0274・ショート動画撮影
陸軍本部に戻った一行は、すぐに中島大将の所に行く。<八握の剣>の事を伝えると頭を抱えられた。現在、総理大臣が<白熊王の円月刀>を記者会見でアピールしている最中なんだそうだ。そのタイミングでコレかとなるのも無理は無い。
ユミから言われ<八握の剣>を持とうとするも「バチッ」と音がして弾かれた。その後、実験結果と鑑定結果を説明すると再度頭を抱えられてしまう。本当に気持ちは痛いほど分かるが、本人認証がされている以上はどうにもならない。
更にユミがヤマト王権と<土蜘蛛>の話をすると、中島大将は知らなかったのか黙り込んでしまった。かつてヤマト王権に反抗した人達の持ち物である可能性があるのだ。それをヤマト人が所持すれば納得はするまい。
その歴史的背景を考えれば、迂闊に取り上げたりする事も出来ない代物なのである。ユミの説明には中島大将も唸るしかなかった。結局、持つ事も出来ないのでは意味が無いし、無理矢理奪って呪われても怖い。実際に呪いの武器がある以上は、その危険性は必ずある。
ショート動画でも撮って、武具などを出してみればいいんじゃないかと中島大将が言い出す。ミク達の持っている物の中で出せる物を出し、それの中に潜りこませて出してしまえば、そこまでの反響にはならないんじゃないかと。
非常に消極的な方法ではあるものの、ミク達としては特に問題の無い事であるので了承した。明日は休みだしゆっくりショート動画を撮れば済む。そう決まり、中島大将の部屋を後にしたミク達は、SDカードを専属スタッフに渡し食堂へと移動した。
夕食を取ってきてテーブルで食べていると、いつもの軍人六人がいた。話を聞くに今日は練習だったそうだ。魔法は使えるようになったが、実戦では全く使えないので練習していたらしい。戦闘中に使えないと焦り、焦ると余計に使えない悪循環を起こしたみたいである。
そうやって一つずつ自分の出来ない事を知っては、練習して出来る様になっていく。それを繰り返すしか強くなる方法は無い。そんな事を話して聞かせ、食事後は部屋へと戻る。移動ばかりで疲れた面々。
今日もローネとネルとユミはそのまま寝てしまい、ミクはレイラを送り出した後、分体を停止して過ごす。ヴァルも大元に戻って行った。
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翌日。朝食を食べたミク達は、演習場の一角でショート動画を撮影中だ。といっても、<鑑定板>での鑑定結果を見せていくだけのもので、大して疲れもしないものである。一つずつ解説しながら撮影していく。
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<獅子王のナイフ>
惑星ヴィルオスティアの<天を貫く山>に居たアーククラスの魔物、ネメアルの牙と爪を使って作られた大型のナイフ。その切れ味はドラゴンの鱗さえ存在しないかのように切り裂く。珠玉の一品。
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<獅子王の毛皮>
惑星ヴィルオスティアの<天を貫く山>に居たアーククラスの魔物、ネメアルの毛皮をそのまま使った衣。柔らかく暖かながら異常なまでの防御力を誇り、ドラゴンの牙ですら切り裂く事はできない。これを所持する者はネメアルを絞め殺した筈である。
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「相変わらず滅茶苦茶だな。アーククラスの魔物を絞め殺すなんて事が出来るのはミクぐらいだぞ。挙句、どんな刃物でも傷一つ付けられんからな。実は軍には言ってないが、これは銃弾という物を通さん筈だ」
「まあ、アーククラスの獅子が、あの程度の武器にやられる筈が無い。ミクが力を込めて切り裂こうとしても切れなかった毛皮。ビックリする程に柔らかいのに強靭過ぎる。この相反した二つを持つのもアーククラスならでは」
「本当に凄いねえ。この手触りはビックリするほど癖になるよ。にも拘らず銃弾すら通さないって、とんでもない代物さ。各国の要人が挙って欲しがるような品だねえ。ただ、アーククラスなんて軍隊でも勝てないだろうけどね」
『そもそも仮に出てくるとしてもダンジョンの中だろうからな。そこにどれだけの軍人と兵器を投入出来るかを考えたら、嬲り殺しにされて終わるだけだ。ダンジョン攻略は数より質だからな』
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<ドラゴンバスター>
<※※の神>と<※いの神>と<※いの神>と<※※の神>と<※の神>が話し合いを行い、妥協して作られた竜殺しの剣。<喰らう者>が使う事しか考えられていない為、あまりにも重過ぎる物となっている。通常の人間種では振る事すら出来ず、剣として使用するのは不可能である。
重量は300キロを超えるが、<喰らう者>はこれを片手で振り回せる。
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「「「………」」」
『主の場合、振り回すというより叩きつけるが正しいな。土蜘蛛も凄まじい威力を受けて、洞窟の壁に叩きつけられていた。実際、あの時点で相当弱っていたので、俺の手柄とも言い辛いのだが……』
「まあ、いいんじゃない? そもそもあの一撃で死んでないって時点で、通常のドラゴンよりも強いのは確定だしね。もしかしたら内部に攻撃しないと、いつまでも倒せなかった可能性もあるよ」
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<巨人の剣>
惑星ヴィルオスティアのフィランオルド帝国のダンジョン、その最奥に居たジャイアントが持っていた剣。切れ味は普通だが、異常なまでの頑丈さを誇る。岩に叩きつけても傷付かない程であり、ジャイアントの膂力に耐えられる特別仕様。ダンジョン産。
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<雷撃棒>
見た目は唯の金属の棒だが、魔力を流すと先端から雷撃を放つ。相手を感電させる程度から、敵の肉を焦がす程にまで威力を調整できる。非常に優秀な武器だが、持ち手部分以外を持つと感電するので要注意。ダンジョン産。
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「ネルのメイン武器だね。これもフィランオルド帝国のダンジョンで手に入れた物だけど、今まで十二分に役に立ってくれてる。巨人の剣に関しては使いどころが無いんだよね。頑丈さを使わなきゃいけない相手がいないし、仮に居たら使うのはドラゴンバスターだしさ」
「まあ、言いたい事は分かるな。とはいえ、この剣も思っている以上に重い。まともに振り回せるのはミクかヴァルだけだろう。それ以外の者はスキルが無ければ振り回せんぞ」
「重い武器は威力が高いけど、使えないほど重いのは唯のガラクタ。ただしミクならどんなガラクタも使える。逆に言えばミクは武器を選ばない。普段使うのも自分を表現する為の武器」
「それが解体道具なんだねえ。<喰らう者>の名の通り、獲物を解体して肉を喰らう為の武器か……。まあ、自己表現としては間違ってないね。それほど正しい物も無いとは思うけど」
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<マナ・ダイアモンド>
珍しい魔力を篭められるダイアモンド。大きければ大きいほど価値は高いが、これは小さい為、そこまで価値は高くない。それでも優秀な素材である。
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<オーラ・アレキサンドライト>
珍しい闘気を篭められるアレキサンドライト。大きければ大きいほど価値は高いが、これは小さい為、そこまで価値は高くない。それでも優秀な素材である。
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「こういうのも一応出しておいた方が良いかと思ってさ」
「軍に売ったんじゃなかったのか?」
「それは普通の宝石類だね。こういうのは必要になるかもしれないから残してあるよ。流石に魔力や闘気を込められる物は手に入りにくいから」
「それはそう。でも鑑定に出ている通り、質が低い。あまり良い物は作れない素材」
色々な事をポンポンと話しているが良いのだろうか? 仲間内でワイワイやっているからこそ、爆弾発言に気付いていない気がするのだが……。




