表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/500

0024・使い魔ヴァル




 「他にも色々な姿になれるって言ってたけど、具体的にはどんな姿になれるの?」


 『他は主が喰った相手だな。ゴブリンやオークにコボルト、それに盗賊どもにもなれる。あの娼婦にもなれるぞ? 主が洞窟で喰った奴だ』


 「ああ……アレにもなれる訳ね。そういえば私が喰ってきたモノなら何にでもなれるのなら、何で最初は三つも頭がある狼だったの?」


 『アレは主がそこの狼を美味しそうだと思って見ていたからだな。主の食欲に影響を受けてあんな姿になった。頭が三つの理由は俺にも分からん』


 「うう……話す度に<魅惑の声>が聞こえてくるのがツラすぎる。あの声は耳の奥に甘く響くのよ! だって私、女だもの!!」


 「「ええ! 仰る通りでございます!!」」



 魔女が馬鹿な主従を白い目で見ているが、そんな事はお構いなしに阿呆な会話を続ける三人。先ほどの立ち位置とは逆になってしまっている。そんなワチャワチャ空間を元に戻す人物が目覚めたようだ。



 「う、うう……何だか猛烈に嫌なモノを見たような。アレはいったい何だったのだ? 思い出せない……」


 「あら? やっと起きたのね、イスティア。貴女が寝ている間に色々あったけど、全て纏めて貴女には関係無いから、気にしなくていいわよ」


 「それは確かにそうね。特に関わりも無いし……というか、貴女そもそも何をしにきたの? 黄昏に会いにきたと行ってたけど、他にも何か言ってたわよね?」


 「ミクなら目の前………は? ミクが二人………。えぇーーーーーーーーっ!!!!」



 使い魔が褐色肌のミクの姿を晒したままだったので、それを見て驚き絶叫を上げるイスティア。それに対して五月蝿さに頭を叩くゼルダと、顔を殴りつけるカレン。やはり良いコンビなのではなかろうか。



 「……私が大声を出したのが原因なのでしょうが、幾らなんでもこの扱いは酷いのでは? 確かに私が悪いのですが、ミクが二人に増えているのですし……驚くのも当然でしょう」


 「そうとも言えるかな。そろそろ狼の……いや、食べた中にグリーンフォックスっていうのが居たよね。アレで。後、大きさは邪魔にならないくらいで色は黒」


 『やたらに細かいが何か理由があるのか? 別にどんな姿でも俺は構わないが……』


 「うう……聞いていると色々キツいから、名前を決めましょう。確か使い魔って名前を付けるのよね?」


 「ええ、そうよ。私の使い魔である、この子の名前はアルガ。まあ、貴女は知っているでしょうけど。それはともかく、使い魔と認識出来れば何でもいいのよ。自己とは違う、それでいて自分に一番近い者といったところかしら」


 「名前はヴァルドラースで決まりよ。絶対にこれで決まり。そもそもミクは何でも良いって言うに決まってるし、適当な名前を付けられるくらいならヴァルドラースで決定!」


 「別に良いけど、何でその名前を推してくるの? 何か理由があるなら聞かせてほしい」


 「ヴァルドラースというのはね、昔に居たアーククラスの吸血鬼の真祖の事よ。私は会った事が無いし、私を吸血鬼にしたゴミは私が喰ったんだけどね。ソイツから何度も聞かされたのよ、<青の鮮血>の話は」


 「<青の鮮血>って私も師から聞いた事があるわ。確か貴公子のような人物だった筈よ。貴族は青い血が流れている何て言うけれど、本当に貴族の手本のような人物だったそうね。実際に領地も持っていたらしいし」


 「ふーん、でも長いから却下。短くしてヴァルと呼ぼう。それでいいでしょ?」


 『俺は何でも良い。それよりも狐のこの姿が何故いいんだ? 他にも主の役に立つ姿はあるだろうに』


 「そこの狼と被るから狼は駄目。何か多いらしいし。次は移動に便利な馬だけど、これを選んでもねぇ……体の大きさが変えられるなら微妙なのよ。となると、乗りやすそうな奴が良いとなる」


 『成る程、それで狐の姿か。特に考えもせず、適当に決めたのでは無いのならいい。それより誰か来たぞ?』



 ヴァルがそう言うと、そのすぐ後にドアがノックされてオルドラスが入ってきた。何でも夕食の準備が整ったらしい。


 それを聞いた全員が、夕食を食べに食堂へ移動していく。何故かイスティアは放置されているが、これが彼女の立ち位置なのだろう。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 食堂で夕食後、何故か再び体を拭かれているミク。特に気にしていないものの、面倒くさいという気持ちは無い訳でもない。とはいえ食事をさせてもらい、泊めてもらってもいるので文句までは言わない。


 そしてその横で同じく拭かれているカレン。ゼルダが呆れているものの、カレンもまた美しい肉体である事に間違いは無い。芸術品の一つと言えよう。二人を拭き終わったら今度はゼルダとイスティアだ。


 イスティアは恥ずかしそうにしているが、美の化身と二人の美女と比べられると思うと仕方がない。子爵令嬢として鍛えられている美しい肉体なのだが、それでも見劣りするのが悲しい現実だ。


 二人も拭き終わった後は、いつも通り裸での雑談を続ける。その内にオルドラスも含めて全員が集まり、いつもの夜になっていく。尚、この夜オルドラスの相手をしたのはヴァルだったが、ヴァルはミクと同じく気にしていない。


 ゼルダとイスティアは、この夜初めて「耳の奥に甘く響く」という言葉の意味を理解したのであった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 明けて翌日。全員が起きた後に、イスティアの要件を聞く話の流れになった。そもそも彼女のミクに対する用とはいったい何だったのか。忘れられていた気がしないでもないが、ミクは思い出したのでイスティアに聞く事にしたのだ。



 「私がミクに話がしたかったのは、協力をお願いしたかったからだ。ミクは相手を必ず喋らせるという特殊な【スキル】を持っているだろう? <人喰い鳥>の連中を捕縛したのだが、やはり奴等に喋らせるのは無理だった」


 「そいつらの口を無理矢理割らせろって事? 別にいいけど、そんな事の為にワザワザ来たんだね」


 『ワザワザではないと思うがな。無理矢理に口を割らせるというのは、常識的に見て難易度が高いのではないか?』


 「「「「「!!!」」」」」



 未だにヴァルの声には慣れないらしいが、昨夜を経て二人追加されたようだ。ゼルダは声を聞いただけで顔を赤くし、イスティアに至っては両手で顔を覆っている。少なくとも主従はすぐに落ち着けているようなので、そのうちに慣れるだろう。



 「それにしても、領都までまた行かなきゃならないのかぁ……。よく考えたらヴァルが居るんだし、乗っていけばすぐに着くね。なら移動が暇って事も無いのかな?」


 『主の場合は暇というより、普通の人間種を装うのが面倒なだけだろう。気持ちは分かるが、俺に乗っていれば誤魔化せるだろうから、その部分は今までより楽になる』


 「それだけで十分だよ。わざと遅く移動したり、いちいち人間種はって考えるの面倒くさい。しかも人間種を装う所為で、食べられない事も多いしさー」


 『主に色目を使っている町の奴等か。それだけ主が美しいからだろうが、あのような流れになるとは……。人間種というのは面白いと思わざるを得んな』


 「私にとっては邪魔なだけ。あいつらがクズをボコボコにする所為で、私が外で襲われないんだよ? 御蔭で喰える筈のゴミどもさえ喰えてない。本当、イヤになる」



 町の者達が望んでいる方向とは真逆になっているのだが、ミクは止めろとも言えない為、それはこれからも続きそうである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ