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0273・土蜘蛛と八握の剣




 巨大な黒ミミズとの戦闘だが、ユミ以外の全員が敵の位置を把握している。となると、そこまで難しい話しではない。次に狙われたのはネルだったが素早く離脱。100メートルを5秒86で走れるのだから余裕である。


 出てきた後に素早く近付き、ヴァルが長巻で切り裂く。直径2メートル程の胴体を持つバカデカいミミズだが、それゆえに切りやすくもあった。三分の一ほど切り裂かれたミミズはのた打ち回り、その間に一気呵成に攻撃していく。


 ローネはヴァルから借りたバルディッシュを振り下ろし、ネルは剣王竜の短槍で切り裂いていく。短槍といえど切る事には使えるので問題無し。雷撃棒を使わないのは味方を感電させる恐れがある為だ。


 流石に味方に被害を及ぼす状況では使えない。アレは強力だが、使いどころを考えないといけない武器である。


 さすがのアーククラスも、同じアーククラスのそれもドラゴンの素材だと切り裂かれてしまうのだろう。結局、あっと言う間に沈んでしまった。当初の予想よりも簡単に終わったが、気を抜く阿呆はいない。


 周りを警戒していると赤と青の魔法陣が出現し、その近くに大きな黒い箱が出てきた。よく分からないがアイテムバッグに収納し、赤の魔法陣に乗って進む。次の40層で終わりだが、どうなっているのだろうか?。


 最奥の40層に辿り着くと、そこは洞窟の中で、目の前には蜘蛛の怪物が居た。胴体の上部分は人間の顔になっていて、何かを喋っている。人語ではないからか理解出来なかったが、ユミが「土蜘蛛だ!」と叫ぶ。


 その瞬間、敵は一気に襲い掛かってきた。ヴァルが突進を避けて足を持ちブン投げる。洞窟の壁に叩きつけられた土蜘蛛に対し、ローネが小太刀で素早く足を落とす。途端に絶叫が響き渡り、ローネ、ネル、ユミの鼓膜が破壊される。


 耳から血を垂れ流しつつ平衡感覚を失った三人を守る為、已む無くミクは三人の前に出て片手にドラゴンバスターを持つ。その重量が300キロを超える怪物の為の剣が唸りを上げる。


 土蜘蛛がミクを襲うも、それよりも遥かに速く叩きつけられたドラゴンバスターに衝突し、土蜘蛛は再び洞窟の壁に叩きつけられた。それをチャンスと見たヴァルが、剣王竜のウォーハンマーで【深衝強撃ショックスマッシュ】を放つ。


 すると「グシャッ!!」という音と共に、土蜘蛛の体は潰れて死んだ。ローネ達に<天生快癒薬>を飲ませ治療した後、死体を検分しようとすると煙の如く消えてしまった。



 「土蜘蛛というのは妖怪であり、元々はヤマト王権、つまり古代の私達の王様に従わなかった連中の事なのさ。ヤマト王権に抗った人たちを差別する言葉として、彼らを<土蜘蛛>と呼んだんだ」


 「まあ、何処でもある事だな。誰かが地域を統一し、それに恭順しない者とは闘争となる。良い悪いではない、それも一つの闘争なのだ。弱ければ喰われて死ぬだけである以上、強くあらねばならん」


 「負けた者達に同情する気持ちも分からなくはない。でも、それは彼らに対する侮辱でしかない。だから今すぐ止めるべき」


 「そうだ、ね。彼らは彼らの誇りと共に抗ったんだ。他人がどうこうと言う権利なんて無い……か」



 そうして一方通行の洞窟を歩いていくと、途中で剣が落ちていた。それを拾ってアイテムバッグに収納し、ミク達は外に出る。


 既に夕日が沈みかけていたので慌ててホテルへと戻っていく一行。スタッフ達はゆっくり過ごしていたようなのでレストランに行き、夕食を食べた後はすぐに部屋へと戻る。昨日は無かったローネ達を満足させ、寝かせたらレイラを見送った。


 夜中の間に確認しておこうと思い、黒い箱と剣を取り出して鑑定する。何やら妙な物が手に入ったようだ。



 ■■■■■■■■■■■■■■■



 <豊饒ほうじょうの箱>


 中に様々な有機物を入れ、右端の魔石入れに魔石を入れると起動。有機物を肥料にしてくれる。限界まで入れた場合の肥料にする時間は大凡おおよそ三分。それだけで非常に高品質な肥料が大量に手に入る。ダンジョン産。



 ■■■■■■■■■■■■■■■



 <八握の剣>


 非常に古い時代のヤマトで使われていた形状の剣。しかし素材の物質は不明。異常な切れ味と異常な耐久力を誇り、魔力を流すと剣身に【高位清潔グレータークリア】の効果が現れる。ダンジョン産。


 <使い魔>が<土蜘蛛>を討ち倒した為、それ以外の者は使えない。



 ■■■■■■■■■■■■■■■



 「………あっちゃー。これヴァル以外は使えないじゃん。厄介な事になったなあ。私が昔手に入れた<巨人の剣>みたいな物かな? いや、あれは誰でも使えるし、ちょっと違うか。それにしても材質が不明ねえ……」



 色々考えられるが。面倒臭くなったミクは放置する事に決めた。流石に使えない物を寄越せとは言わないだろう。貸す事はするかもしれないが、ヴァルが渡す事はあるまい。ミクはさっさと本体に戻り、物作りを始めるのだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 明けて翌日。ローネの長柄武器として何が良いかと考え、最終的にはミクの矛を渡す事にした。土蜘蛛との戦いもそうだったが、ミクはドラゴンバスターを片手で振り回せる。つまり長柄の武器は既にあるのだ。ならばローネに渡してしまえばいい。


 それ以外にもネルに幾つか武器を渡す事に決め、起きてくるのを待っているとレイラが戻ってきた。どうやら今日も疲れたらしく、さっさと本体に戻ったレイラ。


 昨夜も昨夜で、股間に脳が付いているような連中の相手をしてきたらしい、昨夜は女性だったようだが、男と何も変わらなかったそうである。


 ミクが本体で労っているとローネ達が順に起きたので挨拶し、朝の内に武器を渡しておく。ローネには剣王竜の矛を、ネルには剣王竜の千鳥十文字と 魔剣ブレインホワイトを渡す。魔剣に関しては、ミクが持っていても使わないからだ。


 結局使わないならば、使う者が持っていた方が良い。そう思い渡しておいた。ネルにとっても使いどころは限られるだろうが、ある意味で必殺の一撃として使える魔剣である。持っていて損は無い。


 部屋を片付けてレストランに行き、朝食を食べたらチェックアウト。小型バスに乗って大江戸市の陸軍本部に帰る。後ろから追いかけてきていた連中は既に喰ったので、追いかけてくる者は多分いないだろう。


 ちなみに喰った理由は、犯罪を犯してでもスクープを得ようとしている連中だったからだ。過去に犯罪を犯している以上アウトであり、喰っても神も文句を言わない連中である。そんな者を逃がす筈もなく、最初の日の夜に喰われた。


 ミク達は小型バスの中で暇を潰しつつ、ユミに昨日の剣の話をする。ヴァルが取り出した<八握の剣>にユミが触れた瞬間「バチッ!」と音がして弾かれた。いきなりで驚いたが、とりあえず調べてみる事に。


 その結果、ミクは持っても問題無かったが後の全員が弾かれた。しかしミクが持って魔力を流しても【高位清潔グレータークリア】の効果は現れない。そこから、完全な力を発揮するのはヴァルが持った時のみだと判明。


 なかなかに厳しい判定である。ミクの魂の一角にヴァルが居るにも関わらず、ミクとヴァルでは別だと判定しているのだ。この判定方法の方が気になるミク。それとは別に頭を抱えるユミ。


 <八握の剣>と言えば、今はもう分からない非常に古い形式の剣なのだ。それの正式な所有者がヤマト人ではないという事に、頭を抱えてしまうのも仕方がないだろう。歴史的な事だと口を出してくるバカが非常に多い。


 とはいえ、由来を考えると今のヤマト人に持つ資格があるのかははなはだ疑問である。むしろ土蜘蛛の人達が怒り狂うかもしれない。それならヤマト人とは関係無い者達の方が良いのではないか?。


 その線でゴリ押ししようと決めるユミであった。


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