレているが、ダンジョンが何処に出来るのかなど【世界】に聞かないと分からない。絶対に答えてはくれないだろうが。
既に外に出られるとはいえ、外に出ると「キャーキャー」言われるので観光などはしない事になった。特に今はジュディが居るので、彼女を守らねばならない。それもあって、大阪の食はホテルのレストランで堪能する事になった。
大阪で有名なのは庶民料理らしいので、本物とは違うのだろうが、それでもなかなかに美味しかった。粉物とかいうらしいが、思いのほかバリエーションも多く昨夜はジュディも喜んで食べていた。
摂津ダンジョンの隣にある簡易建物に行き、中島大将から貰った軍の許可証を見せて中に入る。ダンジョンの魔法陣に乗り中へと入って行くミク達。何故か近くの攻略者が敬礼してきたので、転移しつつ敬礼を返しておく。……いったい何だったのだろうか?。
摂津ダンジョン第1層。そこは川が流れる平原だった。意外と言ったらいいか、珍しい光景ではある。そしてイエローラビットを倒して川に沈める攻略者。どうやら血抜きと冷やす為に沈めているらしい。ちゃんと縄も括ってある。
意外にしっかりしていて驚くが、そんな光景を他所にミク達は進んで行く。特に代わり映えのしない景色を進んで行き、10層のボス部屋。休憩も無しに入ったボスはハイゴブリン三体。
ヴァルが<八握の剣>で真っ二つにし、ローネが<殺意の紅太刀>で袈裟に切り捨て、ジュディが【魔力投槍】で穴だらけにして終了。11層へと進む。
「鑑定で見てから特訓したが、ジュディは【風魔法】と【魔力魔法】だと【魔力魔法】の方が得意だな。【魔力魔法】の方が威力があるからかもしれんが、それも中級や上級だと変わらん。が、下級の【風魔法】は使いやすく便利なのだがな」
「威力が低いから仕方ない。それでも魔力消費が少なく何処でも使えるというのは優秀。その優秀性は魔法の中で一番だと言えるし、練習においても一番使う。土魔法の方が威力があるけど、そこはしょうがない」
「まあ、扱うのが風だからねえ……。それで大きな威力とか無いし、ましてや漫画やアニメみたいに風で切るとかあり得ないからさ。それでも【疾風強撃】とか【竜巻】とか、強力な魔法はあるんだよ」
「土魔法との複合である【土礫嵐弾】という魔法もあるけどね。複合だから制御が難しいけど、使える奴は出てくるかな? 飛んでくる土礫でボコボコの穴だらけにされる魔法だよ」
「「「………」」」
色々な魔法があるものの、末路が悲惨そうな魔法である。それはさておき、11層の草原を進んで行く一行。草の丈が長く、足がとられて疲れやすいという厄介な層である。予想以上の面倒臭さであるが、藪を払う程では無いのが腹立たしい。
そして出てくる魔物はグリーンスネークにグリーンモールなど、草の色に擬態した連中ばかり。まことに腹立たしい層だというのは事前情報の通りである。ミク達にとっては長い草が邪魔なだけで、魔物はどうでもいい。何故なら場所は分かるからだ。
簡単にブチのめしつつ先へと進み、誰もが突破出来ていない20層のボス部屋に到着。少しゆっくりして、お菓子などを食べつつ休憩する。十分に休めたらボス部屋の中へ。まだ20層なので警戒もしない一行。ジュディも慣れたものである。
中に入り出てきたのは、ハイオーガが三体であった。三体と少ないものの、キッチリと装備をした三体で驚く。一体は大きな両手剣を持つオーガ、もう一体は大きな盾と鎖帷子を着たオーガ、そして最後は金砕棒を持ったオーガである。
大きな盾を持ったオーガが一番前に出ると、ゆっくりとこちらに向かってくる。バカなオーガかと思ったら、ここのオーガは理知的な感じの雰囲気がしており、バカなオーガだと思うと痛い目を見そうであった。
盾を構えているオーガにジュディが【風弾】を使うも、盾はビクともしない。これは想像通りだったのか、ジュディは続いて【魔力投槍】を放つ。しかし、これも盾で弾かれてしまった。
どうも魔力にも物理にも強い盾らしい。今までの攻略者が全滅した理由もよく分かる。明らかに10層のハイゴブリンとは桁が違う連中だ。急激に魔物が強くなり過ぎの気もするが、これが摂津ダンジョンの難易度なのだろう。
にじり寄ってくる敵と同じく、にじり寄っていく三人。一番前にヴァル、その右後ろにユミ、左後ろにローネという布陣である。相手と同じように布陣を敷いている訳だが、相手のオーガはどう出るのだろうか?。
お手並み拝見といった感じでビデオカメラを回すミクであった。




