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0268・ダンジョン40層




 次の日。再びダンジョンへと出発したミク一行。ダンジョン内の様々な物は持ち帰って渡しているが、今のところその成果が出たとは聞いていない。今日もエイジ達が居るが、明日からは学校の為、今日は早く帰らなきゃいけないそうだ。


 だったら無理せず一日ヤりまくってればいい気がするが、役に立つアピールをしておきたいらしい。ダンジョンに行くのもやがて日常になり、それが仕事になるだろうと思っているエイジは、自分が役立つというアピールをして早めに入りたいようだ。



 「今はまだ軍の人しか入れませんからね。俺達としては前の星では自力でお金を稼いで生きてきたんです。それが出来ないとなると、何かもどかしいんですよね」


 「分かる。何か自分の力が役に立たないって言われてるようでヤだよな。俺達戦えるし、軍の人達よりシビアな中を生きてきたっていう自負もある。正直言って、アーククラスの前でも動けるからなー、俺達」


 「代わりに勝てなくて殺されるけどな。それでもアーククラスの前で動けるだけ凄いって……多分伝わらないよなー」



 周りのミキやサエも「うんうん」と頷いて同意を示している。それぐらい逃げる事すら難しいのだが、ユミや軍人六人組には分からないのだった。今日は軍人六人組も乗っており、また浅い層で練習するようだ。



 「浅い層と言うのは止めて頂きたいのですが……まあ、殺し合いの実力不足と言われれば何も言い返せませんね。実際、自分の命が懸かると途端に人間って動けなくなるものだと分かりましたよ」


 「実際、各国の兵士も似たようなものらしいですね。銃でなら戦えますが、近接戦闘となると途端に……。まあ、気持ちは痛いほど分かりますし、実際心に傷を負った兵士も居るそうです」


 「それで戦えなくなったら、それまでだ。そも、戦場とは戦いの場である以上、戦えぬ者には出る資格も無い。むしろ戦えない者が戦場に出ようとするなど、戦士に対する侮辱でしかないぞ」


 「「「「「「………」」」」」」


 「戦士は相手の命を奪う事、自分の命が奪われる事を覚悟して戦場に出る。銃という遠距離武器が、戦場を戦士の戦いの場でなくしたのだと思う。今この星の者は、改めてそれを突きつけられているだけ」



 流石に1000歳近い者と、それを越える者の言葉は重みが違う。軽々しく戦場を語っている者の言葉ではなく、現実を正しく理解している者の言葉であった。


 ダンジョンに辿り着き、軍人六人と別れたミク達は、ダンジョンに進入して一気に進む。30層のボス前で休憩と昼食を行い、30層のグレーターヴァンパイアを倒したら31層へ。何故か今回はショタの代わりにロリが居たが……。


 31層の海を二種類の蟹を倒しつつ進み、35層のボス部屋前。十分に休憩をしてからボス戦に挑む。中に入って魔法陣から出てきたのは、グレータークラスの剣客蟹と大鎧蟹だった。


 流石に圧がシャレにならないが、エイジ達がまずは挑む。エイジは<集目の盾>ではなく<剣王竜の盾>を持っており、ジリジリと近付いていくが、突然剣客蟹が右腕を振るう。それは怖ろしい速さであり、エイジでさえ流せないほどの速さだった。


 直撃を盾で防いだものの、引っ掛けるようにして飛ばされるエイジ。それを見たシロウ達は早々にギブアップ宣言をし、ミク達に後を任せる事にした。盾役が崩壊した以上、エイジ達に勝てる道理が無い。


 ヴァルが素早く寄り剣客蟹の注意を引き、ローネが素早く大鎧蟹に近付き注意を向けさせる。ネルは大鎧蟹の気が逸れた瞬間、近付いて全力の<雷撃棒>を喰らわせた。流石に雷撃攻撃は苦しいのか嫌がるものの、上手く体が動かせない。


 そんな大鎧蟹に近付いたローネは、一気に胴体を縦に切断する。バックステップですぐ下がると、中身をブチ撒けながら大鎧蟹は沈んだ。


 一方剣客蟹はというと、右腕での攻撃を回避したヴァルに右腕を切り落とされ、あっさりと自慢の武器を失う。それはミクが撮影しながら回収しており、あとはヴァルが適当に解体して終了。一行は36層に転移されていく。


 36層も海というか海岸線の地形なのだが、今度は厄介な事にアザラシや白熊などがいる。アザラシはその巨体を活かして圧し掛かってこようとするうえ、思っている以上に足が速い。そのうえ【水魔法】まで使ってくる。


 白熊はシンプルに熊系の魔物として強い。そのうえこちらも【水魔法】を使ってくるという厄介仕様である。エイジ達も戦ってみるが、この辺りで限界のようだ。特に【水魔法】を使いながら戦ってくるので、エイジだけだと捌ききれない。


 海の近くに寄らなければ魔法は使ってこないのだが、どうやら魔法陣が海の近くにあるらしい。必ず海の近くに行かなければいけないという、非常に厄介な層となっている。エイジ達の実力でギリギリだと、軍では絶対に勝てない。


 そんな事をユミが語っているが、その顔は随分と悔しそうだ。どうにも自分が役に立っていない事が腹立たしいらしい。とはいえ神に修行をつけられたエイジ達と一緒にはできないだろう。



 「あんた達そんな事をしてたのかい!? そりゃ強い筈さ。神様との稽古なんて凄い事だろう? その割には何だか……ああ、それほどまでに大変だった訳かい。神様がそんな優しい筈もないって事だね」


 「そうですね。正直に言って二度とゴメンだと思うぐらいには大変でした。普通に殺されかけるんですよ。で、治されてまた練習です。俺達少なくとも一回は、腕か足を切り落とされてますし」


 「………」



 ユミが呆れているが、神というのはそんなものである。幾らでも生やせるのだから、気にしなくてもいいという訳だ。死闘というのは元々そうなのだから、そこでどれだけ戦えるかの修練をさせられるのは当たり前である。



 「つまり、本当の死闘を行う修行ってわけ。神どもだから当たり前にやるし、私だって出来るよ? おそらくやりたい奴はいないだろうけどね。何だったら、くっ付けながら何度も切り飛ばしてあげるけど?」


 「本当に遠慮したいねえ。ミキの顔が青くなってるくらいだから、どれほど凄惨だったのかは分かるよ。神様も容赦ないけど、それこそが戦いというものの真実か……」



 そんな話をしつつも進めているのは、前でヴァルとローネが暴れている為だ。エイジ達も戦っているが、そこまで役には立っていない。敵を引きつけておく程度には役に立っているが、逆に言えばその程度である。忸怩たる思いがあるのだろう、本当に悔しそうだ。


 調子に乗るより余程良いので黙っているが、後はひたすら修練し続けるしかない。それでも頑張って進み、遂に40層のボス部屋前。ボス部屋があるという事実で、このダンジョンが40層ではない事が確定した。



 「やっぱり今までのダンジョンとは違う。今までなら40層で終わりだったのに、ここにボス部屋があるという事は40層より先があるって事。このダンジョンどこまで深く創られてるのやら」


 「この分だと60層ぐらいはあると考えておくべきか? それと、ここだけなのかが気になるところだな。他のダンジョンが代わりに浅い可能性もある」


 「成る程。となると、ヤマトではダンジョンが浅い? 他の国だともっと深いとか……?」


 『流石にそれはないだろう。そんなダンジョン、俺達しか攻略出来んぞ? アーククラスが普通に闊歩するダンジョンになりかねん』


 「まあ、ダンジョンだからといって、必ず攻略しなきゃいけない訳でもないんだけどね」



 そういえば……と、今ごろ気付く一同だった。別にこの星ではダンジョンマスターを殺せとは言われていないし、その為に攻略する必要も無い。


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