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0025・再び領都クベリオへ




 ミクがイスティアというより、クレベス子爵家からの依頼を請けようと考えていると、ゼルダが途中までついていく事になった。ゼルダはここロンダ王国の王都に店を構えており、それなりの従業員を抱えているらしい。


 なので、店主が一ヶ月ほど留守にしても然したる影響は無いそうだ。今回は色んな意味で疲れたので、早めに帰る事に決めたようだが……。ある意味では自業自得なので誰も慰めようとはしない。


 カレンはギルドマスターなので動く事は出来ず、朝食後に屋敷の入り口で別れるのだった。ミクとゼルダは町を出ると、ヴァルとアルガを大きくして二匹に乗っていく。イスティアはヴァルに乗ろうとするも、ちょっと怖いようだ。


 使い魔の【念話】は主のみに聞かせる事も出来るのだが、教えて貰ったヴァルはあっさり出来るようになっていた。どっちにしても規格外なアンノウンに変わりは無いのだろう。元は同じ存在の魂なのだ。


 ヴァルとアルガは駆けていくが、両者共に疾走している為に相当速い。イスティアは振り落とされないようにするので精一杯ならしく、必死の形相で耐えている。結局前回とは違い、昼前には領都クベリオに到着したのだった。


 町の前でゼルダとは別れ、小さくなったヴァルと共に町の門に近付く。即座に槍を突きつけようとした門番は、イスティアの顔を見るなり、慌てて槍を立てて元の持ち方に戻す。その門番にミク達は登録証を出し、門を通過した。


 ミクは前回と同じ酒場で昼食を食べようとしたが、イスティアが子爵家の屋敷で昼食を出すというのでついて行く。食べる事に執着のあるミクである、子爵家の食事に興味が湧くのは当然の事だった。


 子爵家の門番は新しい者達に替わっており、前の奴等は賞金首になっているそうだ。放っておけば、直に首が届くだろうとの事。門を抜けて屋敷に入り、子爵の部屋へと通される。まずは子爵に話を……と思ったら、昼食を食べているようだ。


 イスティアはミクを食堂に案内すると、丁度食事中の子爵家の面々が居た。ミクは一つの椅子に案内されて座り、昼食が運ばれてくるまでの間、それぞれの家族の紹介をイスティアから聞く。



 「ミクは父上には会った事があるから横に置いておくとして、あちらが私の母であるウェルネア・フェル・クレベス。そしてこちらの少年が弟の、カディアード・ウェル・クレベスだ。妹が居るが、現在王都の学校に行っている」


 「フェルとウェル?」


 「ああ。我が国では当主と次期当主しか、ウェルを名乗る事は出来んのだ。それ以外の家族はフェルと決まっている。これは建国王がウェルを、建国王の正妃がフェルをミドルネームにしていた事に由来する」


 「ふーん」


 「興味無さそうだな。まあ、貴族か王族以外にウェルとフェルをミドルネームに持つ者はおらぬから、当たり前と言えば当たり前か」


 「うむ。私とて元々はフェルであり、次期当主では無かったので興味も無かったしな。それはともかくミクとやら、娘が言うには特殊な【スキル】を使って無理矢理に喋らせる事が出来るそうだが、間違い無いか?」


 「間違い無いけど……何かあるの?」


 「いや、我等はエスティオル卿に関わりあると知っているから大丈夫だが、そのような有用な【スキル】を持つとなると、場合によっては命を狙われかね……何故、喜んでおるのか分からぬが、本当に大丈夫なのか?」


 「父上、心配するな。カレン様だけではなく、ゼルダ様も御自分よりミクの方が強いと言っておられる。命を狙われたとて、遊びの範疇はんちゅうで済んでしまう程にな。私でさえ絶対に手を出さんよ。出せば、問答無用で殺される」


 「………イスティアがそこまで言うほどか。分かった、お願いしよう。正直に言って、奴等は何をやっても喋らん。何か理由があるのは間違い無いが、それが【スキル】であろうという事しか分かっていないのが現状だ」


 「冒険者だから依頼は請けるけど、あれは大丈夫なの? 私やヴァルは気にしないけど……」



 既に食事を終えたのか、ミクの足下に居たヴァルを触ろうとしたカディアードは、今は逃げ回るヴァルを追いかけて遊んでいるのだった。ここは食堂であり、駆け回る場所ではない為に聞いたのだが、あれぐらいは問題無いとの事。


 妻であるウェルネアは若干睨んでいるものの、カディアードを怒るまではしない。そんな二人を見ていると食事が運ばれてきたので、ミクも食べながら話を続けるのだった。



 「そういえば父上、王都の貴族学校に行ったヴィラは元気にしているのか? 私には軟弱者を相手にする気持ちなど、欠片も理解出来んが……」


 「イスティア。貴女は将来の事を小さい頃から決めていたけど、普通は早々に決める事など無理なのよ? 貴族でも冒険者になる者は居るとはいえ、悲惨な結果になる事も多いわ。当たり前だけど、普通は選ばない道なのを自覚なさい」


 「それはそうかもしれんが、私は自分の力で切り開いて来たしな。勿論、多くの先輩に助けてもらったが、私が本気だと知ると殆どの者はバカにはしなかった。一部の連中は叩きのめせば済む程度だ」


 「まあ、そうだな。私も昔はアレらをボコボコにしていた。なので、ああいう奴等は力を示せば喧嘩を売って来なくなるし、それは全冒険者に共通する事だ。その実力が無ければ苦労をするがな」


 「それが怖い事なのだけれど、貴方達はそれが分かっていないわ。特に貴方は当主なのに、魔物が出たとなれば自ら出て行くし……」


 「おいおい、ここでお説教は止めてくれないか。客も居るのだしな? ……そういえば今気付いたが、君は普通に貴族のマナーを守っているし、所作が非常に綺麗だ。エスティオル卿から習ったのかね?」


 「そう」


 「………」



 イスティアはミクが神々から習ったのを知っているが、そんな事を口に出す訳にもいかず、黙って話が変わるのを待つしか出来なかった。そうしていると食事も終わったので、さっさと兵舎の牢屋までミクを連れて行こうとする。


 すると、当主であるハーランドまでついてくると言い出した。「面倒な事を言い出すな!」と内心思うイスティアであったが、子爵家当主が立ち会うのはおかしな事ではない為、仕方なく一緒に移動する。


 護衛の兵士を連れて歩き、領都の東入り口にある兵舎に行く。兵舎前の兵士に子爵訪問を言うと、すぐに牢屋まで案内される。流石に領主が居ると丁寧に通されるものだと、妙な関心をするミクであった。


 牢の中には<人喰い鳥>の幹部だという男が居るのだが、そんな牢屋が五つ並んでいる。既に牢屋は満員で、兵士としては早くどうにかしてほしいらしい。まあ、監視もしなければいけない為、厄介なのだろう。


 ミクは鍵を開けさせると牢屋の中に入る。即座に立ち上がって襲ってきたが、攻撃を回避しつつ腕を持って、壁に向かって結構な力で叩きつけた。痛みに呻いているバカの頭の上に、掌を置いて脳に触手を突き刺す。


 そこから尋問し、幹部の男に喋らせていく。子爵も質問し、洗い浚い喋らせたら次の奴へ。そうして幹部全員に喋らせる事に成功したミクだった。尚、<人喰い鳥>の連中が喋らない理由は、極めて特殊な呪具を使っているのが原因のようだ。


 これを使われると、使った者にとって都合の悪い事は、一切喋る事が出来なくなるらしい。呪具を使ったのはオルドム男爵であり、コイツは<商国>の者に買収されていた。それが貴族なのか、裏組織なのかは分からない。


 たとえ脳を操って喋らせても、知らない事は答えようが無い為、結局のところ真相は闇の中であった。


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