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0278・チーム<ファルコン>




 ショート動画を撮り終わってから一ヶ月ほど過ぎた。あれからミクは研究所の頼みで大江戸ダンジョンに行って研究対象を手に入れたり、埼玉ダンジョンに行って狐や狸を手に入れてきたりとしている。


 尚、二度目の埼玉ダンジョンの最奥は何も無かった。洞窟を歩いて出るだけの場所になっており、既に土蜘蛛も居なければ剣も無い状態だった。ミクのやるべき事は魔法の使い方を広める事が第一なので、そちらの方を重点的にやっている。


 芸能人とやらの相手をしたり、政治家の相手をさせられたりしたが、本質を少し解放すれば全員が大人しくなった。捕食されるというのは本質的な恐怖なので、それに抗う事は不可能である。そもそもアーククラスすら耐えられないのだから。


 そんな日々を繰り返していたこの日、何故かヤマトの同盟国であるアメリケンから一つのチームが訪れる事となった。全部で七人居て、アメリケンでも配信している有名なダンジョン攻略チームらしい。


 ちなみにアメリケンはヤマトに次いで世界二位のダンジョン数を誇る国だ。全部で39個もダンジョンがあり、早々に一般人に開放されている。ただ、だからこそ多くの死者をダンジョンで出しているらしく、一部には批判の声もあるとの事。


 ヤマトは遅く、今も許可制になっていて、許可証を持つ人しかダンジョンに入れない。国民からはブーイングもあるが、ダンジョンへの入場許可テストは完全に公開されている為、殆どの国民は黙っている。


 簡単に言えば実力主義であり、一定以下の実力の者は入る事を認められないのだ。その所為か、古武術などの実戦武術がこの時代に脚光を浴びており、入門者が後を立たないらしい。ミク達にとっては実戦こそ日常なのだが……。


 それはともかく、そのアメリケンで有名な七人が今日来るそうだ。というか部屋に入ってきた。何故か友好の為、ミク達も同席を頼まれている。



 「ハーイ! 貴女がヤマトのビューティフルレディね。私はチームリーダーのケイト。ケイト・N・アルダーソンよ」


 「おお! こんな細い腕であれほどのパワーが出せるとは思えねえがな! ガハハハ、こりゃ失礼したな。オレの名はガルシア。ガルシア・ウォールドンだ」


 「ハイ! 私はエフィよ、宜しくね。フルネームの紹介は面倒臭いからナッシングで」


 「オレはディームダル。ディームダル・W・オールドマンJrだ。仲間からはディーと呼ばれている」


 「ボクはフレッド。フレディ・J・カーグニーだよ。魔法が上手く使えるから、今はこのチームに入れてもらってる」


 「あたしはサンドラ。アレクサンドラって名前だけど他は知らない。一応アレクサンドラ・ビコーネンと名乗ってる。ビコーネンは孤児院の名前ね」


 「私はデイジー。デイジー・A・オールドマンJr。そう、ディーの妹よ。このチームでは雑用その他を主に担当してるわ。どいつもこいつも金使いが荒くて困るのよね」


 「ガハハハ! 折角ダンジョンなんてものがあるんだから、たっぷり稼いで、しっかり使う。当たり前じゃねえか! 金を使わない奴はクソだって相場は決まってるんだぜ?」


 「無駄使いまで認める訳がないでしょう。私が居なきゃ、全員借金塗れでしょうが!」



 いつもの掛け合いなのか五月蝿いが、ミクは普通にスルーしている。本体に意識の大半を移せばスルー力は非常に高くなる。まあ、それはいいとしてだ。この連中がやってきたのは、魔法の使い方と身体強化だ。


 元来の身体強化とスキルの【身体強化】。二種類の身体強化があるのだが、スキルの【身体強化】は半自動なので出力が決まっている。それとは別に、元来の身体強化は誰でも使えるものの、自力で全てを制御しなければいけない。


 これを動画で解説したのだが、その技術はとんでもないレベルで難しいのだ。というより、魔力も闘気もゴリゴリ減るので練習が非常にし辛い。簡単に倒れてしまうほど消費が激しく、殆どの者はすぐに無理だと諦めてしまう。


 それをわざわざ習いに来たんだそうだ。もちろんアメリケンがそれだけな筈もなく、それ以外に十数人の海兵隊の兵士がいる。選抜されてきたらしく、特に優秀な兵士らしい。


 ダンジョンにも潜っているし、自分の手で魔物も殺している。それでもハイクラスの魔物を倒すのに、結構な人数を必要とするそうだ。まあ、いきなりハイクラスと戦ってもそんなものであろう。



 「そもそもなんだけど、魔物素材を使うなり何なりして強化を図るべきではあるだろうね。色々なダンジョンがあるなら、武具に使える獲物も居るだろうしさ。そういう奴等の物を使った方がいいよ」


 「だな。この星では今までの積み重ねがあるのだろうが、必ずしも金属製が良いとは限らん。それに金属の鎧もあまりお勧めは出来んな。人間種同士の殺し合いならまだしも、魔物相手では遅くなるだけだ」


 「足が遅いのは致命的。それだけで殺される確率は上がる。それと、実戦では殺される前に殺せが基本。とにか敵の弱点を攻めて少しでも早く殺す。これを徹底するべし」



 そんな話をしながら演習場へと行く。アメリケンの者達は大多数が碌に話を聞いていない。多分ヤマトに行けと言われて来ただけなのだろう。だからこそ地獄を見る。それが分かっているからこそ、ヤマト陸軍の者達も何も言わない。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「どうしたのだ? 私達の話など聞く価値無しと聞き流していたじゃないか。ならば強いのだろう? 己より弱い相手だから侮り無視したのだろうからな。早く立て小僧、蹴り飛ばすぞ」


 「く、そんなバカな。おグボァッ!!!」


 「蹴り飛ばすと言っただろうが。100にも満たんガキが調子に乗るな。キサマには地獄というものを教えてやろう。ミク、苦痛の魔剣を貸してくれ」


 「はいよ」



 ミクはローネに苦痛の魔剣を投げる。それをキャッチしたローネは、向かってきたガルシアの悪い所を容赦なく叩く。叩かれる毎に激痛が走りガルシアが悲鳴を上げるが、ローネは一切容赦をしない。



 「どうした、どうした、どうした!! 偉そうな態度をとっておいてこの程度か!!! 何をやっている、早く立て!! ………チッ! この程度で怯えおって。次! さっさと出てこい!!!」



 そこからはローネの独壇場だった。最初は竹刀で相手をしているが、真面目にやらない、若しくは気が緩むと苦痛の魔剣で叩かれる。その瞬間激痛を受けて慌てて真剣にやる。その繰り返しとなった。


 海兵隊の兵士もやらされたが、母国の訓練の方が遥かにマシだという生き地獄を味合わされたそうだ。まあ、苦痛の魔剣を使っているので当然であろうが。尚、ガルシアはローネに対し完全に苦手意識を持ったようである。


 相手を舐めれば相応の報いを受けるのが当たり前の星で生きてきたのだ。舐めれば当然それだけの反撃をされる。相手をヤマト人と同じだと思って舐めたのだろうが、殺し合いの中を生きてきたという事を理解しなさ過ぎであった。


 海兵隊の兵士はヤマト陸軍の本部に泊まるが、ダンジョン攻略チーム<ファルコン>の面々はホテルに移動するらしい。ミク達は見送って、さっさと食堂に移動する。まだ昼だというのに彼らはボロボロで、既に訓練など出来ない状態だった。


 帰り際に【超位治癒アークヒール】を使っておいたので、トラウマにはなっていまい。流石にナンバー1攻略チームにトラウマを植えつけたとなれば問題がある。その程度はミク達とて分かるのだ。


 なので優しさとかではなく、後での面倒臭さを回避する為でしかなかった。


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