0256・軍の婚活事情
休憩後も北川の嬌声は聞こえており、西口と南野は無視して練習に入る。ユミと共に三人で連携をさせたりなどしているとカマクラの声が治まったので、外からミクが聞く。すると、どうやら終わったようなので壊してやり入り口を作る。
出てきた東はミクをジト目で見ており、北川は上気した顔で艶っぽく東にしな垂れかかっている。西口や南野も見てきたので、そろそろネタばらしするかと思いユミと共に話し始めた。
「一応言っておくけど、今回の事が気に入らないなら中島とかいう大将に文句言ってよ? 私はあの男に頼まれて今回の事をやっただけだしね」
「は? ………中島大将がですか? 流石にそれはちょっと信じられないのですが………」
「ミクの言っている事は事実だよ。我がヤマト皇国にはミク達が居てくれている。これは他の国には無い大きなアドバンテージなのは分かるね? となると、気をつけなきゃいけないのはノウハウさ。魔法やスキルのノウハウが流出する、コレを懸念しない軍人はいない」
「まあ、それは確かにそうですが……。それが今回の事とどう結びつくのですか?」
「軍では前から懸念事項だったらしいんだけど、軍人と外国人が結婚し、そこから情報が流出するのは頭の痛い問題だったらしいね。そこで今回のダンジョンアタックと男女混合のチーム。そこから軍人同士の結婚にもっていきたいみたいだよ? 軍の幹部は」
「あ、ああ………! 成る程。……しかし、先ほどの怪しい薬を使っての事は決して良いとは思えません。流石に北川大尉も薬「違うよ」でおかしく……」
「元々そこの北川ってお嬢ちゃんは、あんたの事を好いていた。そこでさっきのゴブリンとの戦いだ。これ幸いにと”薬の所為に”しただけさ。あんただって薬の所為にしたろう? あくまで薬はそういう理由でしかない」
「………」
「まあ、あの薬は処女でさえ快楽を感じるようになる薬だからね。それはいいとして、大満足みたいだったけど、どうだったの? どう見ても本懐を遂げたって顔だけど一応ね」
「//////凄かったです。ぜ、全身がおかしくなりそうで、気が狂いそうでした///」
「……ふーむ、ミクの薬を研究して売り出しても良さそうだね。同じ物は絶対に作れないだろうけど、堅物の女がここまで蕩けるんだから研究する価値はありそうだ。子供不足も解消するかもしれないし、傘下の製薬企業に言っとくかい」
「えっと、それで我々はどうすれば良いんでしょうか?」
「はいコレ。これは【消音空間】の効果がある魔道具ね。これを使っていたら部屋の音が漏れなくなる。で、これが魔石。これを……ここを開けて入れたら起動するから。後はカマクラの中でヤりまくるといいよ!」
「そうだね。ここから帰るには時間が掛かるし、お嬢ちゃんも完全には満足してないだろう? 自分の好いた男が体を張って守ってくれたんだ、そう簡単に女の火は消えたりしないよ。ねえ?」
「//////」
「じゃあ、コレ。媚薬の方は飲む必要ないけど、結構搾り取られるから精力剤は飲んでおいた方がいいよ。一旦燃え上がると、ミキとかサエだって搾り取るからね。女ってそんなものみたいだし」
「あの子達はそんな事をしてるのかい? 駄目だねえ、ただ搾り取ればいい訳じゃないんだよ、まったく。ここは私がしっかり女の何たるかを叩き込んでやらなきゃ駄目だね。負担を掛けるのが良い女じゃないよ」
東と北川はまたカマクラの中に入って行ったので入り口を閉める。今度は魔道具を使ったからか音は聞こえてこない。なのでユミと西口と南野の訓練を再開した。軍の中も色々大変というか、様々な思惑があるらしい。
そんな事を話しつつ、西口と南野も誰か好きな男がいないのかとユミが聞いていく。ミクがしっかりと映しているのを知りながら、それでもグイグイ聞いていくユミは流石である。ユミはユミでこの国の現状を憂いている一人なのだ。
だからこそ、今から外国の者が入りにくい国軍の形にしたいらしい。まあ、スパイだなんだが入り込みやすい軍というのは、誰が考えても駄目な軍である。そうなってしまっている現状は仕方がないとはいえ、今から変える事は出来るのだ。
それをやりたいのだと力説するユミ。この部分はカットするのかしないのか、そんな事を暢気に考えているミク。まあ、肉塊にとっては他人事なので当然ではあるのだが……。
十分な訓練も出来て時間も夕方になっていたのでカマクラを壊す。慌てて身支度をしている音が聞こえるので明後日の方を向き、出てきた東から魔道具を回収する。少し二人を落ち着かせ、正気に戻ったら青い魔法陣で脱出した。
陸軍本部に戻るのだが、その車両の中でも今までとは雰囲気が一変している。北川菜々という人物は堅物で知られた人物なのだが、東を見る目はハートマークが出ているんじゃないかと思うほどであった。
そこまで彼女を変えたのは庇ってくれた東の格好良さなのか、神が創った媚薬なのかは定かではない。まあ、本人が幸せなら何でも良いんじゃない? と言ったところであろう。そんな変わってしまった者を乗せて車両は本部へと移動する。
本部に着いたミク達は、早速食堂に行き夕食を食べる。ミクが食べていると周りから見られるのだが、それはこのヤマト皇国でも変わらないようだ。相変わらず美しい所作で食事をするミクは、その所作も相まって美しい。
チラチラと見られるのは仕方ないが、本人がそれを気にしていないので誰も止めない。気にせずにミクが食事を続けていると、食堂に中島大将がやってきて近くに座った。
「すまん! 申し訳ない。実は総理案件になった各国の大使との会談なのだが、急遽明日に決まった。理由は君達の身の安全を考えた場合、先に延ばすよりも急に行った方が安全だと判断しての事だ」
「まあ、ミク達は襲われても問題無いだろうけど、か弱い人物達だと装っておかないといけないのさ。圧倒的強者だと分かると、各国が大胆な行動をとってくる可能性が高い。そうなると、ミク達よりも国民の被害を考えなくちゃいけなくなる」
「そこまで強引に物事をするというか、我々を拉致しようとする輩が居るという事だな? もしくはそういう国の者が入り込んでいる……と」
「残念ながら、それが事実さ。法を守っている以上は簡単には排除できない。隣の独裁国家ならまだしも、我が国は民主主義国家だ。良い悪いは別にして、そういう国である以上は正当な理由が無ければ排除できない」
「まあ、成熟した国は何処もが持つジレンマ。法で治めるのが最も安定しているけど、それだけでは無法の侵略者とは戦えない。とはいえ、好き勝手に出来る国だと簡単に崩壊する。それを止められないから」
「本当にね。この星でも同じ様な末路を辿った国は沢山ある。それでもあの独裁国家は上手くいくと思ってるんだよ。ビックリするのと同時に、頭が悪すぎて吐き気がする。あいつらまた国を傾けて周辺国に迷惑をかけるつもりさ。いい加減にしろって思うのは当然だよ」
「それはともかくとして、明日は総理官邸に行き、そこで各国の大使と会う事になる。……それで、出来ればなのですが………」
「ああ、私もって事だね。構わないよ、こっちの常識が無い事につけこんでくる可能性があるからね。多分そこまではしてこないだろうとは思うけど、念には念を入れたいのは当然か。まあ国の為になるならいいさ」
その後、中島大将は夕食を取りに行った。どうも食事のついでに言いにきたらしい。そこまで危険視していないという事だろうか? ミク達は疑問を持ったものの、気にせず宛がわれている部屋に戻った。
……ユミと一緒に。




