0263・エイジ達とダンジョンの攻略へ
25層のボスを倒し26層へ。スマコンを見ると夕方前だったので脱出する事に。青い魔法陣に向かっている最中、まさかのヴァンパイアと遭遇。セクシー系のヴァンパイアだったが、ヴァルがあっさり首を刎ねて殺害。魔法陣へと進む。
青い魔法陣はすぐに見つかり出たが、どうやら軍人六人はまだ脱出していないらしい。なので、アイテムバッグに入れていたお菓子を食べつつ休憩していると、軍人六人が脱出してきた。所々血が滲んでいるのは仕方ないのだろう。彼らだけで頑張った事を褒めるべきだ。
そう思って労うものの、男連中は納得がいっていないらしい。女連中は、そんな男連中を熱っぽい視線で見ている。何でもポリカーボネートの盾とはいえ、恋人に守られて戦うのは女心にグッとキたらしい。……戦闘に集中しろよ。
そんな事を思いつつも相手をするのは面倒なので、さっさと軍用車両に乗って帰る事にした。その帰りもデモをしている者がおり、軍用車両の前を塞ぐが、急に宙に浮いて道路の脇に排除される。当然やったのはミクであり、使ったのは【魔力魔法】だ。
透明な触手のような物で掴んだり動かしたりできる。【魔縄鞭】という魔法なのだが、実は難しく上級魔法に分類される特殊な魔法だ。マイナーな魔法であり、説明するまでローネもネルも知らなかった。珍しい事もあるものだ。
「私達とて全てを知っている訳ではないが、出来る事の割には上級魔法と難易度が高いのか。どうりで魔法としてはマイナーで普及せん筈だ。むしろ自在に扱えるのはミクだけでいいのではないか? 悪用できそうな魔法だしな」
「私もそう思う。無理に広める魔法でもないし、上級という事は魔力の消費も激しい。無尽蔵に魔力があるミクならともかく、普通の者はまともに練習すらできない。なので広めても意味は無い」
軍人六人は話に関わってこないが、男三人は話せるほど知識が無いので聞いているだけであり、女三人は自分の恋人を見ながら格好よかったシーンを脳内で無限リピート中だ。リピートする度に視線に熱が篭もり続けている。本部に戻ったら報告が先だろうに。
陸軍本部に戻ると、早速軍人六人は報告の為に上官の所に行った。女三人は不満タラタラだったが、落ち着かないとデきないので一転、早く終わらせようと早足で向かって行く。ミク達は呆れながらも星川家の専属スタッフにSDカードを渡し食堂へ。
夕食を食べていると、何故かエイジ達が居た。実はそこまで家が遠くないのと、臨時のアルバイトみたいなものらしい。エイジ達が戦えるのは知っているので政府がダンジョン攻略特別チームとして雇い、費用は星川家が出すそうである。
「いやあ、政府からお金が出ているらしいですけど、自分達でお金を稼ぐに越した事はないですしね。それに、あれだけ殺し合いをしてきたら、普段平和な生活だと落ち着かないんです。何故か昂る事が多いですし……」
「それはそのうち治まるぞ? 体と心が戦闘を覚えているからだろうが、緊張感が薄れてくればそれも治まる。極度の緊張と脳内麻薬の所為だが、それも抜けるからな。そこまで我慢すれば終わる話だ」
「そうなんですね。私としては久しぶりにエイジと一緒に居られるので、ダンジョンとかは後回しです。ずっとお預けされているような感じで……何回かはしましたけど、それで満足できる事なんてありませんし」
「相変わらずエイジ一直線で、エイジと一緒に居てヤれれば何でもいいだけはある。ミキってもう、エイジが居ないとまともな生活が送れない?」
「うっ………」
「まあ、こいつはこんなものだろう。ドス黒さは減ったが、その分重くなったしな。エイジと離れる事で更に重くなっただけだろう。おそらく今のミキなら、エイジと共にいる為なら何でもするのではないか?」
「………」
「それは止めてほしいねえ。騒動を起こされると収拾するのが面倒だ。どのみち高校三年だし、ダンジョンに一般人が入れるようになったら真っ先に槍玉に上がる実力者だしね。生活は普通に出来るだろうさ」
そんなミキの将来の事を話しつつ、食事が終わったら宛がわれた部屋へ。久しぶりとの事なので媚薬と精力剤を欲しがったので与えておく。ユミが横から口を出したが、黒くなっても困るので今日は特例という事にして納得してもらう。
喜び勇んでエイジを引っ張っていくミキを見つつ、ミク達も部屋へと戻った。何故かユミはレイラも含めた三人を望み呆れさせたが、「それはそれ、これはこれ」らしい。つまりミキと自分は違うそうだ。面倒なのでその場の全員がスルーした。
さっさと満足させて寝かせたら、レイラは外に、ミクとヴァルは編集の手伝いに行く。実は星川家の専属スタッフからは、ミクとヴァルの助力を願う声が多く、実際に助かっているそうだ。疲労と眠気の無い最凶の生物だし、その助力はありがたいだろう。
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翌日。昨日はイケメンの姿で女性を喰ってきたレイラ。どうやら女性の中にも違法薬物の売人がいて、違法売春婦も多数居たようである。ユミから喰っていい連中のリストは貰っているので、無許可や違法営業の連中は根こそぎ喰っている。
ヤマト人の中にも当然犯罪者が居るが、違法薬物に関しては高い確率で外国人であった。白い肌や黒い肌なので分かりやすく、レイラは相手の好みそうな容姿に変えて誘惑している。更にスキルも使っているのでホイホイ引っ掛かっていくのだ、面白いぐらいに。
夜が明ける前に戻ってきたものの、なかなか減らないのはそれだけこの国が狙われているのだろう。そんな事を思いつつ、レイラを労い本体で休ませる。
ローネ達が起きたので朝食を食べに食堂へ行くと、軍人六人がフラフラしていた。何があったのだろうと思ったら、お互いに昂って燃え上がり朝までシていたそうだ。思わず呆れそうになるが、こいつらもエイジ達と変わらないと考えると納得できたミク。
もはや放っておこうと思い食事を再開すると、今度はエイジ達が入ってきた。ミキは完全にアウトな表情をしており、朝からシてきたのは丸分かりであった。この孫の情けない姿に、流石のユミも遂に怒った。
おかげでミキはユミに何処かへ連れて行かれ、その場に居る全員は何も見なかった事にして食事をしていくのだった。
20分ほどで戻ってきたが、その時にはミキはシャキっとしていた。何があったのかは知らないが、若干ユミを尊敬する目で見ている。
……いや、本当に何があったのだろう? 全員が疑問を持ったが、口を開いて聞く事まではしなかった。何か聞いてはいけない予感がしたのだ。
ミキとユミが朝食を終えるのを待ち、適当にコンビニで買ったら出発。ダンジョンに行く。昨日26層まで行った事を話し、墓場の層だったと言うとエイジ達は渋い顔をしていた。
「強制的に魔力を消費させられる層ですからね。俺達の実力ではまだまだ厳しいですよ。特にハイレイスやグレーターレイスは相当マズい。あいつら急激に抗魔力が上がるんで、シロウやサエちゃんが大変なんですよね」
「エイジが魔法を使えると助かるんだが、かといってエイジには他のゾンビやヴァンパイアを抑えてもらわなきゃいけないし。それで【聖化】系魔法まで使えっていうのはちょっとなー」
「流石に無理だよ。相手を抑えるのでさえ結構大変なのに、最前線で魔法まで使えっていうのは流石にな。開幕ブッパなら可能だろうけど、それが精一杯ってところだ」
「それでも十分だ。【聖化】系魔法って魔力の消費が大きいんだよ。少しでも減らしたり弱らせてくれるだけで助かる」
「なら【聖化】系魔法、頑張って練習するかな」
そう話しながらダンジョン前で準備を整える。軍人六人は休みだが、代わりに別の者達が入るらしい。順調に戦える軍人は増えているようだが、まだまだ浅い層でしかない。
早く魔法が使える連中が増えて欲しいものである。どうやら魔法の普及だけで済みそうにないし。




