0265・呪いの剣の浄化
エイジ達と1層から攻略していくが慣れたものである。サクサクと進んで5層のボス。危な気なくあっさり倒し、余裕をもって進んで行く。10層のハイフォレストベア五頭もあっさり倒し、15層のハイクレイジーモンキー五体も簡単に倒した。
森の中を進んでいると、ミキが急に「松茸」と言い出す。何かと思ったらヤマト皇国では高級キノコらしい。ミクはそれを聞き、同じ物は11層からあった事を口にする。
「見ていなかったんだろうけど、栗とかいうのと柿とかいうのもあったよ? 別に必要でもなかったから何も言わなかったけどさ、欲しかったらダンジョンに採りに来れば良いんじゃない?」
「そんな……魔物ばっかりで見てなかった。折角だから採ってミクさんに料理してもらえば、美味しい松茸料理が食べられた筈なのに……。はっ!? 今からでも遅くない!」
「遅いよ。今は攻略が最優先だ、下らない事話してないでさっさと行くよ! この孫はいったい何を考えているんだろうねえ」
ユミがミキの耳を引っ張りながら連れて行く。漫画みたいな光景だが、ミキはここまでポンコツだっただろうか? ヤマト皇国に帰ってきて気が抜けたのか、それともエイジと会えなかった期間で拗らせたのか。一時的な事ならいいのだが……。
全員で最短距離を進んで行き20層のボス戦。ハイオーク10体もあっさりと終わらせた。ハイクラスだと【爆音衝撃】が効く為、そこまで厄介なボス戦にはならない。それだけに頼るとグレータークラスには勝てないが。
21層からは墓場だ。やはりゾンビやスケルトンにレイスなどは戦いたくないのだろう、エイジ達も嫌な顔をしている。それでも倒して進みながら25層のボス部屋まで辿り着く。そこで休憩と食事をしながら話し合うエイジ達。
「25層のボスはグレーターゾンビ3体だって聞いてるけど、キッツイな。あいつら病原菌撒き散らすし汚いし、更には回復能力が高すぎるんだよ。御蔭で生半可な攻撃じゃ、殆ど意味がない」
「矢だって突き刺さっても、回復してくると肉が盛り上がって取れるんだよね。だから多分だけど、銃でも同じ結果だと思う。銃弾が体に入っても、肉が盛り上がってポロポロ落ちるんじゃないかな?」
「多分その結果だろうねえ。銃っていうのは人間種同士の殺し合いならいいんだろうけど、魔物との殺し合いとなれば金が掛かり過ぎるのは間違い無いよ。それに、どの魔物までなら効くのやら」
「今はそんな事よりグレーターゾンビですよ。ここのボスをどう倒すかです。エイジとシロウとサエが一気に【聖化】系魔法を使って弱体化するしかないでしょうね。ミクさん達なら楽勝でしょうけど……」
その後も少し話していたがオーロの案が採用され、開幕すぐにブッ放して一気に弱体化させる事で決まった。気合を入れて緊張感を持って準備し、ボス部屋に入って出てくるのを待つ。
地面の魔法陣から出現し、動き出す前に三つの魔法が飛ぶ。
「【上位聖化】!!」
「【高位聖化】!!」
「【上位聖化】!」
エイジ、シロウ、サエの魔法が一気に飛び、グレーターゾンビは一気に弱体化する。後は一体ずつ相手をして倒していくだけである。上手く戦い、ボス戦で活躍したのはユミだった。少しの間だけ【竜王覇気】を使い、その間にグレーターゾンビの足を切り落としたのだ。
どうやらスキルを上手く使えるようになってきたらしい。それでもその膂力に耐えられる武器を持っているから出来る事でもある。足を使えなくなった二足歩行の魔物など相手にならない。叩き潰して終了だ。
簡単に終わらせたエイジ達は十分な手応えを感じて26層へ。慢心ではないのだろうが、この後で苦戦する事になった。
その理由は押し寄せてくるゾンビやスケルトンにレイス。それに混じって上手く戦ってくるヴァンパイアだ。イケメンのヴァンパイアや、イケオジのヴァンパイア。美女のヴァンパイアに、ロリのヴァンパイア。
一応撮影しているものの、見とれて殺される者が出そうな層である。アンデッド系でも特に強力なヴァンパイアが出てくる事に四苦八苦しながらも、何とか退けていくエイジ達。ここまで来ると魔物も相当強い。
ハイクラスの魔物ばかりであり、その分苦戦は免れないのだ。浅い層ならボスでしか出現しないような者が、深い層になると普通に出現する。それらを退けつつ進んでいると、またもや魔力の流れがおかしい所があった。
撮影しているので悩むも、最終的には行く事に。変な魔力の流れを感じる所に行くと、墓の前に一振りの剣が置かれていた。あからさまに怪しいものの、ミクが回収してアイテムバッグに入れる。呪いの可能性も無い訳ではないので、迂闊に触らせる訳にはいかない。
その後も苦戦しながら進んで行き、遂に30層のボス部屋前に到着した。予想以上にエイジ達が疲弊しているが、これはここのダンジョンに慣れていないからだ。
「ですね。このダンジョンにアジャストすれば、そこまで苦戦はしなくなるでしょう。とはいえ初めてですからね、やっぱり緊張感もあってキツイですよ」
「毎回思うけど、何でヴァンパイアってイケメンとか美女とか、とにかく美しい奴しかいないんだろうな? いや、ダンジョンの外で出てくる吸血鬼族は友好的な種族らしいって聞いてるけど、不思議じゃね?」
「魔物のヴァンパイアは襲ってくるだけの怪物だが、吸血鬼族は人間種が元だからな。そのうえ当然ながら理性がある。そも、連中はどんな血でも構わんのだ。だから人間種の血に拘りなど無い。奴等にとっては血さえ飲めればいいのだからな」
「「「「「「「「へー……」」」」」」」」
「それに位階が上がれば上がるほど血を必要としなくなるしね。アーククラスのヴァルドラースなんて、血を全く必要としていなかったよ。そうじゃなきゃ数百年ダンジョンに閉じ込められても、生き延びていないし」
「数百年って凄いですね。………って、あれ? それを鑑定するんですか?」
「今の内に鑑定しておこうと思って。少し離れておいてよ? 多分大丈夫だとは思うけど」
ミクは先ほど手に入れた剣を<鑑定板>の上に置いて鑑定する。目の前に出てきたウィンドウの字を読み、やはりそうかと納得した。
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<呪銀の剣>
呪いの付いた剣。剣を抜くと生き物を殺したい欲望に汚染される。それが味方であろうと最愛の人であろうと、剣を持った以上は殺すべき標的でしかない。ダンジョン産。
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「「「「「「「「………」」」」」」」」
「呪いは見えなかったが、剣を抜くと発動するタイプか。普段は鞘の中に収まって呪いを漏らしていない。なかなかに厭らしい剣ではあるな。<鑑定板>が無ければ抜く阿呆はいるだろう」
そんな言葉を背中に受けながら、ミクは<聖霊水>を取り出して剣に掛ける。呪いを貪り喰っても良かったのだが、撮影しているので普通に浄化したパターンを見せるべきだと思ったのだ。果たして、その結果は……。
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<浄銀の剣>
呪いの剣が浄化され、本来の輝きを取り戻した。魔力を流すと浄銀が力を発揮し、アンデッドを弱体化させる。切りつけると同時に弱体化させるので非常に便利だが、浄銀はそこまで硬い金属ではないので注意されたし。ダンジョン産。
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「成る程。こういう風に使わせる為に置いてあったんだと思う。もしかしたら手前の層にも色々置いてあったのかもしれない。今回は呪いだったからミクが違和感を持ったのだとしたら、呪いの付いてない物は目視で探すしかないと思う」
確かにそうかもしれない。そう思うミクだったが、割と適当だったので集中して探してなどいなかった。その所為かもしれないが、口に出さない方がいいと思い黙っておくのだった。




